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英雄達の偽曲~親友に裏切られて全て失ったけど【コスプレ】スキルで世界征服に邁進します~  作者: 最終章
交錯する二人~獣国首都にて~(異世界転移10か月後)
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第20話:パーティ

「クロ隊長、このヒールってやつ、歩きにくいんだけど」


かかとに体重を乗せるな。つま先立ちだと思って歩け。それと、隊長はやめろ」


「はいはい、クロエちゃん」



 ソマリは、にまにまと笑いながら、俺の肩に手をおいていた。


 協力者の手引きもあり、侵入はわりとうまくいった。そもそも商人スピッツは多くの女性を連れてきており、しかも統率がとれておらず、まぎれ込むのは容易よういだった。


 セキュリティの意識は低く、スピッツの後ろを歩いていれば、ノーチェック。要人の暗殺とか起こらないのだろうかとむしろ心配になったくらいだ。


 

「あたし、バランス感覚はいいんだけどな」


「コツがあるんだよ。背筋を伸ばして、遠くを見ろ。あとガニ股はやめろ。ドレス着ていてもわかるぞ」


「うげ。何で、そんなことくわしいんだよ。ちょっと、引くんだけど」


「あれだ。演劇みたいなことをやっていたんだよ」


「へぇ、どーりでドレスが似合うわけだ。クロエちゃん」



 女キャラのコスプレもしたことがある。魔法少女キャラをルミとアキトと俺の三人でやったのだ。


 当時は爆笑していたが、今思い返すと、かなり痛かったのであまり思い出したくない。


 ちなみに、先ほどからソマリがしつこく言ってくるクロエとは、俺のハンドルネームだ。さすがにクロではおかしいとソマリがつけたものだった。


 

「何でパーティに参加するのに、わざわざこんな曲芸しなくちゃいけないんだ?」


「おしゃれだよ。シルエットがきれいに見えるんだ」


「ふーん、おしゃれってめんどくさいな」


「当たり前だ。美しいは作れる。ただし、地道な努力と、え? そこまでするの? て思うくらいのやせ我慢が必要なんだ。おしゃれをなめるな、ソマリ」


「お、おう」



 若干じゃっかん気圧けおされたような顔をしたソマリをよそに、俺はパーティ会場に足を運んだ。


 城の上階。


 石造りの建造物で、やけに年季が経っており、ずいぶんと歴史を感じさせる。だというのに、文明からは想像できないほどの高さである。魔法といわれればそれまでだが、やはり驚きを禁じ得ない。


 獣国連合にそれほど歴史があるとは思えないから、原住民のものだろうか。


 夜が近づいており、山の向こうに太陽が降りかかっている。呼応するように、部屋の中のシャンデリアが輝きだし、赤い絨毯じゅうたん鮮明せんめいになっていった。



「すげぇな」



 ソマリが感嘆かんたんの声をあげた。


 この豪勢ごうせいなパーティを初めて見たのならば、そう思うのも無理はない。俺も、王国でのパーティで似たような感想を抱いた。


 だが、俺は別のところに驚いていた。


 本当に獣人ばかりだな。


 外を歩いているときは、6対4くらいの比率で、人間もそこそこいた。貿易をするために、人間が必要だからだ。


 だが、この会場にいるのは獣人ばかり。人間としているのは、商人のスピッツと他数名くらいで、俺はいささか居心地のわるさを感じた。


 

「なぁ、おい、クロエちゃん。あっちのテーブルにすんごい料理が出てるぞ。食べに行こうぜ」


「待て。目的を忘れるな」


「えー。ちょっとくらいいいじゃんかよ」


「だめだ。おまえ、上品に飯を食えないだろ。お里が知れる」


「な! そんなことねぇよ! あたしは皿のソースまでさらって食べて、きれいに食べて偉いなって褒められるんだぞ!」


「うん。わかったから。パーティのマナーは、今度教えてやるから、今日はおとなしくしておけ」


「えー」



 文句たらたらのソマリを引きって、俺は、目的の人物を探した。


 あまりきょろきょろしていると不審に思われるかもしれないので、ウェイターからグラスを受け取って、ところどころでソマリと話すふりを見せる。



「クロエちゃんだけ飲み物とってずるい」


「飲み物はいいよ。そこの兄ちゃんからもらえ」


「え! いいの? わーい!」


「果実酒だから、俺は飲まないけどな」


「へへ、相変わらずクロエちゃんは情けねぇな」



 王国だと酒を飲むのに年齢制限はない。ただ、子供は飲まない方がいいというざっくりとした知識はあった。


 俺は、個人的に酒を自粛じしゅくしていた。そもそも、作戦中に酒を飲みたいなどと思わないが。



「あんまり飲み過ぎるなよ。酔っ払い女に、男は寄ってこないぞ」


「わかっているって。おー! いい酒だな!」


「おい」



 言ったそばから、ソマリはグラスを干していた。この女、酒には強いが酔い始めるとからんできて鬱陶うっとうしい。


 飲み過ぎないように注意しておこう。



「で、どいつなんだよ、マイスキーって奴は?」


「今、探しているんだが、まだ来ていないのかもな」


「ふーん。じゃ、来るまでにもう一杯」


「やめろ。泥酔でいすいした女に寄ってくるのは、お持ち帰りしようとするゲス男だけだぞ」


「ははは、マイスキーもそうかもよ」



 ありえる話だが、その場合の覚悟がソマリにあるとは思えない。むしろ、マイスキーのアレを蹴り上げて、状況を複雑にしかねない。


 俺が頭を抱えていると、後ろから声がかかった。



「僕が、どうかしたかな?」



 ハッと振り返ると、そこに金髪の紳士が立っていた。赤い生地に金の装飾の施された礼服を着こなした彼は、青い瞳に丸い眼鏡で、どことなく柔和にゅうわな印象をかもしていた。


 そして、獣人特有の犬耳と牙。尻尾がくるりと腰に巻かれており、あれがマナーとのことだ。


 獣国連合政府幹部、キーロビナ・マイスキー。


 作戦目標の方から、こちらにやってきてくれるとは、どうやらちゃんと運は良いらしい。

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