第68話:回想~コスプレイベント~
「瑠美、襟のところがおかしくなっているぞ」
「え? どこ?」
「後ろ向け。直す」
「ん」
ひょいと後ろを向く瑠美の襟をきれいに直し、ついでにウィッグの部分も直す。それから、俺は額の汗を拭おうとして、メイクしていることを思い出し、手を止めた。
屋外のコスプレ会場。世界中を焼き尽くしてしまうのではないかと思われる炎天下で、俺達は、コスプレを披露していた。
「何で屋内じゃないのよ」
「仕方ないだろ。近くで参加費が安いイベントがいいって話になったんだから」
「むぅ、ウィッグ暑い~」
「我慢しろよ、明人なんてタキシードだぞ」
「明人、さっきからふらふらしてない?」
明人は、魔法少女アニメ『魔法少女マジカルサマー』のコスプレをしている他の人達と併せをしていた。普通にニコニコしているように見えるが。
「けっこう露出多い子いるね。私も、メイクアップバージョンじゃなくて、ドレスアップバージョンにすればよかったな。涼しそうだし」
「十年早い。それに過剰な露出はトラブルの元なんだよ」
「わかっているよ。別にこの衣装が嫌なわけじゃないし。再現度高いって評判いいしさ。ふぅ、我慢するか。どうでもいいんだけど、どしてドレスアップバージョンの方が露出度高いんだろうね」
「言うな。それはアニメ放送時から突っ込まれていたことだから、もうみんな調教されてんだよ」
「ドレスアップっていうか、ドレスダウンじゃん。ふふふ」
「大丈夫か? とりあえず水を飲め、水を」
渡したペットボトルに口をつけ、ぐびぐびと瑠美は水を飲んだ。
この三人での初めてのイベント参加だったが、思ったよりもうまくいっている。カメラマンからの評判も上々だし、他のレイヤーとも打ち解けれている。
まぁ、知っているレイヤーさんもいたし。
「でも、本当によく似合っているよね、『マジビッチ』さん」
「やめろ。せめて、『ビーチ』さんと呼べ」
お姉さんキャラの『マジカルビーチ』。けしからんグラマラスボディと挑発的な性格のため、『マジビッチ』さんと呼ばれている。女性らしさしかないキャラであるが、背が高いキャラのため、男の俺でもあまり違和感がない。
瑠美の言う通り、評判はよくて、衣装を作成した俺としては、けっこう満足している。ただ、よくできたせいかどうかわからないが、向けられているカメラがやけにローアングルなのが気になる。
「どうする? 明人のところに混ざって、併せとかするか? さっき『サマー』さんもぜひって言ってたし」
「んー、それもいいんだけど、3人でちゃんと撮りたいかな。せっかく来たんだし」
「あー、そうだな。最初に自撮りしただけだし。知り合いのカメラマンさんに頼んでみるよ」
「うん、じゃ、明人を呼ぶね、って、あ! ねぇ、クロ! 明人の顔真っ赤だよ!? きゃっ! 倒れた!? 倒れたよ!? クロ! もしかして第7話の『マジカルシャイン』ちゃんの水着姿に興奮して卒倒しちゃったシーンを再現しているのかな?」
「そんなわけあるか! それは熱中症だ!」




