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英雄達の偽曲~親友に裏切られて全て失ったけど【コスプレ】スキルで世界征服に邁進します~  作者: 最終章
交錯する二人~獣国首都にて~(異世界転移10か月後)
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第25話:またな

「ごもっともだな」



 俺は、ひたいに汗を浮かべた。クラスメイトにナイフを突きつけられれば、誰だってあせる。俺は、ウシノを落ち着かせるために話を振った。



「ウシノのスキルは、時間を止めるわけではないんだな」


「ん?」


「時間を止める場合、その中で動けるものはいない。こうやって話せたりもしないはずだ」


「ふーん。そうなのかもね」


「俺の体感時間を止めているのかと考えたが、そうでもない。倒れたテーブルや宙に浮いた水滴も止まっている。すべての物質が、その場に停止するといったたぐいかとも思ったが、そうだとすると、俺はこの状態で血液が流れず、窒息死ちっそくししているだろうから、それも違う」


「細かいこと考えるのね」


「だから、もっと概念的なスキルだな。ウシノが言った通り、ウシノが止めたいと思ったものが止まるスキル。そこで生じる矛盾むじゅんは何かしらで補完される」


「魔法なんだから、そういうものなんじゃないの?」


「それでいて、その影響範囲は10m程度。動作が停止しているのは、このテラスだけだ。部屋の中の奴らは、普通に動いている」


「で? それが何? ここでウズラくんに『一時停止ポーズ』の能力を見せたのは、逃がさないからなんだけど」


「いや、ここから得られる示唆しさは、光と音は止まらないんだということだ。パーティ会場で動く奴らの姿は見えるし、音も聞こえてくる。すべてが止まっているわけではない」


「……それが何?」



 さすがにウシノが警戒の色を出し始めた。そのとき。



 空に光が満ちた。



 ドン!



 続いて何かが破裂はれつする音が響き、周囲一帯に恐怖をまき散らした。



「きゃっ! 何!?」



 ウシノが短い悲鳴をあげる。


 同時に、俺の身体の自由が戻っていることに気づいた。俺だけじゃない。周囲一帯の時間が動き出していた。



「ソマリ! 走るぞ!」


「え? 何が!?」



 混乱するソマリに取り合うことなく、彼女の手を引いて、俺はパーティ会場の中へと駆け出した。



「あ! ちょっと、待ちなさい!」



 ウシノの声が後ろに遠のいていく。


 想定は当たった。一時停止のチートスキルは、ウシノの意識にるものが大きい。そうすると、彼女の心を乱してやれば、かれる可能性がある。


 そして、ウシノのスキルへの対処法は一つ。逃げること。一時停止の効果範囲外まで逃げられれば、彼女の能力は怖くない。


 ランクはBといったところか?



「なぁ、クロ隊長! 何があったんだよ!」


「話は後だ! 今は逃げるぞ!」



 俺とウシノの会話は、ソマリには聞こえていなかったらしい。そういえば、俺だけ意識があったと言っていたな。



「逃げるって言ったって、周りは敵だらけだぞ!」


「わかっている!」



 俺は、ソマリを連れて、パーティ会場を突っ切った。警備兵がテラスに集まっていたこともあり、パーティ会場を横切ることは容易よういだった。


 だが、警備兵はここにいるのがすべてではないだろう。階段を下りて、建物から逃げ出すことは不可能。


 パーティ会場を横切って、俺は反対側のバルコニーに出た。



「おい! どうするんだよ! 結局行き止まりだぞ!」


「いいんだ。ウシノから距離を置ければ」


「はぁ?」


「空中でもあいつのチートスキルの効果範囲にいたら停止させられちまうからな」


「空中? おいおい、まさか!」



 ソマリは顔を青ざめさせた。



「ちょっと待ってくれよ。この高さじゃ自殺だぜ!?」


「つべこべ言うな!」



 俺は、ソマリを引き寄せて、膝の後ろに手を添えてひょいと抱え上げた。ソマリは、驚いた様子で俺の首に捕まる。


 バルコニーの手すりに飛び乗って、一度だけ後ろを振り返る。



「またな、ウシノ」



 ウシノと目が合って、彼女のおびえたような顔が少し悲しかった。俺は、ウシノとそんなに仲が良かったわけじゃない。けれども、昔はもっと優しく笑う奴だったじゃないかと。


 またな、という言葉に、この世界でポジティブな意味はない。それは、次の殺し合いを示唆する言葉だから。


 それでも、クラスメイトにあったことで、あの頃の感覚を思い出した俺は、ついうっかりと、学校帰りのように口走ってしまった。


 ウシノの返答を待つことなく、俺は、バルコニーから飛び降りた。

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