表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/87

第1話:異世界転移

 どうやら異世界転移するらしい。


 俺は、そんなウェブノベルのありふれた展開に直面しつつ、驚きと混乱で、この緊迫した場にそぐわないぼんやりとした感想を抱いていた。


 いや、ウェブノベルの導入なら、はいはい、そういうかんじね、で、どんなチートをかましてくれるわけ? みたいなのんびりテンションで読み飛ばせるよ。


 けれども、現実に、起こるとどうなの、これ?


 何が起こったかわからないし、これから何が起こるのかもわからない。頭の中は、どうしてこんなことに? 何で俺が? などなど疑問符でいっぱいだ。


 では、なぜ、異世界転移するとわかったか。


 それは、そう言われたからだ。



「はーい、みなさんには異世界転移していただきます。異論は認めません。まぁ、質問には答えられる範囲で応えますよぉ」



 白く何もない空間に、やけに豪華な椅子を置き、そこに座る女は、まるでイベントの告知のように楽しそうに述べた。


 女神と自称するその女は、ゆったりとしたドレスに身を包み、確かに女神然としていた。この異様な空間も相まって、そう信じてもいいくらいには、常軌じょうきいっしていた。



「いや、いきなりそんなこと言われても困ります」



 返答したのは、生徒会副会長の種倉摘姫たねくらなつきだ。相変わらず強気な女で、よくこの場で発言できるなと驚く。


 一方で、幼馴染の佐藤留美さとうるみもぼそりと似たことをつぶやいていた。怖いのだろう、彼女はずっと肩を震わせており、声も消え入りそうなほど小さい。


 

「あはは、それはお気の毒ですが、人生なんてそんなものだと思いますよ。昨日まで平和に暮らしていたのに、突然、交通事故で死んじゃったなんてよくある話じゃないですか。あれですよ、あれ。皆さんは、突然、異世界転移してしまったんです」



 ゼロ解答といっていい返答をする女神は、()()()と言った。


 そう、ここにいるのは俺だけではない。隣で震えている瑠美を含めて30人。沢照高校2年3組の生徒が、そっくりそのまま連れて来られていた。


 このことに関して、実のところ驚きはしない。なぜなら、俺達は、このメンバでバスに乗り込み、林間学校に向かう途中だったからだ。


 バスに乗っていた。クラスメイトは、お菓子を食べたり、トランプをしたりとわりとわいわいはしゃいでいたのを覚えている。まぁ、俺は、投稿サイトにあげられたイラストをながめていたわけだけど。


 ふと、酩酊感めいていかんを覚えて、気づくとここにいた。だから、クラスメイトが全員ここにいることにおかしさを感じない、が、だからといって、異世界転移まで、『はい、そうですか』と納得できるほど順応性は高くないんだよ。


 そう思うのは俺だけではないようで、クラスメイトが非難の声をあげた。だが、女神は、にこにこ笑うだけで応じようとしない。



「で、今から俺達は何をするんだ?」



 話を進めたのは、一人のクラスメイト、古射手伊月ふるいでいつきだった。彼は、一歩前に出ることで、クラスメイトを黙らせて、低い声で告げた。


 冷静な発言だが、一人、黙らない奴がいた。



「おい、今は、そんな場合じゃないだろ!」



 クラスメイトというか俺の友人の千代戸明人ちよだあきとだった。明人は、そうとうテンパっているようで、目を血走らせていた。



「何をするも何も、帰るに決まっているだろ! こんなの拉致らちだぞ! 認められるわけがねぇ! あいつをぶん殴ってでも帰すと言わせるしかないだろ!」



 そうだそうだとクラスメイトが同調する。ここは乗っておく方が世渡り的には正しいが、事態が事態なだけに、俺は明人の肩に手を置いた。



「落ち着け、明人」


「何だよ! クロも異世界転移なんてバカみたいな話を信じるのかよ!」


「信じるも何も、一回落ち着けって言ってんだよ。そして、ちょっと考えろ。どうして、俺達はここにいる?」


「どうしてって、それは、あの女神とかいう女がやったんだろ?」


「そうだ。つまり、あの自称女神には、このありえない事態を引き起こせる力があるんだ。ということは、神かどうかはおいておいて、あいつには、そんな魔法みたいな力があるってことだろ」


「それは……」


「だから、あの自称女神は、あそこにいるんだよ。俺達がたばになってもかなわないから、加害者のくせに、被害者の目の前で、笑って座っていられるんだ」


「じゃ、じゃあ、どうすればいいんだよ。あの女神の言いなりになるしかないってのか?」


「今のところはそれしかない。だから、古射手は聞いたんだ。今から何をするのかって。だって、おかしいだろ。さっさと異世界転移させればいいものを、こんなところに俺達を引き留めている。それは、ここで俺達に何かをやらせるつもりってことだろ」



 俺は、現状の説明をすることで、明人を落ち着かせた。同じように熱くなっていたクラスメイトもクールダウンしたようだ。


 そこまでして、俺は一息つく。そもそも、俺は、クラスの中で、こんなでしゃばるキャラではない。できるだけ、明人と二人で話しているふうよそおったが、もしかすると、面喰めんくらっている奴もいるかもしれない。


 やっとクラスメイトのざわめきが治まったところで、女神が口を開いた。



「いやぁ、説明ご苦労様です。お察しの通り、皆さんには、異世界転移する前にやってもらうことがあります。それはですねぇ」



 女神は、一拍いっぱくためつつ、指を一本立てて、にんまりと笑った。



「チートスキルガチャです!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ