第11話:帰還
「はぁ、結局、手柄は全部アキト様にもっていかれちゃったじゃないかよ」
王国への帰り道で、ソマリが愚痴を零していた。彼女は彼女で、ちゃんと活躍していたと思うが、できれば大将首を獲りたかったというところだろう。
相手がチート持ちのトーイチロでは、それは一生かかっても無理な話だが。
「いいじゃないですか。あんな化物と戦って、こうやって生きて帰ってこれたんですから」
「ボンベイは、志が低いんだよ! そんなんだから、うちの部隊はいつまで経っても隅っこにしか配置されないんだ」
「いやいや、英雄のクロ隊長がいなければ、獣人の俺達なんて、隅にもおかれませんでしたよ」
「英雄っていってもなぁ。アキト様くらい強ければ、もう少しいい配置につけるんだけど、クロ隊長じゃなぁ」
うん、この女は人が気にしていることを堂々と言うよね。陰で言われるよりはいいけどね。
俺の部隊は、実力はあるのだが、性格に難のある者が多い。というより、この世界の構造上、獣人に、そういうひねくれた性格の奴が多いのか。いや、でも、最初の頃は、もう少し気を遣ってくれていたような。
俺の教育がわるかったのか。
いきなり中間管理職だもんな。世の中年サラリーマンに敬礼。
まぁ、気楽に実力主義ってのが、いちばんなのではなかろうか、と俺は思考を後回しにした。
「まぁ、そう腐したものでもありませんよ」
話に入ってきたのはラブル分隊長であった。俺が抱えている部隊の4人の分隊長の一人である。
最年長であり、兵士にしては温和で、この部隊の精神的支柱であった。
「この部隊は、他の部隊に比べて兵士の生存率が高いんですよ。それはひとえにクロ隊長が、冷静に状況を判断している結果です」
うんうん、この人だけだよな。俺の事を褒めてくれるの。
「それでいて成果もきっちりと出しています。隊長としては申し分ありませんよ」
「ふん、それは私達が優秀だからよ。それに、成果を出しているって言っても、小さい成果ばっかりで、他の部隊みたいに、町を攻め落としたとか、そういう大きい成果はないじゃん」
ソマリは本当に痛いとかを突くよな。
それは、この部隊の性質も関係している。俺の部隊は、少人数での陽動やかく乱がメインの仕事であり、成果が出にくい。
その辺りを正当に評価してくれればいいのだが、そうもいかず、毎回、隊長会議で苦労させられる。
まぁ、この手の愚痴を、俺の前で言っている内は大丈夫と思っていいのか。
その辺りのコミュニケーションのために、俺は部隊をねぎらうことにした。
「よし、戻ったら、とりあえず飲むぞ。俺のおごりだ」
「「「おー!」」」
「ただし、ソマリの分隊は、ソマリに奢ってもらえ」
「「「はーい!」」」
「ちょっと! クロ隊長!?」
いやぁ! 安月給なのに! と叫び声をあげるソマリをかるく笑いつつ、俺は正面の門に目を向けた。
王国。
俺達が所属している国だ。長く続く城壁と、その中央にそびえたつ巨大な城。人間の人間による国家である。
そして、俺達のミッションは、この国で世界を征服すること。そのために、近隣諸国に戦争をしかけ、討伐している。
女神も言っていたとおり、そもそもが各国を交えての乱戦のような状態だったため、戦争をしかけること自体はさほど難しくなかった。
問題となったのは、想定通り、クラスメイトが割り振られた5つの国。
魔国、帝国、聖国、獣国、そして王国。
半年間で、些末な小国はいずれかの国に侵略され、この5か国で陣地取りゲームをして、境界線を引き直している。
「業が深いよな」
「ん? クロ隊長、何か言った?」
「いや、何でもない。さぁ、着いたぞ。よく生きて帰ったな、おまえら!」
「「「おー!」」」
とりあえず風呂に入りたいなぁ。
俺は、醜い戦争ゲームにいかに勝つかなど、考えなくてはならないことを頭の隅に追いやって、いささか現実逃避しながら、王国城壁の正門をくぐった。




