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シスターズ編11 二人目の四天王(下)

 中二病。それは誰しもかかる可能性のある病気である。


 おおよそ十三歳から十四歳を境に発症し、様々な症状を引き起こす。眼帯や包帯をはじめとする奇抜なファッションであったり、痛い言動であったり、その症状は様々だ。


 だいたいは一年程度で症状の緩和が認められ、中学卒業を境にその症状は見られなくなるのだが、稀にその後も症状が続くケースがある。


 その症例の一ケースが、我が義妹の凛であるのだが。


「我が漆黒の炎を食らうがいい! 邪炎核熱波!」


「ふん、その程度の炎。消えよ(デレンス)


 ルージュの生み出した黒い炎の波を、右手を一振りする事で消してしまう凛。魔法の扱いに関しては凛が一歩上手のようだ。


「今の攻撃はどうでしょう。ソーイチローさん」


「そうですね、ルージュ選手の邪炎核熱波ですが、これは俗に言うテ○ルズ方式の名づけですね。対して凛選手の魔法はラテン語。魔法の実力では凛選手が上回るようですが、個人的にはルージュ選手のネーミングセンスの方が好みですね」


「解説っていうかただの感想ですよねそれ」


 竜之介から突っ込みが入るが、別にいいじゃないか。好きなんだよテイ○ズのカッコイイ漢字を並べてくタイプの技名とか。


 俺たちが話している間にも、ルージュと凛の魔法の応酬は続く。


「三式・竜王豪炎球!」


「甘いわ! 深淵と開闢の炎アビス・ポリビウム・フラーマ


 ルージュの突き出した両手から次々と放たれる炎弾を、凛の生み出した蠢く闇の様な炎が飲み込んでいく。一体何が三式だったのだろうか。まあ嫌いじゃないけどそういうの。


「くっ!」


 割とルージュの方は手詰まりっぽい感じだな。対照的に凛の方はまだまだ余裕そうだ。


「ほう、始原の竜とやらはそんなものか。それでは次はこちらから行こうか」


「おっと、ここで遂に凛選手が攻勢に入ります!」


「凄い魔力量ですね」


 と、言っては見たがぶっちゃけ俺には魔力とか見えないし、全く分からないんだけどな。完全に雰囲気で発言してしまった。


 俺が適当発言をかましている間に、今まで魔法名だけで魔法を放っていた凛が詠唱の様なものを始める。


「大地のマナよ、星の意思よ。リンドブルム=オーヴァチュアの名の下に、根源の魔術を行使する。其は一、一は全。混沌と秩序の境界を棄却し、善と悪をこの手に統べる。破壊の意思を形とし、今ここに顕現せよ!  終焉の亡者  モールトゥース・エクシートゥス


 いやもう何言ってるのか訳わからんくなってますやん。何その呪文界の闇鍋みたいな呪文。しかも今まで頑張ってラテン語使ってきたのに長くなると無理なのかよ。


「いやー凄いですねー」


 ヤスヒロの感想も淡白だ。もはやどこから突っ込めばいいのか分からんしな。


 ぽかんとした俺たちの反応をよそに、完成した凛の魔法が発動する。


 バキン、という何かが割れるような音が次々と響き渡り、ルージュの周りの空間が次々とひび割れていく。空間の裂け目は広がり、その奥の闇がルージュを覆い隠していく。何を言ってるのか分からないと思うが、俺も何が起こってるのかよく分からない。


 ルージュの周りに広がった闇は、やがてその姿を完全に覆いつくした。その奥で何が行われているのかは俺たちには確認する事は出来ない。


 周囲から音が消え、静寂がその場を支配する。


「――  終局  (コンクルージオニ)


 凛のその言葉と共に、広がった闇はその姿を消し、その後には地に倒れ伏すルージュの姿が現れる。なんか色々語感がイマイチだな。凛の呪文は。


 ともかく終わったが、なんかもう色々と酷かったな。









 完全に気絶したルージュに、ルミエーラが回復魔法をかける。


「精霊の魔法をそんなに気軽に使っているのを見ると、精霊魔導士の存在意義が分からなくなりますわね」


「そういうもんかね。ありがとな、ルミエーラ」


「別にいいわよ。そんな大した労力でも無いし」


 そっけないルミエーラの態度。出来る女って感じだな。


「……ん」


 そうこうしている間に、ルージュが目を覚ましたようだ。よくよく考えてみれば、別に放置して先に進んでも良かったんだがな。


「そうか……我は敗れたのか……」


 どうやらルージュの中二病は慢性的なものらしく、凛との戦いに敗れた今も口調は変わらないままだ。


 ともかく起こしたのだから、情報の一つや二つは引き出しておきたい所だ。


「あー、ちょっと聞きたい事があるんだがー」


「なんだ、凡庸な人間風情が……あ、いや、すいませんでした喋ります何でもお聞き下さい!」


 急に態度が変わったが、俺の後ろで凛が杖を構えたのが原因だ。どうやら直接負けた凛に対しては頭が上がらないようだな。


 ビビリきってその場にへたり込んでいるルージュを見下ろす形になったが、まあいいか。このまま質問を続けよう。


「えっと。あと二人四天王が居ると思うんだが、そいつらに関して聞かせてもらってもいいか?」


「はい! 魔女のババアは持病の腰痛が悪化したとかで故郷に帰りました! 悪魔のおっさんは娘の誕生日が近いとかで実家に帰ってます!」


 どっちも居ないのかよ。


「お兄様……これって」


「ああ、多分だけど、逃げたな」


 無理も無い話だ。向かってくるのは歴戦の勇者が二人に、寝返った竜と四天王の一人、そして精霊とゴーストの大群だ。そりゃ全うな精神なら逃げるわな。


 聞いた話じゃ、四天王は邪神に洗脳されていないらしいから、逃げ出すやつが居ないとも限らないか。


「それじゃあこの先の城に居るのは邪神だけって事か」


 今俺たちが居るのが、魔王城に一番近い砦だ。思いのほかサクサクと進んで来たと思ったら、終わりが見えてくるのも早かったな。フリーゲームくらいのボリュームだったな。


「四天王が居るんだからその上に魔王が居るんじゃないの?」


「ああ、たしかに」


 魔王城ってのがあるくらいだしな。


「魔王様なら昨日辞任すると言って田舎に帰りました!」


 ご丁寧に答えてくれるルージュ。魔王ってそんな感じで簡単に辞められるもんなのか? 


「あれ、そういやなんでルージュはこんな所で態々俺たちを待ち構えてたんだ?」


「はい! 自分ならやれると思ってました! 世の中そこまで甘くなかったです!」


 正直でよろしい。








「なんか緊張感無くなってきたな」


「端からあんまり無かった気もするのー」


 ルージュの待ち構えていた砦を出発した俺たち一行。魔王城まではそこまで距離は無いみたいなので、ここからは徒歩で進む事にした。


「竜姫たちに乗ってった方が早いのー」


「断固拒否させて頂く」


 安全装置のついているジェットコースターですら安心できないのに、それすら付いていないドラゴンの背で遊覧飛行とか勘弁していただきたい。


『男は弱点の一つや二つあった方がモテるモノよね』


『ソーイチローちゃんはその辺上手くやってるわねぇ』


 後ろでガヤガヤとおばちゃんたちが野次を入れてくるが、基本的にこの人たちのガヤに反応すると面倒なので無視しておく。


「あ、ソーイチロー。カメラの電池切れた」


「マジかよ」


 ここからが本番だってのに。予備のバッテリーも持ってきて無いし、諦めるか。


「緊張感を無くしてる主な原因ってソーさんですよね」


「否定は出来んな」


 そもそも異世界に遊びに来てるくらいだから、緊張感なんて生まれてこないよな。


   

~その頃の六畳間~


リア「おいフェリ姉ぇ。せっかくエネルギー節約でスリープモードになってんのになんで起こすんだよ」


フェリ「だって一人でひもじい思いしてると悲しくなってくるのよ」


リア「だってじゃ無えって。このままじゃフェリ姉ぇ飢えて死ぬぞ」


フェリ「大丈夫よ。私は最上級の魔族だもの。飢え死ぬなんてそんなみっともない死に方はしないわ。もうすぐソーイチローが帰ってくるはずよ」


リア「駄目だ、現実逃避始めやがった。早く何とかしないと。頼むソー兄ぃ、早く帰ってきてくれ」


~今日の元魔王軍軍師様~


ヘルフリッツ「少し足を伸ばして仙台まで来てみましたぞ。仙台はいいですな、W○ke up Girlsの聖地として来て見ましたが、景色も綺麗で食事も美味い。この後は瑞鳳殿まで言ってみますかな。艦○れはライトにプレイする程度ですが、瑞鳳ちゃんのファンイラストはよく見ますからな。そういえば何か忘れているような……気のせいですな」

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