第2話:チートスキルガチャ
チートスキルガチャ?
女神が告げると共に、彼女の目の前にガチャガチャが現れた。いや、ガチャガチャというのが製品名なのかは知らないが、いわゆる、つまみを回して、中のトイカプセルを取り出す、あれだ。
モノはわかるが、つまりどういうこと? と俺が頭の上にハテナを浮かべていると、女神が説明を始めた。
「ふふふ、私も勉強したんですよ。皆さんを異世界転移させるにあたって、いったい何をしなくちゃいけないかをね。そうしたら、異世界モノの冒険活劇には、チートスキルが必須らしいじゃないですかぁ」
その勉強の方向性は絶対間違っていると思う。
「チートスキルで無双するってのが流行りなんですよね。でも、ただ真似するだけでは芸がないと思いまして、私なりにオリジナリティを出してみたわけです。それが、このチートスキルガチャです!」
あれだな。料理とかでプロのレシピをそのまま再現すれば、素人でもそこそこうまく作れるのに、変に手を加えて、くそまずくなるっていうあのパターンだな。
「この中にはS~D級までランク付けされたチートスキルが入っています。S級を引けば異世界で英雄と呼ばれること間違いなしでしょ! D級を引いたら、ちょっとすごいくらいですかね」
なるほど。ここで得られるチートスキル次第で、異世界での生活水準が決まるというわけか。
ソシャゲならば、リセマラするところだが、この展開では、一度きり。人生を決めるガチャというわけか。
「さぁ、ガチャを回しちゃってください。1人1回ですよ。誰からでもいいですけど、チートスキルは1つずつしか入っていませんから、急ぐことをおススメしますよ」
それは確率論からいえば、明らかに間違っているが、追い詰められているクラスメイトを煽るには十分であった。
クラスメイトは、ガチャガチャに殺到して、我先にとガチャを回した。
その様をにやにやと眺めている女神は、やはり悪魔か何かの類と思った方がよさそうだ。
ガチャを引いた反応は、人それぞれである。にやける者もいれば、頭を抱える者、無表情の者もいる。
「どうだった?」
ガチャを引いて、戻ってきた瑠美に俺は尋ねた。彼女は、微妙そうな顔をしてから、首を傾げた。どうやら、あまり理解できていないらしい。
「クロも、早く引かないと」
「あぁ」
俺は、あらかたクラスメイトがいなくなってから、ガチャガチャの元へ向かった。近くで見ると、本当にただのガチャガチャだ。こんなもので自分の人生が決まってしまうのかと思うと、悲しくなる。
しかし、引かないわけにはいかない。
俺は、意を決して、つまみを回した。名の通り、ガチャッと機械音が鳴って、ころころとトイカプセルが落ちてくる。
ごくり。
喉に溜まった唾を呑み込んでから、俺は、カプセルを開く。中には、騎士のフィギュアと一枚の紙切れが入っていた。
俺は、紙切れを手に取り、そして、開く。
どくん。
心臓が鳴るのを感じる。それは期待だ。実のところ紙きれを開く前から、気づいていた。いわゆる勘だが、フィギュアの出来というか、つくりがやけに豪華だったのだ。
つまり、これは、
『S級チートスキル:聖刻騎士』
当たりだ。
俺は、思わず、ぐっと拳を握った。
まだ能力内容について詳しく読めていないが、先ほどの説明からすれば、これは当たりのチートスキル。考え得る中で、最上の結果。
俺の異世界生活、無双確定!
不謹慎かもしれないが、俺は、胸の内で喜びの気持ちを叫び散らしていた。異世界転移ということで、不安も多かったが、ちゃんとチートできるのであれば、話は別だ。
俺が、喜びが顔に出るのをなんとか抑え込んでいると、女神が再び話し始めた。
「皆さん、ガチャをちゃんと引けたみたいですね。うんうん、ランクが低かった人もいるみたいだけど、とりあえずドンマイ。スキルは育てるものだから、諦めないでね」
俺には関係ないと思いながらも、一応、女神の発言に耳を傾ける。
「では、これから異世界転移に関して、簡単なルールを説明しますよ」
リセマラ・・・リセットマラソンの略。【レア】という光を求めて、闇の中をひた走る非常に業の深いマラソン。達成感よりも徒労感を覚えることが多いため、一般人が手を出すことはお勧めしない。




