第46話:防戦
武装強化。
俺のチートスキルは、武装の能力を引き上げることである。たとえば鎧ならば、堅い鎧となり、剣ならば切れ味が鋭くなる。
しかもある程度のエリアに影響力を及ぼすことができるため、こういう団体戦では効力を発揮する。
しかし、
『わかってはいましたが防戦一方です!』
ラブルからの連絡の通り、戦況は芳しくない。
俺達が組んでいるのは密集陣形。盾を前に突き出して、前からと上からの矢を防ぐ。
敵の矢は魔法で強化されており強力であるが、さすがに俺のチートスキルの方が上のようで、今のところ防げている。
ただ、リーチの問題がある。
敵の矢は基地から飛んできて、俺達を足止めする。これでは、前に進めない。
『ある程度の犠牲は覚悟して突っ込みますか!』
「だめだ! 今は耐えろ。敵の攻撃は防げている。わるい状態ではない」
そう、耐久できる状態。
矢だって有限だ。撃ち続けられるわけじゃない。しかも敵は、遠征で、このハバラ高地まで足を延ばしているのだ。補給線もまだ確保していないだろうから、限界はすぐ来るに違いない。
いや、というか、そうであってくれ。
「作戦は成功している! 向こうの矢を防ぎつつ、応戦しろ!」
俺が指示をすると、通信に怒号が割り込んでいた。
『腰抜け共め!』
声の主は、シュナーザであった。
『この程度の矢に怯んでいて、王国の騎士を名乗れるか! 我らの勇敢なる部隊は進むぞ!』
「ちょっと待て! もう少し様子を見てから」
そんな俺の忠告を聞かず、シュナーザ部隊は、突撃を開始した。
彼らは、陽動の目的を理解していないのか? 敵部隊がこちらに注力している今、無理に突撃するメリットはないだろう。
シュナーザ部隊の積極的な動きを見て、ラブル部隊に動揺が走っていた。もともと血の気の多い荒くれ者の集団である。
それがいくら無謀であろうと、勇気ある動きにはつられてしまう。
その雰囲気を察してか、ラブル分隊長が慌てて尋ねてきた。
『どうしますか、クロ隊長!?』
「絶対に動くな。シュナーザ部隊はもういいから、おまえらは援護に徹しろ」
ラブル分隊長ならば、彼らを制御することができるだろう。今は、動かないのが吉だ。
先の内容は、シュナーザ隊長にも教えたはずだが、まったく理解していないようだった。
そもそもまだ本命が出てきていない。
帝国軍の攻撃は、はっきり言って普通だ。シュナーザ部隊も凌げている。だが、この程度であるはずがない。この程度ならば、そもそもハバラ高地を守っていたヌケバシ部隊が、簡単に破れるわけがないからだ。
原因が、まだ出現していない。
いや、どうだろう。
俺は、そこで思考がクリアになるのを感じた。
シュナーザ部隊が前に出てことで、少なからず敵部隊は動揺する。何かしらの対策を講じるだろう。とすれば、奥の手を出すしかない。
そして、俺の思考は、敵部隊の鏡となって、事象として現れた。
バリニーズ分隊長からの通信である。
『クロ隊長! 現れました!』
その言葉を受けて、俺は部隊全員に対して、警鐘を鳴らした。
「全員、頭上注意!」
次の瞬間、あたり一面に、無数の槍が降り注いだ。




