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5. 剣と娘

 昼過ぎ、ケインは目をこすりながらいつものように、自身の相棒を手に取ろうとする。

 ものぐさで片付けをしないケインにとって、剣だけはいつでもすぐに手に取れる場所においていた。


 しかし、寝ぼけまなこでのばした手は空を切る。

 いぶかしげな顔をしたまま部屋のどこを探してもそれはなかった。

 

「おい、リズ! オレの剣しらないか!」

 

 娘の姿を探すがどこにもいなかった。

 嫌な予感がしながら、ケインは外に飛び出す。


 道中出会った人間に片っ端から声をかけていく。


「おい! リズを見なかったか!」


「いや、知らないけど」


 血相を変えたケインに気圧されながらも返事をするが、舌打ちをしたケインに突き飛ばされる。


「くっそ、どこいきやがった。いくらなんでもアレを借金のかたに売り飛ばすことはないだろうが」


 ケインは質屋や、大家の元にいくがリズは来ていないという返事を聞くだけだった。

 走り回ったケインは、喉の渇きを感じ水を求めて適当な場所へと入り込む。


「おい、マリー、水くれ」


「なんだい、あんた。ここは酒場だよ」


 受け取った水を一息に飲むケインの様子を、マリーはおかしなものを見たように眉をひそめる。


「ずいぶん急いでるみたいじゃないか、どうしたんだい?」


「リズのやつがオレの剣を持ってどっかにいきやがった。まったく、親のもんに手を出すなんて、後でとってめてやる」


「剣を、持っていったって、いったのかい?」


「ああ、そうだ。さっき起きたら家にもおなかったし、探し回ったけどどこにもいなかったんだ」


 ケインの言葉を聞いてから急に考え込むマリー。それを不思議そうに見るケイン。


「なんだよ、急に黙って……」


「バカ! すぐに竜の巣穴にいきな!」


「バカとはなんだ、バカとは」


「うるさいよ! あんたは頭使うより体を動かしな!」


 しりを叩かれて酒場から追い出されると、ケインは訳がわからないといった様子で首をかしげる。


「リズちゃんはね、一人で竜退治にいったんだよ」


「はぁ? 意味わかんねえよ」


「だから、あんたはだめなんだよ! いいからさっさといって連れ戻してきな! いっくらあの竜がおとなしいからっていっても、あんな小さい子じゃ無事かわからないよ」


 リズが死ぬかもしれないという言葉をきいて、途端にケインの顔つきがかわった。


「わかった、いってくる!」


「待ちな! 丸腰じゃなにもできないでしょう。これもっていきな」


 ケインの手に放られたのは、マリーが酒代を踏みたおそうとした傭兵からぶんどった剣であった。

 ケインは走りながら剣帯をはめて全速力で山を目指した。


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