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英雄達の偽曲~親友に裏切られて全て失ったけど【コスプレ】スキルで世界征服に邁進します~  作者: 最終章
歪みの果ての暴動~コラット領獣人街にて~(異世界転移1か月後)
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第36話:アジト

「まず、あたしにバミズと話をさせてくれ」



 廃墟はいきょである。


 壁はところどころ崩れていて、窓は割れ、それらが布でおおわれて簡単に補修ほしゅうされている。


 ソマリの話では、ここにバミズがいるとのことだが、外からは判断できない。


 ただ、廃墟の前には、二人の見張りが立っており、彼らの存在が、バミズのいる可能性を高めていた。


 その入口を、遠方でうかがっていたところ、ソマリが、先の提案をしてきたのだった。



「ソマリはグループに入っていた時期があると言っていたが、バミズと面識めんしきはあるのか?」


「いや、一度、紹介してもらったくらいだ。向こうは、あたしの顔なんて覚えてないだろうよ」


「じゃ、やめとけ。今のバミズ一派いっぱは、批判する者を許さないだろうよ。それが、どれだけ建設的な意見であってもな」



 それに、と俺は告げる。



「ここから先のことに、ソマリは関わっていない方がいい。どんな結果になろうと、裏切り者といわれる危険性がある」


「あんたに心配される覚えはねぇ」



 いやいや、こちらから依頼したわけだから、一応、責任があると思うんだけど。などという、俺の懸念をよそに、ソマリは、ふんと鼻を鳴らす。



「今さらなんだよ。ここに、あんたらを連れてきた時点で、あたしは裏切り者だ。そんなことは、最初からわかっている」


「それでも、同胞どうほうに手をかけるのは嫌だろ」


「同胞っていうなら、これは、同胞の話だ。よそもんに手をよごさせて、こっちは横で見ているだけなんてことできるかよ」



 なるほど、そういう仁義じんぎか。


 だとすれば、これ以上、拒絶きょぜつするのも野暮やぼというものだろう。



「わかった。その代わり、俺達もついていく」


「話を聞いてなかったのか? 人間がいたら、話し合いにならねぇって。中に入るときは、さすがにフードをとらないとだめだぞ」


「大丈夫だ。変装してきたからな」



 俺がにやりと笑って、サクに視線を送ると、彼の方はぎこちなく笑い返してきた。


 俺とサクがフードをとると、俺達の頭には、犬耳が生えていた。

 

 

「クロくん、やっぱりこれ恥ずかしいよ」


「どうして? いい出来だろ?」



 俺の作った犬耳カチューシャだ。


 獣人の制圧に行くとなったときに、もしかすると変装するかもしれないと思い、かりかりと作ったのだ。


 毛並みの感じを出すのに、けっこう苦労したが、わりといい出来だと自負じふしている。


 実際に、サクなどは、もともとの素質もあいまって、とってもかわいらしく仕上がっている。



「こんなのでごまかせるのかなぁ」


「コスプレで大事なのは、思い込むことだ。しっかりと思い込めれば、誰も違和感を覚えない」


「いや、コスプレはそうかもしれないけど」



 サクが不満をらす一方で、ソマリが、ぬぅと奇妙きみょううなり声をあげていた。



「確かに、それをつけているとあんたらの人間臭さが消えるんだよな。いったいどんな魔法なんだ?」


「え? 消えるの? これで?」



 ほら。



「獣人のソマリから、お墨付すみつきがもらえたんだぞ。だから、コスプレは気持ちなんだ」


「はぁ、僕もコスプレデビューか」


「安心しろよ。これから、もっといろんなコスプレをさせてやるからな」


「いや、頼んでないけど」



 いずれサクにはいろいろコスプレさせるとして、どんな衣装が似合うのか想像がふくらむところだが、その気持ちは今は抑えておいて、俺達は、バミズのアジトへ侵入をはかった。



「おい、止まれ。何者だ?」


「南地区のガプーラの遣い、ソマリだ。王国側の情報をもってきた。バミズはいるのか?」


「ガプーラの?」



 ソマリが、コートの中からペンダントを取り出して見せると、見張りの者は、ちょっと待っていろ、と言って中に消えていった。


 どうやら、ガプーラ一派であることを示す記号があるらしい。その効果はしっかりとあったようで、しばらく待つと、ソマリと俺達は、アジトの中に通された。


 アジトの中は、外側と同様にきたならしかった。その上、物資ぶっし所狭ところせましと置かれており、確かにアジトといった風体ふうていだ。


 通されたのは、二階の一室。


 黒い布で窓が覆われており、薄暗い。その中に、魔光石ライトストーンがぼんやりと浮かんでおり、なんとなく鍾乳洞しょうにゅうどうの中にいる気分だ。


 思ったよりも獣人が多くいた。何やら、会議を行っていたようで、もしかすると重要人物がそろっているのかもしれない。


 だとしたら都合がいいのだけど。


 部屋の一番奥に、一人、異彩いさいを放っている男がいた。


 格上なのをわかりやすく示すために、高い椅子いすに腰をえ、皆を見下ろしている。長い灰色の耳に、ふさふさの尻尾、切れ長の瞳は、ルビーのように赤く輝いていた。



「バミズ様、お連れしました」



 先行していたバミズ一派の構成員が、深々と頭を下げるのを見てから、その男、バミズは、赤い瞳をぎろりとこちらに向けた。



「おう、婆さんの遣いがいったい何の用だ?」

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