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六畳間とこたつとホラーゲーム

久々の日常回です。冬が来ました、そろそろこたつの季節ですかね。

 異世界に行ったり、編集に激怒される事を繰り返し、気がつけば季節は冬が迫ってきていた。


「うわっ寒っむ!」


 明け方過ぎに目を覚ましたフィールが、舌打ち交じりに悪態をつく。築年数50年に迫ろうかというこのおんぼろアパートでは、もう暖房器具無しにはおちおち眠る事すら許されない季節になってきたようだ。


「というかアズー冷たいよー」


 布団の中に潜り込んでいたアズを引っ張り出して、こちらへと放り投げてくる。そんな扱いをしてるからアズにぞんざいな扱いをされるのでは。


 フィールから投げ渡されたアズは、確かに冷たい。万能スライムのアズも湯たんぽ代わりにはならないようだ。


 エアコンをつけたい所だが、ウチのエアコンは数年前から暖房機能がぶっ壊れてしまっている。夏に買い換えなかった事をかなり後悔している所だ。


 ごそごそと物音のする方を見てみれば、フィールがリアの布団に潜り込もうとしているのが見える。まあ残念ながら……


「うわ冷たっ!」


 まあリアも機械だから、普通に冬は冷たいんだよな。起きている時は熱を持つんだけど。


 なんか目が覚めてしまったな。テレビ台に置かれたキャラ物の時計は午前六時を示している。 普段なら起きるどころかまだ寝てすらいない時間だ。


「よし、ヒーターとこたつを出すか」


「よしきた頼んだソーイチロー!」


「お前も手伝えよ」


 ぐっと右手を上げながら、再び布団へと潜り込もうとするフィールを引っ張り出す。何が悲しくてこんな朝っぱらから一人で作業せにゃならんのだ。


「ソーイチローのみちづれ! しかし上手く決まらなかった」


「うるせえよ」


 いいから手伝えっての。






「ふぉぉぉぉ。これが文明の力。あったかー。んじゃおやすみー」


 押入れから引っ張りだしてきた電気ヒーターのスイッチをいれ、こたつをセッティングするなり、すっぽりと頭まで潜り込んで二度寝に勤しむフィール。風邪ひくぞと注意しようかとも思ったが、そういやこいつらって病気とかかからないんだよな。


 ぴょん、とこたつの天板に飛び乗ったアズが、その中心を気に入ったのかそこで動かなくなる。まあ天板も若干暖かくなるからな。


「はぁーぬくぬくー」


 こたつの中からフィールの声が聞こえてくる。もはやこいつが大天使だという事を忘れそうだ。


「うわっ。ソーイチロー足冷たいよ」


「しゃあないだろ。ほら俺のスペース空けてくれ」


 ずりずりとフィールが空けたスペースに足を突っ込み、俺も冷えた体を温める。やっぱりこたつはいいな。和室にこたつ、完璧な布陣だ。みかんが欲しくなるな。


 こたつといえば、やる気をなくし行動力を奪う事に定評があるが、幸いにしてこたつでも出来る仕事を生業にしている事は非常に素晴らしいな。


 することもないし、たまにはこの時間から仕事をするのもいいかもしれないな。


 どうせならコーヒーでも入れるか。






「凄え……朝から一人で書くとこんなに進むのか……」


 普段は昼ごろからだらだら作業をしているのだが、朝から作業をしたところたかだか数時間で普段の一日分以上の作業が出来てしまった。


 確かに他のやつらが起きてると色々雑談したりして捗らないからな。明日から朝にやるのもいいかも知れない。起きれればだけど。


「あ、ソー兄ぃおはよ……お、こたつ出てんじゃん」


 寝起きという事で覇気の無いリアも、こたつの存在に気づくとずるずるともぐりこんでいく。なぜこいつらはこたつに頭から入りたがるのだろうか。


「うえ、フィー姉ぇいんじゃん。せまー」


 それでも出てこない辺り、どんだけこたつの中が好きなんだ。なんか去年もこんな光景を見た気がするな。


「なんかアズ溶けてないか?」


 天板の上でまるまるとしていたアズが心無しかくたーっとしている気がするが、熱で溶けたりしないだろうな?


 俺の声を聞いたアズが、ぷるるんと震えると元のまんまるとした形に戻る。なるほど、気を抜くと形が崩れるのか。


 ちなみに今日は日曜日なので、リアの学校は休みだ。それに乗じてこうしてだらだらと過ごすつもりなのだろう。


「ぶはっ。狭ぇし熱い! フィー姉ぇはなんであそこで寝てられるんだ」


 こたつの中ってそんな長時間入ってられる環境じゃないよな。


 這い出てきたリアが、俺の横の面から足を突っ込み、ぐいぐいとフィールを押しのけてスペースを空けている。


「というかソー兄ぃ、朝から仕事か? 珍しいじゃんか」


「まあたまにはな」


「あ、そうだ。フィー姉ぇのパソコン借りるぜー」


「なんかする事でもあるのか?」


 リアがパソコンなんて珍しいな。検索とかは自前で全部出来るのに。


「なんかフェリ姉ぇから頼まれてなー。このゲームなんだけど、今ヨーチューバーの間でめっちゃ流行ってるらしいんだよ」


 リアが向けてきた画面を見てみると、何やらゲームのダウンロード画面が映されている。ああ、これか。昔流行ったフリーゲームのリメイク版だな。


「んで、これ使って生放送をやるらしいんだけど、先にプレイしてプレイ時間の概算を出してほしいんだと」


「なるほど」


 試しに俺もインターネットで調べてみると、確かにたくさんの実況者や動画投稿者がプレイ動画をアップしている。流行に乗るのもヨーチューバーとしては必要な事か。


 というかフェリシア。遂にゲームの生実況にも手を伸ばし始めたのか。


「よし、これでおっけーと。なあ、どうせならソー兄ぃも一緒にやろーぜ」


「ホラーゲーって二人でやっても怖さ半減じゃないか?」


「まあいいじゃねえか。どうせ暇なんだろ?」


 まあ確かに。今日はやる事も終わってるし、明日の分まで手をつける気にもならないしな。


「よし、やるか」


「いいねえ。じゃああーしもこっちに移動してっと……フィー姉ぇ邪魔だな」


 邪魔とか言ってやるな。邪魔だけど。 








 メインでプレイするのはリアで、俺はそれを隣で見ている形だ。パソコンの画面にはいかにもホラーゲーです、といったメイン画面が映し出されている。


「これってリメイクらしいけど、ソー兄ぃやった事あんの?」


「いや、昔流行ったのは知ってるけど、実際にやった事はないな」


「そっか。じゃあさっそくやってくかー」


 ゲームをスタートさせると、RPGツ○ールで作られたマップが映し出される。


「なんかもー雰囲気が怖ええよなー」


「まだまだ始まってもいないのに怖いな」


 ちなみに俺はホラーゲーは苦手だ。バ○オすら一人でプレイ出来ない。雰囲気が怖いのもいきなり驚かしてくるのも駄目だ。


 昔ルイー○マンションすらクリア断念した位だからな。


 リアもホラーゲーは得意じゃ無いようだ。フェリシアがプレイしている隣でギャースカ騒いでいるのをよく見る。まあそれも楽しんでるようだけど。


 早くも雰囲気にやられそうな俺を尻目に、ぐいぐいとゲームを進めて行くリア。ちょっと調べてみた感じだと、謎解き多めのホラーゲームって感じみたいだけど……


「おわっ!」


「うわマジかよー」


 魔女の住む屋敷を探索し、脱出を目指す、といったストーリーみたいだが、一発目の部屋から天井が落ちてきて死んでしまった。変な声出たわ。


 これ終始こんな感じなのか? 俺最後まで持つ自信ないぞ……










「ふえー、やっとクリアか。時間は……だいたい二時間半くらいだな。ってソー兄ぃ、どうした?」


「いや、ちょっと動悸が止まらないだけだ。問題ない」


「終始ビビリまくってたもんなー」


 何このゲーム。畳み掛けるように怖いイベントが起こって、安心したところにドン! だもんな。何回叫んだか分からんぞ。


 雰囲気が怖いのと突然驚かしてくるのと後味が悪いのが合わさってもはや自分でも何に驚いたのかわからず声が出てるときもあったな。


「まあ結構話もよく出来てたな。途中の手記とか小話とかも良かったし、小説家としても色々参考に出来そうだな」


「急に早口になったな。そんな怖かったのかよ。そういやなんか他のエンディングもあるらしいけど……どうする?」


「それはフェリシアにやってもらえばいいだろ。俺はもう無理だ……」


「なんか情けねーなー」


 放っといてくれ。


 というか、俺たちがギャースカ騒ぎながらゲームをしてたってのに、結局フィールは全然起きなかったな。


 ともかくもう昼飯時だし、そろそろ起こしてやるか。


「おいフィール……そろそろ飯だ……ぞ」


 こたつの布団をめくり上げ、フィールの方を覗き込むと、そこには目から血を流し苦しむ老婆の姿が。


「どうしたのソー兄ぃ……うわ! フィー姉ぇか?」


「いやー途中で起きたんだけどなんかホラーゲーやってるみたいだったから驚かせてやろうと思って……ってソーイチロー?」


「気絶してやがる」


「うわー」








 その後、フェリシアが生放送で別エンディングやらエクストラモードやらを実況している間も、俺はほとんど画面を見ることは無かった。


 もうホラーは勘弁してくれ。 

ご覧頂きありがとうございます。


今回二人がプレイしたのは魔女の家、という作品です。蒼一朗はたいそうビビッていましたが、個人的にかなり面白かったです。かなり怖かったですけど。


次回は久々のフェリシア回。


次回「右脳はスマホゲーを、左脳は据え置き機を操作するために存在する。と彼女は言った」

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