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英雄達の偽曲~親友に裏切られて全て失ったけど【コスプレ】スキルで世界征服に邁進します~  作者: 最終章
交錯する二人~獣国首都にて~(異世界転移10か月後)
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第26話:龍の背中で見上げる星空

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」



 ソマリの悲鳴ひめいと共に、俺達は、暗闇くらやみの中を落下していった。


 地面には、光が小さく揺れている。あれが何かわかったときには、もはや死をまぬがれることはできないだろう。


 俺は、バッグから魔光石を取り出す。魔力を込めると発光する石である。俺は、ありったけの魔力をこめて、石を光らせた。


 ここからはけ。


 タイミングと、時間と、それから運。


 やるべきことはやるだけやった。タイミングはおおよそばっちりだし、落下の時間はどうすることもできない。


 あとは運に任せるしかない。


 俺は、暗闇の中ですっと目をつむった。


 どちらにしろ暗闇の中。


 聞こえてくるのは、遠ざかるパーティ会場の喧騒けんそう、風を切る音、ドレスのはためき、ソマリの叫び。


 

 バサッ!


 

 そして、翼が強く大気を叩く音。


 

「来た!」



 俺は、身体をひねって態勢たいせいを整える。その横を突風が駆け抜ける。


 暗闇の中に、巨体がうごめいていた。


 巨体は、赤く光る大きな二つの目をこちらに向けてから、翼をかるく打って、ひょいと俺達の下へと身体をすべり込ませた。


 ドスン!


 わりと衝撃があって、俺は巨体の上で尻をさすった。


 

「え? 死んだ? 死んだの?」



 ソマリが、困惑こんわくした声を出していたので、俺はどうどうと背中を叩いて落ち着かせる。


 

「生きているよ。かろうじてだけど」


「嘘!? え? 意外と高くなかったってこと?」


「いや、迎えが来たんだ。俺達は、そいつに乗って、そのまま帰るんだよ」



 俺がソマリに告げると、魔法通信テレパスで突っ込みが入った。



『人をタクシーみたいに言わないでくれる?』


「そんなつもりはないよ。助かった。ありがとう、カスミ」



 巨体は、大仰おおげさに鼻を鳴らしてみせた。


 龍回帰ドラゴニア


 それが、王国所属のクラスメイト、田所香澄たどころ かすみのチートスキルだ。


 自らの身体を龍へと変身させることができる。飛行能力に加え、魔法耐性と物理攻撃耐性がつき、火も吐けるというチートぶりだ。


 本人は、えぇごついから、嫌なんだけど! とあまり気に入っていないようだが。


 

『暗いし、危ないし、何が起こっているかわかんないしで、すっげぇ不安だったんだから。正直、みつけらんなかったら、そのまま帰ろうかと思ってたんだからね』


「本当に、運がよかった」


『あとで、ルミルミにお礼言いなよ』


「わかっているよ」



 カスミには、首都から離れたところに待機たいきしていてもらった。協力者からの照明弾しょうめいだんの合図を受けたら、龍に変身して首都に突入する。そして、俺達を回収して離脱りだつ


 龍の機動力だからこそできるヒット&アウェイ。今後もこの戦法は使えそうだ。

 

 

『ていうかさ、今回の作戦て危険過ぎじゃね。そこまでしてやんなきゃいけないことだったん?』


「いや、どうだろうな。効果はあると思うが、危険と釣り合っているかというと怪しい。むしろ、失敗してもいいと思っていたのかもしれないな」


『はぁ? 何で? そんなわけなくない? 失敗していいんだったらやらなきゃいいじゃん』


「もう少しってから実行したかったんだが、王の耳に入って承認されちまった。だから、断れなくなった。王にちくったのは、アキトだという噂だが」


『あぁ。ったく、あんたら、さっさと仲直りしろし。友達だったんじゃないの?』


「その話は今度にしてくれ。わるいが疲れた」


『あ、逃げたし。まぁ、いいか。とりあえず、お疲れさん』


「おう」



 俺が、ふぅと息を吐いた。


 カスミの言う通り、リスクばかりでおいしいところの少ない作戦ではあったが、なんとか成功した。


 マイスキーと王国の勇者との密会。これは、獣国内にいる帝国の諜報員スパイの耳にはすぐに入る。そうすれば、帝国は王国との同盟を急ぐだろう。


 やっと一息つけるなと思ったそのとき、ソマリの顔が、ぐいと眼前に現れた。


 

「なぁ、助かったってことでいいんだよな」


「あぁ、お疲れ、ソマリ」


「じゃ、そろそろ聞きたいんだが、あの獣人の変態親父にあたしの身体を売ろうとしていた件、説明してもらおうか」



 あぁ、あったな、そんなこと。



『えー、クロ、そんなことしようとしたの? サイテー』



 なぜか、カスミまで話に入ってきて劣勢となったので、俺はあわてて弁明べんめいした。



「いや、違うんだ。あの後、すぐに離脱りだつするのはわかっていたから、ちょっとしたリップサービスというか」


「あたし、実は尻とか触られてたんだけど」


「あぁ、おまえ、だからあんな恐ろしい顔してたのか」


「全部、クロ隊長がわるい!」


「いや、でも、これはハニートラップだから、ある程度は仕方ないというか」


「「サイテー」」



 カスミとソマリの追及ついきゅうは、しばらく続いて、俺はげんなりとしながらも、とりあえず、作戦成功にホッとしていた。


 空を見上げれば、無数の星が浮かんでいて、あまりに幻想的な風景に、あぁ、そういえば俺は異世界にいたんだなと、龍の背中で、ふと思った。

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