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英雄達の偽曲~親友に裏切られて全て失ったけど【コスプレ】スキルで世界征服に邁進します~  作者: 最終章
交錯する二人~獣国首都にて~(異世界転移10か月後)
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第16話:ランチ

「意外と、人間が多いのな」



 獣国に、荷物と一緒に密入国してから、俺達は探索という名目で、首都をぶらぶらと歩いていた。


 というのは先ほどまでの話で、ソマリが腹が減ったとごねにごねて、現在、オープンテラスで遅めのランチをとっていた。


 

「そうだな。この国は、帝国に追いやられてやってきた獣人と原住民によって建国されたらしい。人間と獣人の確執かくしつもあったらしいが、宗教が同じだし、帝国の脅威きょういを理由にまとまったってところか。まぁ、俺も文献を読みかじっただけだが」


「クロ隊長って、そういうどうでもいいこと調べるの好きだよな」


「歴史が好きなだけだよ。歴史っていうか、背景かな。上っつらだけえんじても、どこか薄っぺらくなっちゃうんだよ。やっぱり、どうしてそうなったのか、どういう人生を送ってきたのかを知らないと」


「何の話だ?」



 コスプレの話。


 設定資料集とか読むの好きだったんだよな。



「つまり、今回は潜入任務せんにゅうにんむなんだから、その国の歴史を知らないと、国の雰囲気にけ込めないって話だよ」


「ふーん、そんなもんか。あ! その肉餃子、あたしのなのに!」


「どこに名前書いてあるんだよ」


「むぅ! じゃ、この魚っぽいやつはあたしのだから!」


「その魚、すげぇ臭いぞ」


「え? ふんふん、うわっ! くっさ! 何これ、腐っているじゃん!」


「そういう食い物なんだ。俺のいた世界にも似たような料理が、おい、こっちに寄せるな!」


「これ、クロ隊長って、名前書いてあったから」


「どこにだよ! やめろ、ぐちゃぐちゃにするな。名前を書くな!」



 フォークで魚料理を串刺くしざしにするソマリの頭を叩いてやめさせて、俺はため息をついた。


 

「まぁ、気負きおってがちがちになられるよりはいいが、もう少し緊張感をもってほしいな」


「無茶言うなよ。あたしの性格知ってんだろ」


「あぁ、ガサツで短気。隠密作戦おんみつさくせんには、まったく向かない」


「あはは、よくわかってんじゃん。だったら、うまくいくよ。いつも通りだろ。クロ隊長が考えて、あたしが実行する。それでしまいだ」


「そうであってほしいね」



 まぁ、うまくいくような作戦を考えて、うまくいくようにお膳立ぜんだてはしてあるんだけど。



「で、あたし達は、獣国のおえらいさんのケツに落書きしてくればいいんだっけ?」


「何だ、そのたちのわるい嫌がらせは」


 

 悪戯いたずらを覚えたての小学生か。



「逆だ。逆。いや、何が逆なのかわからんが、貢物みつぎものを渡しに行くんだ」


「あぁ、そうだった。獣国と同盟を結ぶ日が来るなんてな。よく、王様が許したよ」


「いや、勘違いしているようだが、獣国と同盟を組むわけじゃない。あくまで、王国が同盟を組むのは帝国だ」


「ん?」



 ぽかんとした顔をして、ソーセージを頬張ほおばるソマリに、俺は簡単に説明する。



「ソマリの想像通り、王国が獣国と同盟を組むのは不可能だ。王国の獣国への差別意識は根深過ねぶかすぎる。特に、王がひどい。はっきり言って、話にならない」


「じゃ、今、私たちは何をしているんだよ」


「俺がソマリに求婚きゅうこんするとするだろ」


「ふぇ!?」



 ソマリが腑抜ふぬけた声を出した。やはり、からかいがいのある奴だ。



「いきなり何を言い出すんだよ!?」


「だが、ソマリは答えをしぶる。俺と結婚しても将来が不安だとか、他に気になる男がいるとか」


「いや、別に、そんな奴はいねぇけど、その、急には、ちょっと」


「だが、その一方で、俺が別の女にプレゼントを送っていた」


「は?」


「ソマリがそっけない態度たいどをとり続けたせいで、他の女になびいたのかもしれない」


「ちょっとやそっと断られたくらいであきらめるんじゃねぇよ! 男ならもっとだな!」


「そう。そっけない態度をとってはいたものの、他の女にとられると思うと急にしくなるものだ。そうすれば、次の求婚は成功しやすくなる」



 俺のたとえ話に、ソマリは混乱していた。わかりやすくするために、例えたのに、あまりよくなかったようだ。



「同盟も同じだよ。帝国との同盟がうまくいっていない。そこで、王国が獣国に貢物を送ったらどうなる? 帝国は、王国と獣国が同盟を組むと思うだろ。そうすれば、帝国はあせって、王国との同盟に積極的になるって話だよ」


「え? 結婚の話は?」


「それはたとえ話だ。おまえ、俺の話を聞いていたのか?」


「別の女は?」


「今は女のことなんて考えている暇はないよ」



 理不尽な戦争ゲームに巻き込まれて、女とのいちゃこらを考えている暇があるなら教えてほしい。


 

「つまり、帝国をきつけるための工作活動だよ。やることは単純だが、危険なのは間違いない。くれぐれも軽率けいそつな行動はつつしめよ」



 俺は、いささか説教染みたもの言いで言ってから、発酵はっこうした魚料理を口にした。においはきついが、味が深く、なかなかに美味であった。一方で、ソマリはフォークを握り込んだまま、なぜかほうけていた。



「結婚かぁ」

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