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第3話:戦争ゲーム

 ルール?


 こういうのは異世界転移して、あとはそのまま放ったらかしというのが常道のような気がするけれど、この女神は何かしらのルールを設けるというのか。


 何だろう。

 

 魔王を討伐しろとかそういうものかな?


 俺達が次の言葉を待っていると、女神が話を続けた。



「今から皆さんが訪れる世界では、複数の国があって、侵略したり侵略されたりと戦争を繰り広げています。本当に下等生物かとうせいぶつというのはおろかですよね。まぁ、それはいいとして、皆さんには、その内、5つの国に分かれて所属してもらいます」



 戦争?


 なんだか物騒な話が聞こえてきたが、いや、それよりも、もっと不穏なのは、俺達が分かれるという点。


 チーム分けする理由は、ごくごく単純で、一つしか思いつかない。


 俺が、最悪のシナリオを想像している最中、女神はすらりとそれを言ってのけた。



「皆さんには、所属した国に協力して、戦争ゲームに勝ちあがり、そして世界征服をしてもらいます!」



 ()()()()



 言葉にすると陳腐ちんぷ滑稽こっけいに聞こえるが、実際に生じることは、血みどろの惨劇。歴史に詳しいわけではないけれど、世界制覇を目指して、いったいどれだけの血が流れたかは、想像を絶する。


 そして、おそらくではあるが、戦争の情勢を個人で変えられる力を、俺達はこの手に得ている。



「まぁまぁ、皆さんの考えていることはわかります。そんな面倒くさいことをしたくないというのですよね。大丈夫です、ご安心ください。見事、世界征服をした方には、豪華景品を用意しています!」



 景品?


 女神は、ぱんぱかぱーんと口で効果音出してから、一枚のチケットを取り出した。



「どんな願いでも叶える券!」



 どこからともなく、おー、と声があがった。クラスメイトではない。おそらく、女神の自演である。



「私の力を使って可能な限りの願いを叶えます。まぁ、私は女神なので、おそらく皆さんが想像し得る願いであればすべて叶えられますよ。億万長者になりたいとか、全知全能になりたいとか、嫌いな奴を全員殺すとか、元の世界に戻りたいとか」



 どんな願いでも叶う。


 この大それたキャロットをぶら下げて、俺達に異世界で戦争をさせようとしているわけだ。


 荒唐無稽としか言いようがない、が、俺達には、この言葉に従ってしまうだろう。いや、従わざるを得ない。


 仮に、俺が世界征服を目指さないとしよう。だが、他の奴はどうだ? 自分達がうかうかしている間に力をつけて侵略してくるかもしれない。


 疑心暗鬼。


 これをぬぐい去るには勝者になるしかない。つまり、ゲームに参加せざるを得ない。


 どうするか、と考えをめぐらせている俺をよそに、女神はさらに細かいルールを説明した。



・沢照高校2年3組の生徒全員参加

・ここにいる30人を6人ずつ5チームに分ける

・1チームの最大数6人

・Bランク以下の者は自由にチームを移動できる

・世界征服したチーム全員に景品を与える



 なるほど、チームの人数に上限があるのか。


 これは、全員が1チームに集結してしまうのを防ぐためか。さらに、Aランク以上のチーム移動を禁止しているのは、ハイランクだけでチームを再編成するのを防ぐため。


 どうしても争わざるを得ないようにできているわけだ。



「ルール説明は以上ですね。では、気になるチーム分けを発表しますよ。というか、もう皆さんにはお知らせしているんですけどね。カプセルの色を見てください。その色が同じ人が、同じチームですよ」



 言われて気づく。


 確かにカプセルの色が皆分かれていた。気づいた瞬間、カプセルは弾けて、俺の手首に手錠のように巻き付いた。


 魔法、か?


 クラスメイトから悲鳴に似た驚きの声があがるけれど、俺はなるべく冷静を心がけた。


 俺は、赤色。他のチームメイトは誰なんだろう。


 

「おい、クロ。おまえ、赤チームだな」


「明人、おまえもか?」


「あぁ、よかったぜ。クロと一緒なら安心だ」


「俺も、おまえと敵じゃなくてよかったよ」



 俺は、明人とグッと握手する。


 このルールだとチームが違えば、いずれ戦うことになる。それが友人だなんて悲劇的だ。少なくともそれは避けられたと俺は安堵した。



「クロ、赤チームなの! よかった、私も赤チームだよ!」


「瑠美も赤チームか。何だよ。いつものメンバじゃないか」



 俺は、肩の力の抜ける思いだった。仮にチームメイトを選べと言われたら、まずこの二人を選ぶ。その二人が、同じチームだったのだから、幸運という他ない。


 S級のチートスキルを引いた件といい、今日の俺はついてる。


 いや、本当にツキがあるのならば、こんなふうに異世界転移なんてさせられたりしないか。



「おい、クロ。おまえのチートスキルのランクは何だった?」


「ん? へへ、見てみろよ」


「なっ! S級!?」


「バカ! 声が大きい! 戦力はできるだけ隠しておきたい」



 周りを見まわしたが、明人と瑠美にしか気づかれてはいないようだ。

 

 

「すげぇぜ! さすがクロだな」


「運が良かっただけだよ。だが、これで、赤チームはグッと勝ちに近づいたな」



 にやっと俺は笑ってみせた。


 あとは、他の奴らのチートスキルの情報を集めて、作戦を立てれば、少なくとも負けることはない。


 そう考えながら、俺が残りのチームメイトを探していたところ、女神が手を叩いた。



「はいはい、チームメイト探しは後にしてくださいね。今から、とっても大事なことを話しますよ」



 それは、と女神は片手でフィギュアを掲げてみせる。チートスキルガチャで引いたカプセルの中に入っていたフィギュアと同じもののようだ。



「チートスキルの使い方です」

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