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シスターズ編1 妹達が来た

新章突入です。

 少し前までうだるような暑さの中で苦しんでいたというのに、気がつけば肌寒い日が続き、冬が来ようとしている。


 夏アニメが終わり、秋アニメが始まっている。前期のアニメもまだ見きっていないというのに、魅力的な数々のアニメが始まり、俺のHDレコーダーの容量もパンパンだ。


 まあそんな事はどうでもいい。今日もいつものように俺の部屋が異世界に繋がったのだが、今日訪れた異世界からの来訪者はいつもと一味違っていた。


「あれ、兄ちゃんじゃん」


「お兄様ですね」


 目の前に立つ二人の少女。左側に立つ発育のいい金髪の少女と、右に立つ少し小柄な黒髪の少女。


 ……何を隠そう、俺の妹たちだ。


「なんで異世界に転移したら兄ちゃんが居るんだ? 夢か?」


 金髪の少女の方は七海(ナナミ)アリス。鮮やかな金髪を頭の横で一括りにして、何やら甲冑の様なものを着込んでいる。腰には剣を下げ、騎士の様な格好をしている。


「たとえ違う世界であろうとも巡り合う。これが私とお兄様の運命なのですね」


 黒髪の少女は七海凛(ナナミ・リン)。こちらはアリスとは違い、大仰なローブなんてものを羽織っている。手に持っているのはこれまた大仰な木製の杖。こっちは魔法使いって感じだろうか。


 二人とも何やら混乱しているようだが、俺もまあ混乱している。


「まあ二人とも、とりあえず靴を脱いで座れば?」


 俺の言葉に、いそいそと靴を脱いで大仰な装備を外していく二人。そんな二人をぼけっと眺めていると、今まで特に発言の無かったフィールが話しかけてくる。


「へえーソーイチローの妹ねぇ。というかソーイチロー。慣れてきたとはいえ落ち着き過ぎじゃない? 妹が異世界から来たんだからもっと驚いてもいいんじゃない?」


「これは驚きすぎて逆に冷静になったパターンだ」


 俺だって驚いてるよ。めちゃくちゃ驚いてるよ。人間衝撃が一定値を過ぎるとオーバーフローして逆に冷静になるんだよ。







 俺とこの二人、アリスと凛は義理の兄妹だ。


 というのも、今まで話に出てくる事は無かったが、俺は孤児院の出身なのだ。七海孤児院というその孤児院には、俺が中学を卒業するまで世話になった。


 俺が孤児院から巣立つときには、孤児院には七人の子供が居た。その内の二人がアリスと凛だ。


 院長から、二人が置手紙を残してどこかへ行った、という話は聞いていたが、まさか異世界へと旅立っていたなんてな。


 アリスはアホだが、凛はしっかりしているから大丈夫だろうと院長はあっけらかんとしていたが、それなりに心配はしていたんだがな。


 二人が失踪したのが三年前。二人が丁度中学を卒業するときだったか。女子は十八歳まで面倒を見る、というのが院長の方針だったが、二人が迷惑をかけないように自活を始めた、というのが院長の見解だった。


 なんにせよ、こうして再会出来て良かった。この部屋さまさまだな。


「つーか、何で兄ちゃんがいるんだ? 兄ちゃんが勇者なのか?」


 ……アリスの言っている事が全く理解できない。そういやアホの子だったな。


「申し訳ありませんお兄様。アホのアリスに代わって私から説明させて頂きます」


 相変わらず凛はしっかりしているな。ちなみにアリスの方が誕生日が早いので、同い年ながら一応凛はアリスの妹、という事になっている。


 妹からもアホ呼ばわりされるアリス……不憫だ。アホなのは間違いないけど。


「まずはお兄様に挨拶する事も無く出奔した事に対してお詫びを。ご心配をおかけいたしました」


 礼儀正しく頭を下げる凛。いや別にそこまでのことではないが……


「信じて頂けないかも知れませんが、わたし達に起こった事について話をさせて頂いてもよろしいでしょうか?」


「……ん? どうせ異世界召喚された、とかじゃ無いのか?」


 俺の言葉にぽかんと口を開く凛と「さすが兄ちゃんだぜ。よく分かってるな」とよく分からない感想を口にするアリス。対照的だな。


「……良く分かりましたね。自分達ですら自分の身に起こったことが突拍子も無い事だと思っているのですが……」


 まあ何となく予想はついていたからな。二人の残したメモには『ちょっと世界を救ってきます』って書いてあったって院長も言っていたし。


 状況を飲み込めない凛に、ここ最近俺の身、というかこの部屋に起こった異変について軽く説明する。


「そんな事があったのですね。それではそちらの女性が……?」


「ああ、コイツが天使のフィール。んでこっちがスライムのアズだ」


 自分の話をしていると分かったのか、アズがとてとてと俺の膝に乗ってくる。今日は人型では無くいつものスライム形態だ。


「そんで、二人が失踪してから三年か。今まで何してたんだ?」


「すげー頑張ってた!」


 アホに聞いた俺が間違いだったよ。ガッツポーズをしながら胸を張るアリスをしっかりとスルーしながら、凛の方へと視線を向ける。


 はあ、と溜息を溢す凛が、今までの事についてつらつらと話し始めた。






「最初に召喚されたのは、アイミスフィア、という世界でした」


 という前置きから、凛の話が始まった。


 凛の話は、まるでファンタジー小説の様だった。神によって異世界に召喚された二人が、神から授かった力を持って世界を救う。そんな王道ファンタジー。


 少し違うのが、世界を救ってそれで終わりでは無かった、という事。


 無事世界を救った二人の前に現れた神様は、二人に謝辞を述べると共に、再び別の世界を救ってはくれないか、と問いかけたようだ。


「わたしは帰りたかったんですが、アリスがですね……」


 アホではあるが、同時に底なしのお人よしであるアリスが、二つ返事で快諾。そんな事をもう三回も繰り返しているらしい。


 つまり、今は四回目の世界という訳だ。


「凛も苦労してるな……」


「まあこうしてお兄様に会うことが出来たので、結果オーライですが」


「はいはい」


 昔から、凛からのお兄様大好き攻撃は変わらない。凛曰く、俺と凛は前世からの運命で繋がっているようだ。よく分からないけれど、中二病は治っていなかったようだ。


「んで、どうして異世界に行ってるはずの二人がここに来てる訳なんだ?」


「それがわたし達も良く分からないのですが……」


 凛たちは現在、四度目の異世界召喚によって呼び出された世界で、邪神なるものと戦う準備を整えている最中だそうだ。


 その中で、異世界の勇者を呼び出す為の魔道具なるもので異世界への扉を開き、その扉の先がここだったそうだ。


 ……これは、アレだな。またいつものヤツだな。


 隣を見れば、フィールが目を逸らしているのが見える。そろそろこの部屋多方面に迷惑をかけすぎているような気がしてきたぞ。


「だから兄ちゃんが勇者って事なんじゃねーの?」


「それは無い。俺はただの一般人だぞ」


「「「一般人……?」」」


 おっと、俺以外の全員から疑問の声が上がった。いやいや、俺に特別な力なんて無いし、一般人だろう。


「兄ちゃんって幽霊とか見えるよな?」


「そんなん誰だって見えるだろう。気にしてないだけで」


「お兄様って妖怪のお友達が居ましたよね?」


「まあ、逆に人間の友達は少ないけどな」


 何だ? 別に特筆するような事じゃないと思うんだが。


「あー、あれってそういう事だったのかー」


 隣ではフィールが何やら納得している。


「お兄様。一般的にお兄様の様な人の事は一般人とは言いません。幽霊が見えるのも、妖怪と話が出来るのも、部屋が異世界に繋がるのも一般的ではありませんよ」


 マジか。異世界に繋がってるのはともかく、前者二つも普通の人には出来ないのか。


 確かに高校の時に河童の話をしたら怪訝な顔をされたっけ。あれは河童は流行じゃないのかと思ってたけど、そういうことだったのか。


 確かに斉藤君も自分が天狗だって事はばらさないでくれって言ってたっけ。


「ねえ、その魔道具ってもう使えないの?」


「ええ、使い捨ての魔道具だと聞いています」


 それって結構マズい感じなんじゃないのか?


「一応一人は連れて行かないと、体裁的にもよろしくないですね」 


 これって俺が行かなきゃ行けないような展開じゃないか?


「お兄様に来ていただけると助かるのですが……」


 上目使いでこちらににじり寄ってくる凛。いやまあ別に行く事自体はいいんだけど。


「俺なんかが行っても役に立たないんじゃないか?」


「わたしのやる気が上がります」


 真っ直ぐな目でそう言い切る凛。それでいいのか、一応勇者じゃないのか。


「そもそもわざわざ他のヤツ呼ぶ必要ねーもんなー。アタシ達だけで十分だし」


 まあそう言うなら別にいいか。幸い原稿の方は割と余裕があるし……でも数ヶ月とかになったらヤバイな。


「なあ、フィールも一緒に来てくれないか? ほら、フィールが居れば途中でも戻ってこれるだろ?」


「え? まあ転移魔法はわたしも使えるけど……んーでもなー」


 何やら難しい顔でうんうんと唸っているフィール。何か問題でもあるのだろうか。


「こないだねー、天界神からあんまし他の世界で好き放題するなって言われたんだよねー。ほら、こないだ冒険者の世界を直したじゃん?」


 アレか。まあ確かに好き放題といえばそうだな。


「まあでもソーイチローが居なかったら暇だし、あんまし戦ったりしなくていいならいいよー」


「おお、サンキュー。という訳で、俺とフィールが行く事になったけどいいか? あ、すまんこのアズも一緒に」


 急に頭の上にアズが飛び乗ってきたので、一緒に連れて行く事にする。


「それで構いません。それでは早速行きましょう」


「えー、どうせ日本に帰ってきたんだからラーメン食べたいんだけどー」


「アリス、ごたごた言わないで下さい。一応見つけ次第すぐに帰る事になっているんですから。それにこの転移陣がいつまで繋がっているのかも分かりませんし」


 それに関してはたぶん大丈夫だと思うけどな。まあアリスのわがままは放っておこう。


 そんな訳で、俺たちは異世界に行く事になった。はてさて、どうなる事やら。

ご覧頂きありがとうございます。義妹二人が登場し、蒼一郎の秘密も明らかになりました。


しばらくはアズ、フィール、妹達と共に異世界を旅するお話になります。ちょくちょく日本にいるリアやフェリシアのお話もありますが、メインは妹達になります。


感想や評価を貰えると嬉しいです。


アホ毛天使「金髪か......キャラ被りだね......」


蒼「被って無いだろ」(胸元を見ながら)


アホ毛「あ"?」


蒼「何でも無いです」


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