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英雄達の偽曲~親友に裏切られて全て失ったけど【コスプレ】スキルで世界征服に邁進します~  作者: 最終章
交錯する二人~獣国首都にて~(異世界転移10か月後)
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第15話:荷馬車

 馬車の荷台は、激しくれる。


 それは、馬車のつくりの問題もあるのだが、そもそも道が舗装ほそうされていないため、小さな石ころで、すぐに跳ねるのだ。


 初めは俺もえられなかったが、慣れとはすごいもので、今では、かるく眠ることもできる。



「獣国は、王国の北東に位置していて、直接、国境こっきょうせっしていない。ただ、帝国の隣国であり、帝国の敵だ。だから、俺達との同盟も十分ありうる」



 今日は、天気がよかった。


 こうやって、日蔭ひかげにいることがもったいないくらいに、心地のいい日差しが降りていて、草原がゆるやかな風に揺れている。



「ちょうど、魔国と帝国の関係に近いな。実際に国と国の同盟としては、隣国よりも少し離れたところの国の間で行われることが多い。やはり、地理的に近い国では、裏切りのリスクを消しきれないらしい」



 俺が、ぽつぽつと、今回の任務の説明をしていると、向かいに座るソマリは、つまらなそうに大きな欠伸あくびをした。



「そんなたいそうな話は、あたしにはわかんねぇよ。あたしが、今知りたいのは、どうして()()()()クロ隊長と()()()()()で、獣国にお出かけしなきゃなんねぇのかってことだよ」


「その説明をしていたんだが」


「もっとわかりやすく言ってくれよ」



 そこで、ソマリは何かに気づいたように、ハッと身体を手でおおった。



「まさか、あたしの身体からだ目当て?」


「……ふっ」


「あ! 笑うことないだろ! 自分で言うのもなんだけど、けっこういい身体してんだぞ!」


「はいはい」


「流すな!」



 ぬぅ、とこぶしにぎるソマリを、どうどうといさめて、それから、俺は話を続けた。



「えっと、どこまで話したっけ?」


「クロ隊長が、あたしをエロい目で見てごめんなさいって話だろ」


「ソマリを連れてきた理由だったな」


「……、ふん!」


「痛っ! わるかったから、物を投げるな」


「……で、何でなんだよ」


「そんなの決まっているだろ。ソマリ以外、全員断ったからだ」


「えー」



 獣国。


 その名の通り、獣人が多く住まう国だ。二足歩行だが、耳やつの尻尾しっぽがあり、獣然けものぜんとしている。ちゃんと言葉も通じるが、獣のように気性きしょうが荒いといわれていた。


 獣ということで、その身体能力は高い。ともすれば、人間など簡単に制圧してしまいそうで、昔、そういう時代もあったらしい。


 しかし、現代の覇者はしゃは人間である。


 それは、ひとえに魔法適正の問題だ。


 人間は魔法適正が高く、獣人は低かった。魔法を使いこなす人間に、獣人は歯が立たず、征服せいふくされ、弾圧だんあつされ、しいたげられた。


 彼らが、人間から逃げて追いやられた先にできた国、それが獣国とのことである。


 さらに宗教的な対立もあり、人間だけでなく王国に住む獣人まで、獣国の住人に対して、すさまじい差別意識を持っていた。


 獣人の国に行くなんて、まっぴらごめんだ。


 今回の作戦での同行者を探していたところ、すべての者に、そう言って断られた。



割高わりだかな仕事があるけどやるか、と聞いて、即答したソマリ以外は、全滅だ」


「そうだ! あたし、そのとき、作戦の内容聞いてない!」


「聞く前に、どっか行っちまったんだろ。自業自得だ」


「ぬぉぉ! ぬかった! 金に目がくらんで、乙女おとめ貞操ていそうの危機だよ!」


「うっせぇ、誰が乙女だ。まぁ、そもそも少数で行くつもりだったから、ソマリだけなのはかまわないし、適任といえば適任なんだよ」


 

 だって、と俺は告げる。



「おまえ、獣人だもん」



 さわいでいたソマリは、一瞬、殺気を発して、それから、また、つまらなそうに目をらした。



「何だかんだ理屈をつけてたけど、あたしは連れていくつもりだったわけか」


「いや、金を積めばついてくると思っていた」


「金かよ! まぁ、そうだけど!」



 はぁ、とソマリはため息をつく。



「クロ隊長には感謝しているんだよ。()()()()()()()()()()を使ってくれているんだから。他のところじゃ、働けたもんじゃねぇからな」


「知らなかっただけだよ。生れたときから王国にいたら、きっと同じように差別していた。だから、特別できた人間ってわけじゃない」


「そうだな。どっちかというとダメな方だよな。なよっとしているし。あたしはもっとがしっとしている方が好みだ」


「何の話だ」



 差別は、歴史と文化に根ざすもの。


 それを知らない俺には、とうてい理解できるものではない。ただ、その根深さは元の世界でも同じで、深くて陰湿いんしつで底なし沼だと知っている。


 だから、わだかまりはなるべく早く解消しておこうと、俺は踏み込んで聞いた。



「不服か? 俺が、獣人だということを理由に、おまえを作戦に加えたことが」


「んー、別に。そこは、なんていうか、もう折り合いがついてるっていうか、実際にそうだし。ただ、クロ隊長は、あたしなんかより賢いんだから、もっとうまく誘ってほしかったなとは思うよ」


「人には、ずけずけ言うくせに、贅沢ぜいたくな奴だ」


「あたしはいいんだよ。バカだから」



 あはは、と笑ってから、ちょっと目を逸らして、口をもぞもぞとさせた。



「こういうときはさ、その、いちばん頼りになるとか、そういうことを言ってくれた方が、うれしいっていうか、期待してたっていうか」


 

 言ってから、ソマリはほおをかいて、目をすっかり泳がせてから、顔を真っ赤にした。



「いや、今のなし! なしだから! 何言ってんだ、あたし。あー、びっくりした!」



 慌てて、手を振って、ソマリは窓の外に顔を向けてしまった。


 いつもはガサツな奴であるが、そのちぢこまった背中は、年相応としそうおうの少女のようで、こんなしおらしい態度もできるのかと、なんとなくおかしくなった。


 だから、別にいじわるするわけじゃないけれど、俺はソマリの背中に声をかけた。



「じゃ、頼りにするぞ、ソマリ」



 すると、ソマリは、こくりと小さく頷いてから、バカ、と呟いた。

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