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英雄達の偽曲~親友に裏切られて全て失ったけど【コスプレ】スキルで世界征服に邁進します~  作者: 最終章
ハバラ基地奪還作戦~ハバラ高地にて~(異世界転移6ヶ月後)
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第53話:いつかの球技大会のように

「この! 放せ!」



 ヤスナリが、俺の腕をほどこうとするが、カスミ龍の落下により、態勢たいせいたもてず、力がこもっていない。


 拘束したまま、俺とヤスナリは落下する。


 落下の速度は、どんどんあがっていく。地面に向かって、ノンストップだ。


 その速度に、空戦部隊はついてこられない。あっという間に引き離された。


 ヤスナリのチートスキル『飛行フライ』について考えた。彼は自らだけでなく他の者にもその力を及ぼすことができる。ただ、その力の及ぶ範囲は限られている。それは、空戦部隊の固まった動きを見ればわかる。


 では、チートスキルの範囲から外れたら、空戦部隊はどうなるのか。

 

 自然の摂理に従うのだろう。つまり。


 

「「「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」」」



 落下する。


 今聞こえているのが、風を切る音なのか、それとも、空戦部隊の悲鳴なのかさだかではない。ただ、このスリル満点の垂直落下型カスミコースターに、俺も叫びたい思いは一緒だった。


 ヤスナリが、叫ぶ。


 

「死ぬ気か!?」


「おまえが話を聞かないからだろ!」



 それに、



「龍が墜落死なんてするかよ!」



 地面が眼前まで迫ったところで、カスミ龍は姿勢を反転させ、大きく翼を広げた。


 凄まじい風の嵐が、大地に吹き荒れ、兵士が虫のように吹き飛ぶ。


 

『着地~』



 気の抜けたカスミ龍の声を通信に流れる中、俺とヤスナリはついに彼女の背中から放り出されていた。



「ぬぉぉぉお!」



 俺は、地面に叩きつけられた。武装強化していても体中痛いし、叫び過ぎて、肺の空気を全部吐き出した気分だ。


 だが、なんとか生きている。


 

「ヤスナリは?」



 俺は周囲を見まわした。放り出されたときに、ヤスナリの腕から手を放してしまった。もしかしたら、ヤスナリは、落ちる直前にチートスキルで飛んだかもしれない。


 いや、とはいっても混乱状態であったし、咄嗟にチートスキルを使えたかどうか怪しい。


 だとすれば、その辺りに落ちているはずだが。


 そう考え、振り返った時。


 ほおを冷たい風が通り過ぎた。


 視界のはしとらえたのは、はがねやり


 続いて、頬を血がつたい、ぽとぽとと地面を赤く染めていた。



「また、はずしたな、ヤスナリ」



 脈絡みゃくらくなくこぼしてしまった言葉が、散らばったパズルの中から、いつぞやの球技大会をハイライトさせる。


 そして、急速にパズルが組みあがり、現状をクリアにする。異世界、戦場、頬をかすめる槍、睨みつけてくる装備の破損した帝国兵。


 その帝国兵の顔を、俺はよく知っていた。



「やってくれたな!」



 かぶとを破損して、あらわになったヤスナリは、俺をぎろりと睨みつけていた。飛行のチートスキルは使えなかったのだろう、装備は破損し、額からは血が流れ、右足を引きずっていた。


 

「くそっ! 王国兵め! ぶっ殺してやる!」


「まだ言ってんのかよ」



 俺がよろりと立ち上がると、ヤスナリは近くに散らばっていた槍を一本、飛行のチートスキルで手元に寄せた。


 俺は、というと。


 やべ、剣は投げちまったからな。


 とりあえず、ベルトに備えてあった短剣を引き抜く。この短剣で、あんなでかい槍をどうにかできると思えないが。



「なぁ、もうやめようぜ。やっぱ向いてねぇよ」


「うるさい! これは俺の任務なんだ! 王国兵を皆殺しにする!」



 こんなかたくなな奴だったかな。


 異世界に来てから、変わっちまったのか。そうなっても仕方のない状況ではあるけれど。


 おまえも、こんな簡単に、友達を見捨てるんだな。

 

 俺は視線を外さずに、別の通信を受け、ラブルから地上の部隊の配置を確認する。


 カスミ龍の落下で、ゾンビ兵とラブル分隊は、散り散りになってしまった。だが、ちょうど撤退していたソマリ隊が、俺の近くにいるらしい。



『クロ隊長が見える位置にいるぜ。そいつが大将首か?』


「そうだ。だが、まだ動くな、指示を待て」


『はぁ? 何だよ。手柄てがらを独り占めするつもりか?』



 そんなわけないだろ、と小声で応える。


 できれば、ヤスナリを殺したくない。帝国の英雄を殺したとなれば、帝国との関係は最悪になる。帝国は、王国と同じく人間の支配する国。最も同盟を組みやすい相手である。


 それに、ヤスナリはクラスメイトだったし、友達だった。


 

「これが最後だ。話を聞いてくれ、ヤスナリ。俺は、このゲームを最も被害の少ない形で終らせたいと思っている。俺とおまえが、協力すればできるはずだ」


「話し合いなど無駄だ! 俺はおまえらを殺す! それが俺の任務で、それ以外のことは、どうだっていい!」



 ヤスナリは叫んで、槍を高く持ち上げ、振りかぶり、投擲とうてきの姿勢をとった。



「王国兵を殺す! 王国兵を殺す! 王国兵を――」



 ほぼ同時に、俺は、ソマリに合図を送――


 ――ろうとしたが、やめた。


 ヤスナリが動きを止めたからだ。突然、困惑の表情を浮かべて、それから、まばたきを二度三度とし、



「……クロ?」



 驚いたように呟いた。


 

「クロ、だよな?」


「あぁそうだが、どうしたんだ、ヤスナリ?」


「俺、どうして、こんなところに……」


「おい、ヤスナリ、いったい何を――」



 俺とヤスナリが共に混乱していた。何が起きている? 何が起こっていた? ヤスナリは何を言っている? 疑問だけが山積みになっている中で、その答えをヤスナリに聞くことは、もはやできない。


 

「何やってんだ! クロ!」



 声と共に飛んできたのは、白銀の鎧を着こんだ一人の英雄。


 アキト。


 彼は現れると同時に、大剣を力の限り振った。


 その一振りは、閃光せんこうとなり、大地をえぐり、ヤスナリの身体をみ込み、そして、一瞬にして破砕はさいした。

2020/12/30 誤字修正しました

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