魔王様は今日もブレない
久々にフェリシアがメインの回です
こたつを出す事で、こうなる事はうすうす分かってはいた、いたのだが……
「あ-、ソーイチローみかん取ってー」
俺の足元からにゅっと顔を出したフィール。こいつはここがわたしの家だ! と言わんばかりの勢いでこたつの中から出てきやしない。
「――zzz」
そして俺の正面では、リアが教科書とノートを広げたままこたつに突っ伏して爆眠している。宿題を始めて僅か三分の出来事だった。
「……」
そして俺の左側では、先ほどから無言でコントローラーを握るフェリシア。こたつの上にはスマホスタンドに立てかけられたスマホ。ちょくちょく操作しているので、テレビとスマホの両方でゲームをしている事が分かる。
と、まあこんな感じで、ただでさえ駄目人間だらけだというのに、見事にだらけきった空間が完成してしまったという訳だ。
特にフェリシア。昨日こちらに来てからというもの、断固としてこの位置から動いていない。そして多分寝てもいない。
どうやらア○ゾンで頼んでいた荷物が届いたようで、フェリシアの隣にはダンボールが置かれている。もちろん中身は全部ゲームだ。
今プレイしているのは、オープンワールドの先駆けとなった伝説の作品、そのリメイクだ。
「……」
昨日から夢中でプレイしているようだが、まだプレイしているあたりかなりボリュームがある作品なのだろう。俺はリメイク前の作品もやった事無いんだよな。
スマホの方を覗き込んでみる。ちなみにこのスマホはちょっと前にせがまれたので買ったものだ。フェリシア的にはただのゲーム機の一つのようで、通信会社との契約はしていないので通話機能は使えない。
こっちは……ああ、シャ○ウバースか。結構人気のあるカードゲームだな。俺も一応プレイしている。
それにしても、先ほどから延々と無言の空間が広がっている。なんかむずむずするな。いや別に誰かと会話したいわけじゃないんだけど、人がこれだけいるのに無言ってのもな。
「なあフェリシア」
「……」
ああ、駄目だこりゃ。完全にトリップしてしまっている。この状態のフェリシアは何をしても反応しない。
ちなみに、下手にゲームのプレイを妨害すると何故か迎撃魔法が飛んでくる。どうも無意識の内に出ているらしいが、迷惑な話だ。
まあいいか、この間に仕事でもしていようか。
「ああ、素晴らしいわ……」
そんなフェリシアが現実に戻ってきたのは、日も落ちきった頃の事。どうやら一段落ついたようだな。
一旦コントローラーを手放すと、スマホを操作し始める。これは多分トゥイッターだな。ゲームをプレイした後はトゥイッターでフォロワーに報告する、これがフェリシアのルーティーンだ。
ちなみにフェリシアが何かしら投稿するたびに、俺のトゥイッターは荒れる。俺は何もしていないのに、だ。気がつけば俺のフォロワーも三万人を超えた。
最近では俺の仕事用のメールアドレスが流出したらしく、メールの方も荒れに荒れた。おかげでアドレス変更を余儀なくなれた。まあ別にいいけども。
「なあフェリシア、テレビとスマホで同時にゲームしてるけど、それ集中できてるのか?」
「……? 何を言ってるのソーイチロー。人間には脳が二つあるでしょ?」
まあ確かに、右脳と左脳があるな。
「右脳はスマホを操作するために、左脳はコントローラーを握る為にあるのよ」
「それは絶対違うと思う」
ゲーマーというのは行き着くとこうなるのか。
その間にも、なにやらまたゲームを始めたのかスマホを横持ちに変えるフェリシア。
「なあ、流石に飽きたりしないか?」
「ソーイチロー。時間は有限よ。こうしている間にも、世界には新しいゲームが出続けているの。時空魔法の使えない私には、こうして限りある時間を有意義に使うしかないの」
「何がお前をそこまで突き動かしてるんだ」
もはや人生がゲームの為にあるかのようなセリフだな。
「というか時空魔法なんてものがあるのか」
「ええ、人界神とかは使えたはずよ。フィールの瞬間移動とかもそれにあたるわね。まあフィールは時間の操作は出来ないけど。私も教えてもらおうとしたけど結局使えなかったわ」
チャレンジはしたのか。ゲームをするために時空魔法って……なんか凄い無駄使いな気がするな。
「そういえばソーイチロー。スマホをもう二台手に入れたいんだけど。あ、お金は私が出すわ」
「なんだ? もしかして三台で同時にプレイするつもりか?」
「流石にそんな事しないわよ。あのね、魔界神と天界神が欲しがってるのよ」
魔界神、天界神っていうと、フェリシアとフィールの上司にあたる存在か。そういえば人界神のアルトには結構会うけど、その二人には会った事ないな。
「別にいいが……なんでスマホなんて欲しがるんだ?」
「この間ね、シャ○バの話をしたらやってみたいっていうのよ」
なんじゃそりゃ。
「あの二人はここ数百年はずっと二人で将棋を指しているからね。そろそろ他の遊びがしたくなってきたんじゃない?」
「数百年……って、凄いな。よく飽きないな」
「まあ他にやる事もないもの。人界神はああして色んなところを出歩いているけど、魔界神と天界神は基本的には外に出ないから」
「それっている意味あるのか?」
「まあないわね」
ないのか。
「神ってそういうものよ」
「そういうものか。まあそれなら適当に見繕っておくわ」
「助かるわ」
なんだろう。神様ってのは皆俗っぽい感じなのがデフォなんだろうか。今の所神っぽい神と会った事ないんだよな。まあ神っぽさって何だって話ではあるのだが。
「っと、また事故ってるわね。しかも後攻だし、相手めちゃくちゃ煽ってくるし。もう切断してやろうかしら」
「そういう事やってると炎上するぞ」
「言ってみただけよ。私はネットマナーは守るタイプよ。マナーも守れないようなやつはプレイもガバガバなのが多いしね」
そういうもんかねえ。
そんな事を言いながら、今度は3DSを取り出して、ポ○モンをプレイし始めるフェリシア。忙しいやつだな。
「そういや、右脳はスマホ、左脳はコントローラーなら携帯機はどこでプレイするんだ?」
「第三の脳よ」
人体にそんなものはねえよ。
フェリシアメイン回でした。
ちなみに六畳間のほかの面々のゲーム事情
フィール……ギャルゲとソシャゲを嗜む程度
リア……アクション、FPSが強い。スマブラは六畳間最強
ソーイチロー……アクション系はド下手。カードゲームなどの戦略ゲーは強い
アズ……見る専