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英雄達の偽曲~親友に裏切られて全て失ったけど【コスプレ】スキルで世界征服に邁進します~  作者: 最終章
ハバラ基地奪還作戦~ハバラ高地にて~(異世界転移6ヶ月後)
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第52話:交渉

余地よちはないってさ』


 

 返す言葉を思いつかなかった俺に、カスミが声をかけてきた。



「いや、待てよ。何か勘違いしているのかもしれないだろ。まだ、何も交渉こうしょうしていないのに、話し合いの余地がないって」


『別に私はおかしく思わないけど。だって、話し合いをするつもりなら、いきなり攻めてきたりしないし」


「それはそうだが」


『ヤスナリの言った通りってことじゃないの? 初めから話し合うつもりなんてない。あいつらはこのゲームに乗ったのよ。あたし達のことを殺すつもりなんだ』



 そう、なのか?


 カスミの考えは自然だ。ヤスナリの言うことをその通りに受け取れば、そういうことになる。


 殺し合い。


 想定外ではない。むしろ、この最悪のケースを想定して、俺はずっとそなえてきた。王国内の問題を解決し、軍隊をつくり、きたる戦争への準備をしてきた。


 だが、そうならなければいい、と心のどこかで思っていた。


 しかし、すでに帝国軍の侵攻はされ、こうして交戦状態におちいっている。


 だとすれば、もう戦うしかない。


 

「……ちくしょう」



 俺は剣を握り直し、なるべく深く息を吸った。


 大気が薄いからか、あせりのせいか、息が肺に落ちて来ない。心臓だけが胸の内で早鐘はやがねを鳴らす。



「カスミ、もう一回、あの部隊に突っ込んでくれ」


『えー、あいつら逃げないし、槍で突いてきて痛いし、嫌なんだけど』


「あと、一回だけだ」


『もう、仕方ないな』



 実際のところ、あと何回か繰り返す必要があるだろうが、それを言うとカスミのやる気がなくなるかもしれないので、言わないでおく。


 カスミは二度()ばたいて、急旋回きゅうせんかいし、そのまま、空戦部隊に突っ込んだ。


 狙うは、ヤスナリ。


 彼を捕獲ほかくすれば、他の奴らもチートスキルの恩恵おんけいを受けられないだろう。


 これまでの数度の撹乱かくらんで目星はつけてある。空戦部隊が誰を中心に動いていて、誰を守るように動いているか。


 俺は、カスミに指示を加えて微調整をほどこし、その中心部分に突撃をしかけた。


 空戦部隊の外側にかまえていた奴らが風に吹き飛ばされる。中心の隊員達が、回避行動をとる。


 俺は、彼らの動きに注視して、そして走った。


 カスミ龍の背中に張り付くようにして、目的の者に向かう。



「ヤスナリ!」



 重装備の帝国兵。他の者と装備に違いはない。ただ、彼だけが、ほとんど攻撃に加わらず、回避行動ばかりをとっていた。


 周囲の帝国兵をかわして、俺は、彼に向けて剣をふるった。


 帝国兵は、槍で、剣を受けた。


 衝撃が手から腕に響く。


 俺は、装備強化のスキルを靴に集中して、カスミ龍の背中から離れないように努めた。


 空戦部隊とカスミ龍が交錯こうさくし、そして、目的の帝国兵を抑えたまま通り過ぎる。


 当たり、か。


 どうやら、一度で当たりを引いたようだった。


 他の空戦部隊が、カスミ龍を追ってついてきた。先ほどまでの様子見ではなく、明らかに焦りを見せて、追従ついじゅうしてくる。



「捕まえたぜ、ヤスナリ!」


「殺す!」



 何で、そうなる!?


 まぁ、こっちも剣を向けているのだから、間違った反応ではないが、もう少し歩み寄る姿勢をだな。



「慣れない言葉を使うなよ。ダサいぜ」


「うるさい!」


「だいたいおまえにそんなことできんのかよ。大事なところでビビっちまうおまえがさ。球技大会の決勝を忘れてないぜ」


「何の話だ!」


「いいから、部隊を引き上げさせろ。降伏こうふくすれば、命の保証ほしょうはする」


「黙れ!」


「あのゾンビ共は誰のチートスキルだ? あぁいう悪趣味な力を使いそうなのは、ツツイかタネクラだけど」


「答えるわけないだろ!」



 ヤスナリは苛々とした口調で叫び、槍突きを繰り出してくる。俺は剣ではじいて躱す。リーチでは向こうが有利だが、やはり重装備ゆえ俊敏性しゅんびんせいに欠ける。


 

「王国を滅ぼす! それが俺の任務だ!」


「いつからそんなにまじめ野郎になったんだよ! おまえ、学校行事とかサボる方だっただろうが!」


「おまえの知っている俺ではない!」



 あぁ、そうかよ!


 

「じゃ、どうなっても知らねぇぞ!」



 俺は、剣をヤスナリに投げつける。ヤスナリは剣を槍で受ける。その間に、俺はヤスナリに飛びついて、彼の腕をつかんだ。



「カスミ!」


『オッケー!』



 カスミ龍は、翼を広げ、急停止し、それからスッと翼を折り畳む。そして。


 落下した。

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