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シスターズ編12 じゃしん

 魔王城、というくらいだから、そりゃもう禍々しい城が姿を現すとばかり思っていたが、案外普通の城が姿を現した。


「なんか普通だな」


「求めてたものと違うね」


「勝手に期待して勝手にがっかりしないで下さいよ」


 若干テンションの下がった俺とフィールに対して、人型の竜之介のツッコミが入る。そういやこいつら人型のままだったな。


「いやだって魔王城って言ったらラストダンジョンな訳だろ。どっちかって言うと冒険の始まりって感じじゃないかこれじゃあ」


「まあ兄ちゃんのいう事はよく分かるぜ。やっぱラスボスが出てくる場所にしちゃあ黒っぽさが足りねーよな」


 黒っぽさ、ってのはよく分からないが、概ね言いたい事は分かるのが悔しい。


「とりあえず中に入ってみるか。よく分からんが邪神ってのはこのメンバーなら勝てるんだよな?」


「まあ大丈夫なんじゃない? やばくなったらわたしも手を出すし」


 大天使様のお墨付きも頂いたところで、早速城の中に入ってみようか。







「なんか本当に普通の城だな」


 魔王城の中に踏み込んで来たはいいが、予想以上に普通だ。調度品のセンスもいいし、掃除も行き届いている。どこからどう見ても普通の城にしか見えないな。


 唯一普通じゃ無いのは、人の気配が全く無いところだろうか。


「使用人とかは皆逃げ出した後なのでしょうか」


「まあ順当に考えればそうなるわな」


 それにしても、邪神というやつは人々を洗脳して従わせるって話だったが、ここに来るまでほとんど洗脳された魔族を見てないな。ヤスヒロと一緒に居たやつらだけか。


「というかさっきから同じところをぐるぐる回ってないか?」


 自信満々に先頭を歩いていたアリスについてきた訳だが、なんだか同じような景色を見たことあるような気がする。


 辺りを見渡してみれば、壁に掛けられた絵が目に入る。間違いない、一度ここを通っているな。


「マジかよ……これが邪神の力って訳か……」


 なにやらアリスが衝撃を受けているが、多分普通に迷っただけだと思う。やはりアリスに任せたのは失敗だったようだ。


 というか何でこいつは意気揚々と先頭を歩いていたんだ。


「はいアリス、後ろに下がって下さい」


「えー」


 えーじゃ無いよ。   







「順当に考えれば、この先に邪神が居るって事になるな」


「この先から割ととんでもない魔力を感じますね」


 凛を先頭に据えてからしばらくして、俺たちは城の最上階と思われる場所に辿り着いた。なんで城ってのはこんなに迷路みたいな造りになってるんだろうか。いざという時に逃げやすくする為だとか色々あるだろうが、普段から不便すぎやしないか。


 そんなこんなで階段を上ったり下がったりすることを何度か繰り返し、ようやく強力な魔力反応がするこの塔の一番上に辿りついたわけだ。


 目の前にはこれまたご丁寧に重厚な扉が設えられている。


「なあ兄ちゃん、ここは『皆、準備はいいか?』とか言う場面だと思うぜ」


「なんでだよ。若干死亡フラグっぽい感じだしやらねーぞ」


 え? という表情のアリスは放っておき、この先で待ち受けているであろう邪神に思いを馳せ、扉の取っ手を握る。


「兄ちゃん? どうしたんだ固まっちまって」


「いや、なんか気の効いたセリフでも言おうと思ったんだけどなんも思い付かなかったわ」


「そういうのいいから早くしてもらえませんかー! 後がつかえてるんですよー」


 階段からヤスヒロの文句とも懇願ともとれるセリフが飛んでくる。確かに狭い階段にこれだけの人数が集まっているからな。後ろの方はすし詰め状態だ。


「じゃあ開けるぞー」


 取っ手に力を込め、ぐっと押し込む……が、空かない。


「重っも、なんじゃこりゃ」


「兄ちゃんはひ弱だなー。ちゃんと筋トレしないからだぞー」


「別にいいだろ。筋トレする作家の方が珍しいぞ、多分」


「そういうのいいから早くして貰えませんかね!」


 ヤスヒロがそろそろキレそうなので、茶番は終わりにして先に進むとしようか。


「じゃあアリス、頼むわ」


「あいよ。せいっ!」


 ギギッと音を立て、巨大な扉が開いていく。


 その先に広がっていたのは、巨大な寝室……だろうか。だろうか、というのも、ベッドや家具の類がほとんど無いからだ。ただただ広い空間が広がっている。


 四面ある壁の内二面には巨大なガラスがはめ込まれ、大パノラマを映し出している。そこからベランダの方へと出る事が出来るようだ。


 なにやら後ろからガシャン、という何かが壊れるような音がしたので振り向いてみれば、アリスが部屋の隅に飾られていた壺を蹴り壊しているのが見えた。


「お前何やってんだ。無意味にモノを壊すなよ」


「でも兄ちゃん。勇者が人んちで壺を壊すのはお約束だと思う」


「ゲーム脳かよ」


 確かによくあるけど、実際にやっちゃ駄目だと思う。


「お兄様、魔力反応は外のようです」


 何事も無かったように話を進める凛も凛だな。


 ともかくアリスには片付けを命じ、俺と凛は外の様子を探ってみる事にした。


 窓を開け外に出てみれば、そこには美しく整えられた庭園が広がっていた。


 色とりどりの花が規則正しく並べられ、花壇を囲うレンガの一つ一つにもこだわりが感じられる素晴らしい庭園だ。思わずここが魔王の城だという事を忘れそうになる。


 そんな美しい庭園に見とれていた俺と凛の目に、とても似つかわしくないものが飛び込んできた。


「……ふう」


 庭園の隅に設えられたベンチに腰掛けている、四十台くらいのおじさんが、とても疲れた様に溜息を溢している。


 よれよれのスーツとあわせて、リストラされたお父さんの様な雰囲気が漂っている。心なしか頭も薄いように見える。


「……あ」


 そのおじさんと、目が合ってしまった。少し曇った眼鏡の奥の双眸が見開かれる。


「すいませんちょっと作戦タイムで」


 とりあえず状況が読めないので、一旦部屋の中に戻る事にした。







「なあ、アレが邪神でいいのか?」


「一応邪神でもおかしくないレベルの魔力を持っているのですが……アレが邪神だとするなら斬新ですね」


 だれが上手い事言えといった。邪神と斬新をかけるんじゃないよ。


「あーあれは移譲型の邪神だねー」


 外をうかがっていたフィールが戻ってくるなり、そんな事を口にした。


「なんだそりゃ。邪神にもいろいろあるのか」


「そりゃいろいろあるよ。移譲型ってのは、邪神の力を譲り渡されて邪神になったタイプだね。ヤスヒロとかが会った邪神はあの人じゃ無かったんじゃない?」


「そうですね。僕があった邪神はあんなおじさんじゃ無くてもっとこう……黒いもや、見たいな感じでした」


「多分元々居た邪神はもう別の世界に逃げ出した後なんじゃないかなー。あのおっさんは身代わりにどっかから召喚されてきたんだろうね」


 なるほど。確かにあのおじさんは身代わりという言葉がよく似合うな。人身御供という感じだ。


 それにしても……


「四天王の二人と魔王に加えて、邪神まで逃げ出したのか。邪神すら逃げ出すほどのパーティーだというのか俺たちは」


「まあわたしと凛、アリス、それからアズだね。わたしに関してはそこらの世界の神より強いし、凛とアリスもそこそこのもんだしね」


「ん……? アズはそこにラインナップされるのか」


 意外だな。アズってそんなに強くなってるのか。


「アズに関しては……神の領域に片足踏み込んじゃってる感じかなー」


「我が威光の前にひれ伏すがいいのー!」


 とん、という軽い重さと共に重さが肩にかかる。どうやらアズが飛び乗ってきたようだ。


 それにしても、アズが神の領域に……ねえ。初めは迷い込んできたただのスライムだったのに、どうしてこうなったのか。


「あのーソーさん。あのおじさんがそわそわとこっちを見てるんですけど。なんかバイトの面接に行ったら予想以上に店が忙しくて放置されてる人みたいになってるんですけど」


 なんだその例え。妙にリアルだがあのおじさんを当てはめると悲惨な事になるから勘弁してやれ。


 ともかくまずは、あのおじさんから話を聞いてみる事にしようか。 

同時に「聖女さんは癒されたい ~アホ勇者たちが邪神の封印を解いてしまったようです~」という短編を投稿してます。ぜひそちらも読んで頂けると幸いです。


~今日の元魔王軍軍師様~


ヘルフリッツ「北関東から東北を回って茨城まで戻ってきましたぞ。やはりバイクで聖地巡礼というのは素晴らしいものですな。それにしてもこの大洗という場所は凄い。街をあげてガ○パンを盛り上げていますな。おお、秋山殿のポップがありますぞ、これは写真を撮らねば!」

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