第47話:槍の雨
「「「ぐぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!」」」
そこかしこで悲鳴があがる。
大地に突き刺さる無数の槍。そこに串刺しになった兵士達。
まさしく阿鼻叫喚の地獄絵図。
おそらく、ヌケバシ部隊があっという間にやられてしまったカラクリは、これだろう。
「飛行能力か。くそチートめ!」
元いた世界での戦争は、時代と共に変化していった。その一つの大きな転換点は、飛行機の登場だったと、ミリオタのコスプレ仲間が言っていた。
こちらからの射程外、かつ、死角からの一方的な攻撃。
高地などとは比べものにならない、圧倒的な地理的優位。
空に浮かぶ敵部隊を見上げ、俺は、その脅威に震える思いだった。
「全部隊、無事か!?」
『ラブル分隊、おおよそ防ぎました! 負傷者を下がらせつつ、陣形を組み直します!』
『ボンベイ分隊、こっちは異常なしです』
『こっちも何ともないぜ』
どうやら、空からの攻撃を受けたのは、正面にいたラブル分隊とシュナーザ部隊だけのようだった。
後方に配置していたバリニーズ隊長の伝達が早かったおかげで、空への盾の展開が間に合った。
シュナーザ部隊の方は、反応が遅れたようで、大分、被害を受けている。
空からの攻撃は、確かに脅威だ。
しかし、知っていれば、対策はできる。
そう、俺達は、帝国にいる英雄のチートスキルをある程度知っていた。
先に帝国と獣国が戦争を行っていたからだ。そこで、英雄たちがチートスキルを使っており、それを見た獣国の兵士達の情報を、諜報員が得ていた。
その一つが、飛行能力。
当然、ヌケバシ隊長もそのことを知っていたはずだが。
この世界には、飛行魔法があるにはあるが、実戦で使えるようなレベルではない。飛行機なんてものもないのだから、空戦という概念がない。
ゆえに、空戦部隊の恐ろしさを理解していなかったのだろう。
「俺も理解していなかったよ!」
一度目は、なんとか凌いだ。俺のチートスキルで強化した盾を、ラブル分隊が空に向け、槍の雨を防いだのだ。
だが、何度もこんな芸当ができるだろうか。
いや、するしかないんだが。
それにしても、
「躊躇しないんだな、ヤスナリ」
元クラスメイト、砂口安成。地上からでは、その姿を明確に視認することはできないが、確かにそこにいる帝国の英雄。
サッカー部の普通の男子だった。豆一郎とよくつるんでいて、帰りにコンビニでアイスを食べていた。
そんなヤスナリが、何の躊躇もなく、人殺しの凶槍を降らせるだなんて。
「腹を括ってんのか、それとも、ゲームか何かと勘違いしているのか」
どちらにしろ脅威だ。
どのくらいの頻度で、この槍の投下攻撃を行えるのかが気になるところだが、一度目の攻撃から、一応、槍の雨は止んでいる。
次の攻撃までに態勢を整えたいところだが。
『怯むな! 突入!』
シュナーザ隊長は、そう考えなかったらしい。この態勢の崩れた状態で、まだ進むというのは、蛮勇である。
だが、この大雑把さは、ある意味で、シュナーザ部隊の特徴ともいえる。隊員も慣れたもので、シュナーザ隊長の号令に従っている。
敵視点で見てみれば、あれはあれで怖いな。
その考えは当たっていたらしく、ついに敵部隊が向かってきた。
向かってきた?
基地に立てこもっていればいいものをわざわざ向こうから出てくるなんて。
帝国軍も何を考えているんだ?
俺がいささか困惑している中、シュナーザ部隊と帝国軍が衝突した。
「ラブル分隊は後方支援だ! シュナーザ部隊の負傷兵を撤退させろ!」
ラブル分隊の奴らから不満の声があがりそうなのもだが、それは後で聞こう。ここは作業分担して、できるだけ戦線を維持できるようにすべきだ。
ここで、俺達が敵部隊を引き付けて置けば、ボンベイ分隊とソマリ分隊の奇襲が有効に働く。
戦闘は泥臭く行われ、シュナーザ部隊と帝国軍は入れ乱れる形となった。
そろそろ突入させるかと、俺がボンベイと通信をやりとりしているときだった。
『クロ隊長!』
バリニーズ分隊長の割り込みの声に、俺は、すぐに反応できなかった。
あまりに想定の外だったからだ。
「おいおい、嘘だろ」
シュナーザ部隊と帝国軍が入り乱れる合戦場の真上から、空戦部隊は、再度、槍を投下した。




