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32 人界神の遊び心

三十二話、再びの魔界です。

「なんじゃこりゃあーーーーー!」


 目いっぱい張ったリアの叫び声が、辺りに響き渡る。本当は俺も叫びたかったが、目の前に自分より驚いてるやつが居ると冷静になるよな。


 俺とフィール、リア、アズの三人と一匹はここ、魔界の例の村を訪れていた。前回魔界に来ようと思ったときに紆余曲折あったやつだな。


 もともとは開拓村で、掘っ立て小屋がいくつかあっただけだったこの村も、たかだか数週間で様変わりしていた。


「なんじゃこりゃ、ブロック、ブロックで出来てんのかこれ? あっははは、やべー、これ作ったやつやべー!」


 なぜかべらぼうにツボにハマったらしいリアが、爆笑しながら地面をぺたぺたと叩いている。おいちょっと落ち着け。


 リアの言うとおり、町といえる規模になったこの場所は、その全てがブロック状の物体で構成されている。アルトは本当にマイニングクラフトをリアルでやってしまったようだ。


 石畳も、そこらの土も、木造の建物も全てがブロック状……リアルで見るとブロック一つ当たりがでかいな。


 とまあここまで町の現状を説明してきた訳だが……


「なあフィールさん。そろそろ手を離してもいいんじゃないですかね?」


 何故か俺は、部屋を出てから今に至るまで、フィールとしっかり手を繋いでいるのである。フィール曰く、この間みたいに迷子になると困るから、という事なのだが。


「ソーイチローを好きに歩かせると変なフラグ立てて来るからダメ」


 解せぬ。何故かこの間、駄菓子を食べた日からフィールの距離が近い気がする。何かあったのだろうか?


「来たね! どうだいボクが作り上げたこの町は!」


 おっと、目の前が光り輝いたかと思うと、いきなり仁王立ちのアルトが現れた。がっつりとドヤ顔で現れたが、いかんせん身長が小さいせいか迫力が足りないな。


「む?」


 俺達が微妙な顔をしている事に気づいたのだろうか。登場がイマイチ決まらなかった事が不満だったらしいアルトは、いつも肩からかけているポシェットから、何やら小さいブロックの様なものを取り出した。


 そのままジャンプしては足元に石のブロックを置いて、またジャンプしては置いてと繰り返し、あっというまにブロック五個分の高さまで上ってしまった。


 あれは……マイニングクラフトで垂直に上っていくやつか……リアルで見るとキモイ動きだな。


「キモイな……」


「キモイね……」


 おいこら二人とも、声に出すんじゃ無いよ。高く上りすぎたアルトに聞こえてないからいいけど。


「どうだいソーイチロークン! ボクの作り上げたこの町は!」


 あ、やり直した。


「いや正直驚いたし、すげえと思ったけど。とりあえず話しにくいから下りてきてくれ」


「あ、そうだね」


 下りてくるときも、一個ずつブロックを削って下りてくるのね。というかちょっと時間かかるな。なんで石のブロックにしたんだか。 








「というかどうやったんだ? そのマイニングクラフトみたいなシステム」


「え? 作ったけど?」


 さも当然であるかのような表情でこちらを見るアルト。そういやこいつって神様だったわ。


「せっかく作ったのに、試す場所が無かったんだよねー。人間界に行くと色々面倒だし。それで思い出したんだよ、ソーイチロークンが村かなんか作ってたなーって」


 別に俺が作った訳じゃ無いんだけどな。


「作り始めて思ったんだ。今までは人の作った芸術品を集めて来たけど、ボクの中にも芸術性が眠っていたんだってね!」


「そのわりには結構普通だよね」


「ぐっ」


 フィールの率直な感想に胸を押さえるアルト。まあ確かに普通っちゃ普通だな。建物もほとんどただの立方体だし。


「まあ確かに、ボクはまだ初心者だからね。まだまだここから伸びるから、きっと……あ、そうだどうせなら皆も作ってみる?」


 なにそれめっちゃ面白そう。


「つってもその魔法? アルトしか使えないんじゃないのか?」


「いや? 皆にも使える様に出来るよ。一応勇者とかにギフトとかあげたりするしね」


 そういうもんなのか。


「とりあえず一人一つ建物を建ててみるってのはどうかな? 今回はボクも本気出すからねー」


 という訳で、この魔界の開拓村でリアルマイニングクラフト選手権が開催される事になった。こんな事して大丈夫なのだろうか。











 マイニングクラフト。今日本でブームになっているゲームだ。元々はPCゲームだったのだが、最近ではスマートフォンや家庭用ゲーム機でもプレイできるようになっている。


 マップ上の物体はほとんどがブロックで表現されている。土も、石も、木も、水でさえ同じ大きさのブロックの集合体だ。そのブロックを崩したり積んだりして、思い思いのものを作ることが出来る。


 他にも素材同士を合成する事で、階段や木の柵、ガラス窓なども作ることが出来るため、作れるものはそれこそ無限大だ。


「それじゃ、みんなのアイテムボックスの中に一通りの素材が入ってるからね。ポーチに手を入れて、中身を思い浮かべるとそのリストが出てくるよ!」


 アルトに手渡された可愛らしいデザインのショルダーポーチに手を入れる。おお、本当にゲームみたいな画面が目の前に広がっている。


 しかも目の前の風景がすべてブロックの大きさでマス目が入ってるように見える。


「この素材を持ってる状態で、ここに置く! って思えばそこに素材が置けるよー」


 なるほど、この土のブロックを目の前に……おお、本当に置けた。持ってる状態では片手サイズだったブロックが急に一メートル四方の土ブロックになったな。


「壊すときは片手で何回か小突いてやれば壊れるからね。あと、素材の合成は目に映ってるメニューで出来るようになってるから」


 この視界の隅に映ってるメニューから色々と出来るわけか。本当にVRゲームみたいだな。


「じゃああとは各自適当に触りながら慣れてってね! それじゃ!」


 それだけ言うと、アルトは自分に割り当てられた持ち場へと走っていった。自由なやつだ。


「んじゃ、わたしも行くねー。アズも一緒に行こう」


 フィールは早くも操作に慣れたのか、翼を広げてどこかへと飛び立って行った。さっきまで放してくれなかった手も、リアルマイニングクラフトへの興味が勝ったのかあっさりと手放して去っていった。


 ついでとばかりに俺の頭の上に乗っていたアズを引っぺがして連れて行ったな。


「よし、あーしも慣れた。 んじゃソー兄ぃ、またな!」


 おいおい皆適応早いな。リアも直ぐになれて背中からターボを起動しながら走り去っていく。なんだその機能、初めて見たぞ。


 まあぼちぼち俺も行くとするか。まあ操作はやりながら慣れればいいだろう。









「にしても何を作るかなー」


 俺の場所として指定された広大な土地。ちょっとした屋敷を立ててもまだ余りそうな広い土地を前に、腕組みをして構想を練ってみる。


 モダンでシャレオツな感じで……いや、和風の平屋にするか……


「あれ、ソーイチローさんじゃ無いですか。来てたんですね」


「なんだ、キキとババアか」


 後ろから声をかけられたので振り向いてみると、オーガのキキと、セクハラババアが立っている。そういやこのババアの名前なんだったっけ? まあいいか。


「全く、失礼な坊主じゃのう」


 そう言うのであれば、その俺の尻を撫でる手をどうにかしろ。


「ソーイチローさんは何をしに来たんですか? いえ、別にいつ来ていただいても良いのですが」


「なんかアルトが面白い事をやってるっていうから見に来たんだけど、なんか俺も一つ建物を建てることになってな」


「アルト……ああ、人界神様の事ですか。凄いですよね、これ。人も増えましたし、立派な町になりましたよ。というか人界神様の事を名前で気軽に呼べるのなんてソーイチローさんだけですからね?」


 ああ、まあ確かに神様だもんな。とは言ってもなあ、あの見た目だしなあ……


 とにかく今は建てる建物の事を考えようか。

ここまでご覧頂きありがとうございます。


マイ○ラの話が多くなりましたが、作者はマイク○初心者です。ちょろっとやった事があるくらいです。


あと、この小説の略称を募集していましたが、とりあえず多かった「六天魔」で行こうと思います。まあどこで使うのかは思いつきませんが笑

案を考えてくださった皆さんありがとうございました。

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