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英雄達の偽曲~親友に裏切られて全て失ったけど【コスプレ】スキルで世界征服に邁進します~  作者: 最終章
交錯する二人~獣国首都にて~(異世界転移10か月後)
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第21話:媚を売る女

 突然のマイスキーの到来で、ソマリはかなりテンパっていた。



「あんたが、じゃ、なかった。あなた様が、マイスキー様でございますですか?」



 何だ、それ。


 丁寧にしゃべろうとしているみたいだけど、ちょっとバカにしているみたいだぞ。



「えぇ、僕は、キーロビナ・マイスキーですよ、お嬢さん。何か御用ですか?」


「いえ、あの、その、用っていうか、なんていうか」



 あ、だめだ、これ。


 しゃべりはソマリにまかせる算段さんだんであった。俺も見かけは女に寄せられるが、声までは難しい。頼んだときには任せろと大見得おおみえを切っていたんだけど。


 たじたじじゃん。


 仕方なし、俺は、心の中でため息をついてから、つばを一度呑み込んだ。



「マイスキー様、お目にかかれて光栄こうえいです。私は、クロエ。そして、こちらはソマリと申します。スピッツ様の紹介で参りました」


「あぁ、スピッツの紹介で来た達ですか。どうりで、かわいいと思いましたよ」



 にこりとマイスキーが笑うのを見て、俺は内心でホッとする。どうやら、男だとはバレなかったようだ。


 何だか、今日は、女声が出しやすい。自分でも驚くくらいだ。これならば、なんとかなりそうかな。



「実は、私達、マイスキー様を探していたんです。バラバラだった周辺諸国をまとめあげたのは、英雄達とされていますが、実際には、マイスキー様の手腕しゅわんによるところが大きかったと聞き及んでおります。そのような立派な方と一度お話ししてみたいと思っていたんです」


「はは、買いかぶり過ぎですよ。僕は、調整役をしただけです。ただ、そう言っていただけるのはうれしいですね」



 マイスキーは、満更まんざらでもないといった様子で頬をかいていた。


 この手の偉い男たちは、褒められることにえている。特に、『祝福の日』以降、英雄に立場を奪われてから、彼らは飢えに飢えていた。


 獣国に降り立った英雄たち、俺のクラスメイト達は、りだった獣の国をまとめあげて、獣国連合政府を樹立じゅりつし、他国との戦争に備えた。


 それは、マイスキー達がやろうとしてできなかったことであり、一気にげた英雄達に賞賛しょうさんの声があがった。


 一方で、マイスキーが不満に思ってしまうのも自然な話だ。その賞賛は自分が受けるものだったのだから。


 そこをうまくくすぐってやれば、気持ちよくしてやるのは簡単なことだ。



「私も商人の娘です。できれば、じっくりとそのたくみな交渉術をお聞かせいただきたいですわ、ねぇ、ソマリ」


「え、あ、あぁ。そ、そうだ、ですわね、クロエちゃん」



 ちゃん、はいらない。


 マイスキーは、グラスのワインをくいと飲み干して、テーブルに置く。そして、あごに手を当てて、一度、ソマリの胸元をちらりと見てから、再びにこりと笑みを浮かべた。



「えぇ、いいですよ。シローチアの領主と取引した話などいかがですか。いや、あそこの料理の話の方がいいかな。とても、まずいわに料理があったんですよ」


「うふふ、おもしろそうですね。でも、ここでは」



 俺は、少し耳を抑えて、周りを見まわした。



「そうですね。ここは少しにぎやか過ぎますね。もう少し静かなところに行きましょうか。奥のテラスは人が少なそうです」


 

 よし。うまくいったみたいだ。


 今の世界では、英雄に目がいきがちだ。ゆえに、こうやって英雄ではなく、一般人だけどおまえがすごいと言ってくれる女は重宝される。


 さらに、ソマリは普通に美人だ。めかしこんで、迫られて、断る男はまずいない。


 マイスキーにエスコートされて、俺はパーティ会場を横切った。ソマリは、マイスキーに腕を組まれている。なんともひょうしがたい顔を浮かべるソマリであったが、俺が首を横に振ると、おとなしくマイスキーの腕につかまった。


 意外と、うまくいきそうだ。


 俺が、そう思って、少しワインの香りに当てられたときだった。



「おぉ、これはこれは、英雄様」



 反射的に、俺はびくりと身体を震わせた。


 英雄という言葉が、俺のことを指していないのはすぐにわかった。そして、それが、今回の作戦の最大の懸念事項であることも。



「あら、マイスキーさん。こんにちは」



 立っていたのは、ドレスを着込んだ女子。短髪に垂れた白い耳とえがつの、ひょろりと伸びた尻尾しっぽ、どう見ても獣人の彼女は、俺のクラスメイトで、獣国の英雄。


 牛野智子うしの ともこ


 そりゃいるわな。


 運がよければ、クラスメイトが誰も参加していないこともあるかと思っていたが、さすがにそうはいかないらしい。



「そちらの方々は?」


「えぇ、スピッツの連れのようです。女性でありながら、外交に興味があるようでして、少しお話ししてあげようかと」


「外交、ですか」



 牛野は明らかに軽蔑けいべつした視線をこちらに向けた。男に取り入るために、興味のない話にむりやり食いつき、こびを売る女。彼女の目には、そう映ったのかもしれない。

 

 男であることを除けば、あながち間違っていない。


 俺は、めいっぱい顔をそむけて、マイスキーの後ろに身を隠した。


 牛野は、ふーんとかるく鼻を鳴らして、別の者と話し始めた。一応、バレなかったようである。


 さて、最後までバレずに乗り切れるか。

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