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英雄達の偽曲~親友に裏切られて全て失ったけど【コスプレ】スキルで世界征服に邁進します~  作者: 最終章
歪みの果ての暴動~コラット領獣人街にて~(異世界転移1か月後)
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第32話:ソマリ

 時代錯誤じだいさくごにもほどがある台詞セリフに、俺は、少しくらっとした。


 いや、異世界で時代も何もありやしないんだが、一昔前の番長じゃないんだからさ。


 だが、わかりやすいのはいいことだ、と俺は考え直し、グローブをはめつつ、一歩前に出た。



「わかった。受けて立とう」


「へへ、そうこなくっちゃ」


「その代わり、俺が勝ったら、あんたらのリーダーのところへ連れていけ」


「そういうことは勝ってから言え!」



 えつつ、ソマリは向かってきた。


 その勢いを殺すことなくみ込んで、右拳みぎこぶしを俺の顔面めがけてり出してくる。


 はやっ!


 獣人は、魔法がほぼ使えない。その代わり身体能力が非常に高い。


 とはいっても、ソマリの動きはずば抜けていた。身体能力に加えて、彼女の身のこなしが、速度をあげているのだろう。


 俺は間一髪かんいっぱつのところで、その拳を避ける。


 続いてくる拳撃けんげきのラッシュを、俺はすれすれで避けていく。その際、俺は考えていない。


 勘だ。


 言ってしまえば、チートスキルである。俺のスキル、装備強化は、装備の力を引き出す。戦闘用の武器を持っていれば、戦闘能力事態があがるのだ。たとえば、戦闘用のグローブをつけていれば、それだけで戦闘能力が上がる。


 身体能力が向上するだけでなく、戦闘スキルが上がるのだ。


 武道の心得などはないが、このチートスキルのおかげで、どう動けば敵を倒せるかが、無意識レベルでインストールされる。


 このスキルを最大限使えば、ソマリの動きに対応することなど容易だ。



「この!」



 なかなか当たらないことに、ソマリはいらつき始めていた。


 

「もうあきらめたらどうだ?」


「うっせぇ!」


「おまえも十分強いが、俺には勝てない」


「避けてるだけじゃねぇか!」



 やれやれ。


 どうしたものか、と俺が考えていると、突然、フッとソマリの身体のじくが横にぶれた。


 違和感を覚えたのは一瞬で、次の瞬間、ソマリの頭の横から、強烈な蹴りが跳ね上がってきた。



「くらえ!」



 おそらく鉄板が入っているだろう、そのブーツがすさまじい速度で、俺の頭部めがけて放たれる。


 当たれば、頭蓋ずがい木端微塵こっぱみじんくだくだろう。



「当たればの話だ」



 俺の身体は、ソマリの初動に合わせて動いていた。足をスライドさせ、身体をスウェイさせて、ソマリの蹴りをかわす。


 眼前を通過する足には、ひやひやとさせられたが、俺の身体は、すべるようにして、ソマリの背後をとった。


 チートスキルによる直感に従えば、ここでソマリの首に手刀を放てば、彼女を撃沈げきちんさせられる。だが、首は危ない。最悪死なすか、後遺症を残す恐れがある。


 これから、交渉をするのだから、できれば遺恨いこんを残したくはない。


 だとすれば、と俺は瞬時しゅんじに考え、別の行動に転じた。


 ()()()()()()()()()()()のである。



「痛っ!」



 ソマリの悲鳴と、バチンと小気味のいい音が同時に鳴り響いた。


 それが、勝負の決着の合図あいずとなり、勢いで前に吹き飛ばされたソマリの負けで、俺の勝利が明らかとなった。


 続いて、なぜか歓声があがった。


 人気者と英雄の一対一タイマン。そりゃ盛り上がるのもわかるが、状況を考えるべきではないだろうか。



「うぉ! 英雄様が、ソマリの尻をぶっ叩いて倒したぞ!」


「すげぇ音だったな! ソマリの尻をぶっ叩いた音!」


「尻ぶっ叩き英雄ヒーローだ!」



 うん、その称号はいらない。

 絶対に定着させるなよ。


 俺がいささかイラっとしていると、ソマリが尻をさすりながら身体を起こした。



「てめぇ! 何しやがる!」


「おまえの尻をぶっ叩いた」


「やめろ! 言うな!」


「おまえが聞くからだろ」


「くっそぉ、恥かかせやがって!」


「おいおい、まだやるのか?」


「当たり前だ! てめぇの尻の皮をいでやる!」



 なんて猟奇的りょうきてきなことを言うんだ。


 しかし、これで勝敗は決したと思っていたのに、往生際おうじょうぎわのわるい奴だ。俺が、もう一発、尻におみまいしてやろうかと気合を入れいていると、勝負を止める声がかかった。



「やめないか、ソマリ」



 声の主は、老婆ろうばであった。猫系の獣人で、やたらと線が細く、服がだぶついているが、腰が立っており、活発な印象を受ける。



「ばぁちゃん! でもさ!」


「どう見ても負けじゃろうが。恥の上塗うわぬりをするんじゃない」



 老婆の言葉に、ソマリは渋々《しぶしぶ》と拳を収めた。それから、老婆は、俺の方に向き直って、指を胸の前で動かし、祈りの姿勢を示した。



「英雄様、非礼ひれいをおび致します。わしは、ガプーラ。こいつらのまとめ役でございます」


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