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英雄達の偽曲~親友に裏切られて全て失ったけど【コスプレ】スキルで世界征服に邁進します~  作者: 最終章
機械仕掛けの休日~王都にて~(異世界転移11ヵ月後)
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第64話:茶番

 群衆の中から飛び出てきたのは、一人、いや、二人、もしかしたら、もう一人くらいいるかもしれない。彼らは、フードをかぶっており、片手に剣をたずさえ、ペルシヤ王女に一目散いちもくさんに向かっていった。


 民衆から悲鳴があがった。


 こんな堂々とした暗殺者もいないが、パッと見では、警備もいないし、舞台上には女ばかりで、絶好の機会きかいに見えなくもない。


 ただ、暗殺者は、ルミの話をよく聞いておくべきだった。


 舞台上にいるニットワンピの獣人、彼女は、軍人なのである。 


 何の躊躇ためらいもなく、もはや反射のように、ソマリは、ペルシヤ王女の前へと出た。


 軍人としての動作が身体に染み込んでいるようであった。


 ただ、丸腰である。


 そのニットワンピに武器など仕込めるわけもなく、さらに、ヒールが動きをにぶらせていた。



「ちっ!」



 舌打ちをして、ソマリは、ヒールをぎ取った。そして、襲いかかってくるフード野郎の一人にヒールを投げつけた。


 フード野郎が剣で、ヒールをはらったところを見逃さずに、ソマリは前に出て、その顔面に拳を食らわせた。


 すぐさま、ソマリは身体をひるがえす。


 もう一人のフード野郎が、王女の元に向かったからだ。


 ソマリは、後ろから飛びかかる。だが、それは、フード野郎に察知され、剣を向けられる。


 剣と素手ではリーチが違う。奇襲でもなければ、勝てやしない。


 ソマリは、身体をすべらせるように動かし、フード野郎との位置関係を変え、王女の前に立つ。


 その手練てだれた仕草に対して、フード野郎は、わかりやすく舌打ちをした。


 

「獣ふぜいが! 邪魔をするな!」


「ばーか。あたしは軍人なんだよ。見過ごせるか」



 ソマリは、慣れた様子で挑発をかます。彼女は、この手のあおりスキルがやけに高い。まぁ、逆にあおられやすくもあるのだが。


 フード野郎は、その挑発に乗っかって、声をあげながら、剣を振り上げた。


 それこそ、ソマリが期待した軽率けいそつな行動。


 ほぼ同時に、ソマリが前に出る。剣におくすることなく、間合いを詰めたのだ。


 軌道の見える剣撃など避けることなど容易だ。振り下ろされた剣は、ソマリの身体のほん横をかすめた。


 それでも止まらず、ソマリは一歩前へ踏み込む。


 ソマリは、左足を起点にして、足を振り上げ、しなる竹のように鋭い蹴りを、フード野郎の頭に放った。


 

「おっしゃ!」



 思わず、声をあげたソマリに対して、民衆は歓声で応えた。


 

「すげぇ!」


「王女様を守ったぞ!」


「ソマリ! ソマリ! ソマリ!」



 鳴り止まないソマリコールに、ソマリは、荒くなった息のまま、呆然としていた。


 どうやら、民衆に受け入れられたことに驚いているらしい。そりゃそうだろ。獣人が人間に認められるなんて、おそらく、この世界の有史以来なかったことだ。


 その感動はわかるが、



「ソマリ! 油断するな!」



 俺の声は、民衆の声にかき消されて届かず、代わりに、


 ゴン!


 ソマリの身体に石がぶつけられた。


 一瞬のことで、民衆は息を呑んだ。その投石は、ペルシヤ王女に向けられたもの。気づいてさえいれば、もっとスマートに防げただろうが、反応の遅れたソマリは、自らの身体でペルシヤ王女をかばった。



「ぐおっ!」



 鈍い悲鳴を漏らして、ソマリはその場に倒れ伏した。


 さらにわるいことに、



「王女! ぶっ殺す!」



 狼藉者ろうぜきものが増えたのだ。この突発的にいた千載一遇せんざいいちぐうのチャンスに便乗びんじょうしてきたのだろう。剣やこん棒をもった者がぞろぞろと現れる。


 その数や10~15人。


 舞台があっという間に戦場と化す。狙われているのは王女だけだが、戦闘能力のないルミも囲われており、二人して震えていた。


 事態は最悪。


 そう誰もが思い、舞台が整ったところで、俺は、ある者に視線を送る。


 そいつは、ふんと鼻を鳴らして、しかし、俺の意図を察知して、すぐさま動く。


 次の瞬間、事態は急変し、そして、終った。



「やれやれ、俺の前で王女様をおそうなんていい度胸だな」


「アキト様!」



 舞台に竜巻が起こる。その直後、狼藉者は倒れ伏し、そして、アキトがにやりと笑って立っていた。


 

「英雄参上だ」

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