第13話:回想~ぬいぐるみ~
「ねぇ、何でクロはそんなにうまく服を作れるの?」
「そんなにはうまくねぇよ。そもそもキャラが個性的だから、そこをちゃんと再現してやれば、うまく見えるんだ。技術自体は大したことない」
「ふーん。よくわからないけど、つまり、うまいってことだよね」
そうかい。
俺は、針で糸を通して、歯でぷちっと糸を切り取った。まだまだ、線は歪むし、布は寄るし、まったく納得のいく服は作れない。
けれども、こうやって、褒めてもらえるとまんざらでもないと、俺は頬を緩める。
「まぁ、瑠美よりはうまいよ」
「私はいいの。着るの専門だから」
すると、いつものように明人が混ぜっ返す。
「そうだよな、瑠美は着るの専門、食べるの専門、寝るの専門で何もしないのが仕事なんだもんな」
「何よ、明人だって何もしてないじゃん」
「俺はデザイン専門だから。仕事は終わってんの」
「むぅ。顔に似合わず器用な奴め」
「ははは、顔に似合わずは余計だ」
明人には、絵の才能があった。特に3次元的な感覚が鋭く、デッサンからパーツの図面まで切り出すのをかるーくやってしまう。
まぁ、コスプレであって、予めキャラがあるのだけれども、それでもキャラを理解して、現実の服に落とし込む作業には、デッサンの才能がいる。
俺もやろうと思えばできるが、明人ほどうまくはできない。その点は、やはり嫉妬してしまう。
「そうだ、顔で思い出した。余った布で、これ作ったんだ」
俺は、鞄の中から掌大のぬいぐるみを3つ取り出した。ファンシーな動物のぬいぐるみだ。兎と亀と狸。
「このチョイスは何なんだ?」
「なんとなく、生地の色で思い浮かんだんだよ」
「ふーん、で、どうして俺の顔で思い出すんだ?」
「聞かない方がいいぜ」
「おい」
明人の突っ込みを無視して、俺はぬいぐるみを差し出す。
「ほれ、好きなの取りな」
「じゃ、俺は兎」
「あ、ずるーい。私も兎がよかったのに。うーん。じゃ、狸かな」
2人がぬいぐるみをもらっていって、俺の手元に残った亀をひっこめた。
「亀は売れ残りか」
「あはは、クロは亀ってかんじ。なんかのっそりしているし」
「ほっとけ」
瑠美が笑うのを手で払って、亀のぬいぐるみを鞄の中にしまった。
「ありがとう、クロ。大事にするね」
「俺も俺も。家宝にするぜい!」
「へいへい。好きにしてくれ」
あの亀のぬいぐるみはどこにいったのだろうか。確か机の引き出しのどこかに仕舞ったはずだ。そういえば、どうして、鞄につけないのかと瑠美に怒られたことがあったっけ。
兎と狸は、今どこで何をしているのかな。




