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4 六畳間と冒険者 前編

 ある日の昼下がり、休憩しに来たフェリシアとともに、まったりとした午後を満喫していた。


「ソーイチロー、ベタ手伝ってよ」


 フィールは夏コミに向けて漫画を描いている。半年ほど前に始めた漫画だが、いつの間にか中々の腕前になっている。どうもトゥイッターでフォロワーが数万人も居るようだ。

 

 今年は夏コミに出ようとしているらしく、それに向けての漫画の製作に日々汗を流している。


「いや、俺も仕事中だからちょっと待ってくれ」


 俺もちゃぶ台の上にノートPCを広げ、絶賛作業中だ。


 ちなみに俺は小説家を生業としている。そこそこ売れているので、二人が暮らしていく分には苦労していない。


 ちょっと待てという俺の言葉に、うぇーという顔でちゃぶ台に突っ伏すフィール。無理言うなって。


 残るフェリシアはと言えば、畳に寝そべりながらゲーム中だ。今プレイしているのは某国民的RPG、いつも最後じゃ無い最後の幻想の10だ。名作だな。


 あの日からフェリシアはゲームにどっぷりハマったようで、時間があればこの部屋を訪れてはゲームをする日々が続いている。


 そんな穏やかな午後、異世界への扉という名の押入れが、おもむろに開いたのである。











「あー、やっと終わったわー。今日の分はこれで終わりじゃー」


「わたしも今日はこんなもんでいいや。まあ何とか間に合うっしょー」


 いや、コミマまであと二十日切っているけど、それって大丈夫なのか?


 そんな風に終わった達成感に浸る俺と、オワったフィール、ゲームの世界の人の目の前で、ずずず、という音を立てて押入れの扉が開いた。


「あー、また来たねー」


「おお、異世界から人が来るのか」


 フェリシア、反応するのはいいが画面から目は離さないんだな。


「うう……ここが、神界……か?」


 扉の奥から出てきたのは、革鎧に身を包んだ中年の男。というか、ボロボロな上にぶっ倒れたぞ!?


「おいおい、これ大丈夫なのか? 死にそうだぞこのおっさん!」


「あー、ここで死なれてもあれだし一応回復しとくかー」


 そう呟いて、ほいっと倒れているおっさんに指を向けるフィール。おお! なんかおっさんが輝き始めて傷がみるみるうちに治っていく。これが回復魔法ってやつか。


「なあ、魔法って呪文とか無いのか?」


「まーあるにはあるけどー。わたしクラスになれば呪文なんて必要ないし、普通に恥ずかしいし」


「まあそこそこ強くなれば呪文なんて邪魔なだけだからね。というかこの人、私達の世界の人間じゃないよ?」


 どうやらセーブポイントまでたどり着いたらしいゲーマーが、一旦ゲームを中断し会話に混じってきた。


「私達の世界と違う、ってどうしてそんな事が分かるんだ?」


「だって魔力の感じが全然違うもの」


 魔力と来たかー。俺には全くさっぱりなやつだな。


「それで、この人どうするの? なんか倒れる前に言ってなかった?」


「あー、なんか神域がどうのこうのとか言ってたような気がする」


「神域ねー。私も流石にさっぱりね。そこのところ大天使様的にはどうなのよ」


「分かるわけないじゃん」


 という事は全員さっぱりか。これは起こしてみるしかないかなー。


 そう思ったのは俺だけじゃ無いようで、フィールがおっさんの元にとてとてと歩いて行き、その顔面にデコピンを食らわせた。


 ……デコピンってあんな銃声みたいな音がするもんだったっけな。






 フィールの強烈なデコピンを受けたおっさんが、うめき声を出しながら目を覚ました。あれを受けて無事とか、頑丈なおっさんだ。まあフィールもその辺を分かっててやったんだろうけど。


「う……ここは……。そうだ、俺はダンジョンを踏破して……」


 また気になるワードが聞こえたな。ダンジョンとな? 心揺さぶられるワードだ。


「もしもーし、とりあえず自己紹介してもらえますかー?」


 フィールが催促する。あいつ早くも面倒になって来てるな。


「あ、俺は、いや私はクロッゾと言う……言います。あの、冒険者をやっている……やっています」


 敬語が出来ないやつが無理して敬語を使うな。聞き取りづらいわ。


「あの、皆様は神様……ですか?」


 神様? 少なくとも神様は居ないと思うぞ。


 どうも要領を得ないので、おっさんにじっくり話を聞いてみることに。


 そんでその要約がこちら


・おっさんの世界の中心には巨大なダンジョンがある。

・そのダンジョンは全部で百階層、最深部までたどり着いたものには神様が一つだけ願いを叶えてくれるらしい。

・んで、頼れる仲間達とダンジョンを進んで来たおっさん。道中仲間達は一人ずつ命を落とし、おっさん一人が最後まで踏破。

・百階層を踏破して現れた扉をくぐるとここにいた←イマココ!


 という感じ。なんか壮大な物語なのにあっさりまとめた上に、たどり着いたのがこんな小汚い六畳間で申し訳なくなる。


(なあソーイチロー)


 フェリシアが何やら耳打ちしてくる。なんだ? おっさんに聞かれたくないことか?


(これってアレじゃないか? 本来神域とかいう所に行く予定だったこの男を、因果の壊れたこの部屋が掃除機のように吸い込んでしまった、みたいな)


 ……いやいやそんなまさか、ねえ。そんな事ある訳……無いとは言い切れないな。


 それとフェリシア、その掃除機というたとえはやめろ。そのたとえだと俺たちもおっさんもゴミだということになる。


(確かに、その可能性は否定できないな。なにせこの部屋の事だからな)


 この部屋の事に関しては未だに謎ばかりだ。フィールなら何か知っていそうだが。


 そのフィールだが、俺達の会話に耳を立てていたが、フェリシアの話を聞いて冷や汗をツー、と流している。こいつやっぱ何か知ってるな。


 とにかく今はこのおっさんをどうするかだ。だがいつまでも作戦会議をしているわけにも行かない。おっさんが怪訝そうな顔でこちらを見ている。


(なあフィール、お前なら願いの一つやそこら、叶えてやれるんじゃないか? そんでさっさとお引取り願おう)


(そ、そうだね! それで行こう)


「それで? 君はどんな願いを叶えて欲しいんだい? 僕なら何でも一つ、願いを叶えてあげられるよ?」

 

 こいつ、最近見ていた魔法少女アニメに引っ張られて口調が変わっている上に、なんでもとか余計な事を言いやがった!


 本人も、「やっべーやっちまったー」みたいな顔をしてるし。


 これ大丈夫かよ……

短編が続きます、とか言っておいてさっそく後編に続きます。


個人的にF○はXが至高。時点で5、3のDS版、13って感じですかね。

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