第7話:回想
「やっぱりこの生地だと安っぽく見えないか? もう少し光沢のあるものの方が『マジカルサニー』の衣装としては合っている気がするんだけど」
「仕方ねぇだろ。金がねぇんだから。あぁ、どうして、生地ってタダじゃないんだろな」
俺のぼやきに、明人は肩を竦めて応えた。
いつのことだったか。半袖を着ているから夏も間近なのだろう。明人の家で、夏のコスプレイベントに向けての衣装を作成中である。
作りかけの衣装と、針と糸と生地の切れ端。ミシンの音が、小気味よく耳を抜ける。
「それじゃ、生地の量を減らすか? 『マジカルサニー』も夏仕様とかいってアレンジして」
「お、いいね。胸と股さえ隠れていれば問題ないだろ」
「ちょっと、やめてよぉ」
俺と明人が冗談を交わしていると、瑠美が頬を膨らませていた。
「私の衣装じゃなくて、明人の衣装の生地を減らせばいいじゃないの。胸と股さえ隠れていればいいんでしょ」
「無茶言うなよ。『マスカレード男爵』はタキシード姿なんだぜ。へそ出し短パンにしたら、キャラ変わっちまうよ」
「夏仕様じゃん」
そこで、思わず3人で笑う。
「やっぱり生地は変えよう。金は姉貴に借りるよ。瑠美が着るんだから、しっかり作らないと」
「ほんと! やっぱりクロは偉い! 明人はだめぇ」
「はぁ、クロは瑠美にあまいなぁ」
思い返せば、つまらないことでもよく笑った。不思議なことに、どんな芸人の漫才なんかよりもよっぽどおもしろかったし、どんなアトラクションよりも楽しかった。
友達って、こういう奴らのことを言うんだろうなと、俺はなんとなく感じていた。
いつまでも、こんな日々が続くものだと思っていたし、続けばいいと思っていた。
俺達ずっと友達だよな。
そんなことを口に出さなくても、みんなわかっている。
そう思っていたのは、俺だけだったみたいだけど。




