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英雄達の偽曲~親友に裏切られて全て失ったけど【コスプレ】スキルで世界征服に邁進します~  作者: 最終章
機械仕掛けの休日~王都にて~(異世界転移11ヵ月後)
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第66話:イチランという男

「だから、あそこにおまえがいたのか、イチラン」


「何のことだ?」


とぼけるなよ。王女がお忍びで出歩いてるから、護衛でついてきていた。その途中で、俺達をみつけて、ちょっかいをかけてきた」


「ちょっかいだなんて人聞きがわるいな。おもしろそうな話をしていたから、火に油をそそいだだけだよ」


「余計わるいよ」



 舞台の撤収てっしゅうがなされる中、イチランは悪びれる様子もなく、へへと応じていた。



「で、すべて思惑通おもわくどおりかい。クロくん。ご注文通りにやったぜ」


「ソマリに石をぶつけろなんて言っていない。何だ、あれは?」


「いやぁ、俺は止めたつもりだったんだけどな。微妙に間に合わなかったみたいだ」


「ふざけるな。ソマリに何かあったら、どうするつもりだ?」


「誰にでもミスはあるでしょうよ。それに、ソマリちゃんは、元気だったじゃないの」



 はぁ、こいつに何を言っても無駄か。


 王都ミスグランプリに、ペルシヤ王女の乱入、それから、王女暗殺をもくろむ者達の闖入ちんにゅう、最後にソマリと王女の和解。


 ほとんど偶然の産物であるが、最後だけは、俺が仕組んだことだ。


 本当であれば、イチランがいるのだから、狼藉者ろうぜきものの攻撃など、王女にもソマリにも当たるはずがなかったのだ。


 さらにいえば、アキトがいるのだから、すぐに討伐することができた。


 しかし、それをさせなかった。


 ソマリが身をていして、狼藉者から王女を守る。そのエピソードがほしかった。


 ことは思い通りに運んだ。最後に、ソマリが投石を受けるところ以外は。


 

「よかったな。お気に入りのソマリちゃんも、これで、差別されないだろ」


「そう、うまくもいかないな。元の世界でも、差別がなくなった例はない。有史以来1900年以上差別自体に気づかず、100年くらい前に気づいて、やっと薄れてきたところだ。こちらの世界でも、これから少しずつだよ」


「はぁ、気の長い話だな」


「まったくだ。俺達にとって歴史でも、その時間は確かにあった時間だからな」



 そして、差別問題を解決することは、俺の仕事ではない。この国が機能不全におちいらない程度に、緩和されればそれでいい。


 特に、ソマリへの態度が改善されるのならば、俺としてはもう十分といえた。


 

「で、どっちを選ぶんだよ」


「何の話だ?」



 イチランがにやにやとしているので、俺は首を傾げてみせた。



「ルミちゃんとソマリちゃんだよ。あんまり、はぐらかしていると後が怖いぜ?」


「はぁ。ある意味、すごいな、イチランは。異世界に送られて、戦争しなくちゃいけないってときに、色恋の話だなんて」


「逆だよ。いつ死ぬかわからないんだから、今、めいっぱい恋愛しなくちゃ」


「俺には真似できないな。今は恋愛なんて考えられない」



 それに。



「ルミはコスプレ友達だし、ソマリは部下だ。恋愛対象にはならないよ」


「何言ってんだよ。友達から恋愛に発展することなんて、よくあることだし、部下との恋愛なんて定番じゃん」


「数少ない友達を失うのは嫌だし、恋仲に命令は出せない。あいつらと恋愛することにメリットがないんだよ」


「メリット、デメリットじゃないだろ。デメリットしかないような、どうしようもない恋にだって、落ちるときは落ちるもんだぜ」


「そんな恋愛したことないな」


「枯れた人生送ってんね」


「おまえに比べればな」



 イチランは、ハハと笑って、きびすを返した。



「まぁ、時が来ればわかるさ。そのときは迷うなよ。なぁに、心配すんな。もう一人の方は、俺がもらってやるからよ」



 それは、イチランならではの冗談だったのか、本気で言っているのか、俺にはわからなかったが、少なくとも本当にすげぇ奴だなと思った。

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