プロローグ
俺の名前は中本悠希、モテモテの高校生だ。
どうしてモテモテか分かるかって?
いい質問だ。なぜならば俺は…国語算数理科社会、小学生の頃から98点以下取ったことないからだ!体育だって、1年の頃に2段でも飛べなかった事がある気がするが、それ以外は全て完璧…そして見た目だ!ツヤのあるサラサラ黒髪ヘアー&茶色がかった目の真面目な雰囲気からは想像出来ないユーモアセンス…そう、いわゆるギャップ萌えってやつだ!
「悠希?何してるのよ…早く準備しなさい」
母さんから声がかかる。時計を見ていると、もう7時47分…47分…?
「やばいじゃねーか!早く着替えねーと!」
◆◆◆
───バァン!ガラガラ!ドシャーン!
派手な音が鳴り響く。どうやら酔っ払いが運転しているようだ。
「…ん?」
車がこっちに向かってきていると気づいた時は、もう遅かった。
「は…はは……もう、終わりか…」
そう呟いたのを最後に、俺───中本悠希は死んだ。
◆◆◆
(んぁ?ここどこだ?しかも視界も低いし…病院か?助かったのか?)
「はい!ごー、たす、ななはー、じゅーさん!」
「みゆちゃん、よく頑張ったね」
みゆという女の子……は、とても美少女だ。というか、俺の隣にいる。
そしてそのみゆちゃんの相手をしているのは…家庭教師か?
黒髪黒目お団子メガネのアニメに出てくるようなキツい先生だ。
というか今思ったけど、5+7って13じゃないよな?
俺は12だと思うんだが…違うのか?
「でも、ここは12だよ。今度は正しく計算してみようね。2+2は?」
「んーっと…」
みゆちゃんは左手で2…ピースを作り、右手にももちろん…
なんだ?!なんだこれ勝手に体が…動く…?!
あれ…俺の体は?
下見ても、細い腕しかないんだが…みゆちゃんの。
ん?これ…
みゆちゃんの腕になってる…?!
◆◆◆
あれからしばらくしたが、俺の体が元に戻る様子はない。
異世界ラノベにある、転生って奴だろうか?
それならせめて、人間にして欲しかった。あるいは、動物。
俺が呼んだラノベには、腕に転生なんてなかったぞ…?
「じゃー、きょー、もーねる!おやすみ、おかあさんー」
「おやすみ。いい夢見てね」
今更なんだが、この親子優しすぎではないだろうか。
◆◆◆
「ん…」
あれから思った事がある。動けず喋れずの代わりに、みゆちゃんのことをずっと見ていられるということだ。
子供にも慣れていたから、こんな想いを子供に寄せることになるとは思わなかったがしかたない。
みゆちゃん、可愛すぎるのだ。
それに、いつか進化して話せるかもしれないし、動けるかもしれない。
腕生活…と言うのは変だが、早く人間に戻りたいものだ。




