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第4話:演説

「皆さんは、フィギュアを持っていますね。このフィギュアこそが力の源です。力を得る方は簡単です。食べればいいんです。食べることで、チートスキルが皆さんの力となります。食べてしまえば、チートスキルは皆さんの技能となりますので、自然と使い方はわかります」



 女神が、そう告げたが、誰もフィギュアに口をつける者はいなかった。


 ガチャを回すだけならば、さほど抵抗はなかったが、口に含むとなると、躊躇ためらわざるを得ない。


 そもそも食べられるのか、実は毒か何かで死んでしまったりはしないだろうか。そんな疑念がぬぐえず、食べる勇気がでない。



「あ、大丈夫ですよ。フィギュアはそのまま食べられますし、チョコミント味にしてあります。ミントが苦手な方がいたらすいませんけどね」



 そんなこと言われても。



「もう、仕方のない子達ですね。そのフィギュアを呑み込んだら、後は異世界に送るだけなんですけど。うーん、そうだ、こうしましょう。5分待ちます。5分後に皆さんを異世界に転移させます。それまでにフィギュアを食べちゃってください。あ、ちなみにここで食べていかないとチートスキルは得られませんからね」


 

 5分か。


 意を決するには、いささか短い気もするが。


 せめて、誰か一人が食べて、毒見してくれればいいのだけれども、その一人目になろうという者がいない。


 などと周りをうかがっていると、クラスメイトの1人が、まったく別の話題を打ち上げた。



「みんな、聞いてくれ!」



 声をあげたのはクラス代表の楠本豆一郎くすもと とういちろうだ。眼鏡に七三分けの髪型と、まじめキャラを正しく守る彼は、呼びかけるように声をつくった。



「この茶番に僕たちが付き合う必要はない! 僕はまだ何かのトリックだと思っているが、仮に、仮に本当に異世界に行くのだとしても、僕たちが世界征服なんて馬鹿げたことをする必要はないんだ!」


 

 まるで政治家のように、腕を大きく振り上げて、豆一郎は演説を繰り広げた。



「力があるのならば平和のために使うべきだ! 異世界では戦争がえないという。その戦争を僕たちの力で終わらせるんだ。幸い、皆がそれぞれの国に行くのならば、僕達で力を合わせて停戦を訴えればよいのだ。そうすれば、僕たちが戦う必要はないだろ!」



 豆一郎の主張はもっともだ。


 この戦争ゲームにもう一つのエンディングがあるとすれば、それだろう。


 幸いにして、このゲームは戦わなかった際のペナルティがない。景品を欲しくないのであれば、ゲームに参加しなくてもよいのだ。


 クラスメイトも、豆一郎の言葉に首を縦に振っている。ここで共感を見せておくのは、世渡りとしては正しい。


 しかし、である。


 それは、誰も景品を目指さなかった場合にのみ、成功する。誰か一人でも裏切れば、成立しない作戦。


 そして、俺は、ほぼ不可能だと思っていた。


 少なくとも俺は、この方針をとらないからだ。一人が裏切ったら瓦解がかいするような作戦に投資するよりも、このゲームで勝てるように動いた方が効率がいい。


 俺が、そう思うのだから、他の者も内心では、同じようにたくらんでいるに違いない。


 豆一郎の意見は、この場で言うべきことではあるが、実質的に何の効力も持たないものだった。


 そして、俺の思考を裏付けるように、



「きゃぁぁぁぁあ!」



 唐突に悲鳴があがった。

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