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英雄達の偽曲~親友に裏切られて全て失ったけど【コスプレ】スキルで世界征服に邁進します~  作者: 最終章
魔国防衛戦~エドガー湿原にて~(異世界転移9か月後)
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第12話:あの頃

「おかえりなさい、クロ! 怪我けがはない?」


「ただいま、ルミ。大した怪我はないよ」



 俺達、異世界からの来訪者は、『英雄』と呼ばれ、王国から好待遇こうたいぐうを受けていた。驚くほどすぐに受け入れられて不思議だったのだけど、どうやら、女神が神託しんたくか何かで手回ししてあったらしい。


 この巨大な屋敷も好待遇の一環で、英雄一同の住まいとして、与えられていた。


 出迎えたルミは、ひどく心配そうな顔を俺に見せた。彼女は、こちらの世界に来て、かなり精神が不安定になっていた。


 そりゃそうだろ。


 ただの高校生が、異世界に来て、チートスキルを活用して戦争するというのだから、まともな精神ではたない。


 俺も、この生活に慣れていることに驚いてる。もしかすると、チートスキルを得た際に、いくらか精神耐性の補助があったのかもしれない。


 それでも耐えられないものは耐えられない。ルミは、できるだけ戦場に出向かないように努めていたし、俺も気遣っていた。


 ただ、彼女のチートスキルは、とても有用で、他の者は戦場に引っ張り出したがっているのだが。


 

「ルミはどうだった? 何かあったか?」


「うん。危ないことはなかったよ。カスミちゃんとお買い物行ったり、料理作ったりしてた」


「そうか。それは何よりだな」


「お裁縫さいほうも挑戦したんだけどね、あんまりうまくできなかった」


「不器用は異世界に来ても治らないんだな」


「あ、ひどーい。自分は得意だからって」



 あはは、と俺とルミは笑った。


 だいぶ落ち着いてきたみたいで、こうやって笑っていると、昔みたいだなとちょとだけ懐かしくなった。


 でも、あの頃とは違うんだよな。



「おい、出入口でいちゃついてんじゃねぇよ」



 背後から聞こえてきたのは、よく知った声。この笑いの中にいつもあったはずなのに、今ではやけに遠くに聞こえる。



「アキト……、あの、お帰り」


「あぁ」



 アキトは、すたすたと屋敷の中に入っていき、俺の方を一瞥すると、ふんと鼻を鳴らした。


 

「大した成果もあげてないくせに、女にちやほやされて、いいご身分だな」


「別にちやほやされてない。こんなやりとり普通だろ」


「そうやって話せているのも俺のおかげだろ。俺のおかげで今生きているんだから」


「そういう作戦だったんだ。危なかったのは、おまえが遅かったからだろ」


「へ、人のせいかよ。情けねぇ」


「諭してやってんだよ。自分の責任をちゃんと理解しろってな」


「何だよ、喧嘩売ってんのか?」


「どう聞いたらそんな話になるんだ。そもそもそっちがつっかかってきたんだろ」


「はっ、喧嘩をふっかける勇気もねぇのかよ。そりゃ、できねぇわな。そんなゴミスキルじゃ」


「それはおまえが!」


「何だよ!」




「もうやめて!」



 叫んだのは、ルミだった。



「私の前で喧嘩しないで!」



 そう言って、ルミは泣き始めてしまった。その様子を見て、俺とアキトは、しまったと黙り込む。


 ルミの前では、おとなしくする。それが、俺とアキトの間で無言で交わされたルールだった。


 それともう一つ。


 これは、言葉にして交わされたルール。


 王国で、勝利を目指すこと。


 この世界に転移された、あの日の夜。俺は、すぐさま王国チームを抜けようとした。


 その理由は、想像にかたくないだろう。俺を裏切った男と同じチームにはいられない。他のチームに入れなくても、少なくとも王国チームにはいられないと。


 当たり前だ。


 しかし、俺は、今でも王国に所属している。その理由は、アキトにチームを抜けることを制されたから。



『おまえが抜けたらルミがどうなっても知らないぞ』 



 あの一言を聞いた瞬間に、俺は王国チームから抜けることをあきらめ、そして、アキトという男に一生心を許すことはないと決めた。


 ケッと吐き捨てて、アキトは屋敷の奥に消えていった。俺は、その背中を一瞥いちべつしてから、ルミを介抱かいほうした。



「また、前みたいに、みんなで仲良く、できない、のかな」



 きっと、いつか。


 そんな希望の言葉を口にしようとして、俺は口を閉ざした。今だけの気休めの言葉だったとしても、どうしても、俺には口にできなった。

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