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19 神様と龍剣

遅ればせながら第19話です。


ものものしいタイトルですが、全くそんな事はありません笑

 唐突に部屋に現れたアニメみたいな見た目の子供。フィール曰くこの子供が人間界の神様であるらしい。


 その神様は、おもむろに部屋の中を歩き出すと、俺の目の前でピタリと止まり、上目使いに見上げてくる。性別が分からないからなんともいえないが、うんあざとい。


「ふーん。キミがうわさの異世界人クンだね?」


 どこで聞きつけたのかは知らないが、向こうはどうやら俺の事を知っているらしい。


「ああ、初めまして。七海蒼一朗だ」


「よろしくねー。ボクの事はアルトって呼んでねー」


 なんとも軽い感じだな。


(ねえ、なんでソーイチローってあんなに物怖じしないのかしら。一応相手は神様だって分かってるのよね?)


(あー。多分異世界ってなると自分の理解の及ぶ範囲から大分飛び出ちゃってるから、コミュ障発動させてる余裕とか無いんじゃないかなー)


(そういや私が初めてあの部屋に行った時もやたら落ち着いてたわね)


 なんだかフィールとフェリシアが部屋の隅でこそこそやっているが、一体なんなのだろうか。


「呼ばれたような気がしたから来てみたけど、こりゃまた凄いメンツがそろってるねー。あ、そういえば……」


 唐突に今までの緩い雰囲気が消え、ジロリと部屋の隅のフィールとフェリシアを見つめるアルト。


「ねえ、二人とも。分かってるよね?」


「いやー何の事だかー」


「分かってるよね?」


「……」


 まるでレコードのように淡々と繰り返されるアルトの問いかけに、フィールが圧倒されている。フェリシアに関しては最初から顔に能面を貼り付けて淡々と時が過ぎるのを待っている。


 そういやあの二人、世界を渡る扉をぶっ壊して来たんだったか。


「ソーイチロークン、ちょっとこの二人借りるねー」


 そういい残すと、俺の返答を待たずに二人を引きずって外へと出て行った。頭の中にドナドナが流れたのはご愛嬌だろう。








「あれから三十分くらい経ったけど、あいつら帰ってこないなー」


 キキの入れてくれたお茶を飲みながら、懐のアズを撫で回して時間を潰しているが、なかなかあの三人は帰ってこない。


「ソーイチローさん、落ち着いてますね。自分はもう何が何だか……」


 俺の前に座るキキがそうぼやくが、もうなんか慣れてしまった感が否めない。そういやさきほどからババアが静かだが、死んで無いよな?


「死んどらんわ。失礼な坊主じゃの」


「そりゃ良かった」


 暇をもてあましつつ、手元のお茶を頂く。このお茶はキキが栽培している茶葉のようだが、この渋みがなんともいえない美味さだ。人は見た目に寄らないな。


 うーん、こうなってくるとお茶菓子が欲しくなってくるな。


 そう考えて居ると、机にスっとお盆が出てきた。上に乗っているのは多種多様なお茶菓子たちだ。


 ぎょっとして隣を見てみると、慣れ親しんだメイド服が視界に入る。なんだ、シルか。


 ……いやいや、なんだシルか。じゃ無い。


「お前いつの間にここに来た?」


「ソーイチロー様の愛の奴隷ですから」


 微妙に会話がかみ合っていないな。いやいや脱がなくていいから。


 唐突に服を脱ごうとするシルを必死に止める。だから結局なんでここにいるんだよ。


「いえ、ソーイチロー様の気配を感じたもので飛んで参りました。幸い人間界に繋がる扉が破壊されていたので助かりました」


 結局イマイチ理由が分からないが、まあいいや。


「その扉の件でフェリシアとフィールが人界神に連れてかれて暇してたんだよ。丁度よかったわ」


「ああ、人界神様のお説教は長いですから、無理もありませんね」


 それでフィール達は人界神、アルトの事を面倒そうにしていた訳か。


「まあその件に関しちゃ俺のせいでもあるんだよなー」


「いえ、人界神様に一言相談すれば鍵を貸していただけたハズですが。おそらくあのお二方は人界神様に会いたくないという理由だけで破壊という方法をとっていますから、自業自得ですね」


「それって結局怒られるんじゃないか?」


「さっさととんずらしてほとぼりが冷めるまで向こうの世界に隠れているつもりだったのでは無いでしょうか?」


 考えが浅はか過ぎるな。そこまでして会いたくなかったのか。


「特に魔王様は人界神様を苦手にしていますね。昔何かあったようです」


 まああの二人が悪いなら別にいいか。ゆっくり待つことにしようか。









 結局、あの二人が説教から解放されるまでには二時間近くがかかった。


 帰ってきた二人は、なんというか……やつれてるな。フェリシアは自慢の角の艶が心なしかなくなっているように見える。フィールも髪の毛がパサパサだ。一体何があったのやら。


 二人は部屋の隅にとぼとぼと歩いて行くと、そこで力尽きたように壁に背を預け座り込んだ。ほっといてくれというオーラが染み出している。


「ふう、お待たせ。それで、何かボクに用があったんだっけ?」


 何事も無かったかのようにあっけらかんと聞いてくるアルト。その感じが逆に怖いな。


「いや、ここの連中を魔界に連れて行こうと思って。それでアルトに許可を取ろうと思ってたんだ」


 俺の言葉を聞いて、少し考え込むアルト。腕を組み目をつぶる姿は子供にしか見えないんだよなー。


「うーん。確かにちょっと見た感じこの村はあんまりいい感じじゃ無いね。ただボクにとっては気にするような事じゃないのも確かだ」


 んー、あんまり好感触じゃ無いな。


「ボクはこれでも神様だからさ、対価無しに行動するのはちょっとねー」


 軽い感じだけど、言ってる事は結構シビアな感じだな。対価、ね。神に対する供物が必要ってことなのかな?


(なあシル、人界神に捧げる供物ってのはどんなのが必要なんだ?)


(人界神様は珍しいものがお好きなようですね。人が作った美術品とかを奉納すると喜ばれます。人間界では美術の神とも呼ばれていますしね)


 美術品かー。特に手持ちだとそんなものは持ち歩いて居ないな。いや、アレなら意外といけたりするのかもしれない。


 俺は腰に下げていた家の鍵などの束を取り外すと、そこついていたキーホルダーを束から外す。


 これならどうだ?


「これは……」


 俺がすっと手渡したキーホルダーを見て、目を見開き硬直するアルト。やっぱ駄目か?


「これは、凄いね! ちょーカッコイイ! ソーイチロークンこんなのボク初めて見たよ!」


 良かった、異世界の神様にも刺さったようだな、この『観光地とかでよく見る剣に龍が巻きついているキーホルダー』の魅力は。


 昔から結構好きなんだよな、この『観光地とかでよく見る剣に龍が巻きついているキーホルダー』が。誰しも男子なら一度は手に取った事がきっとあるだろう。


 俺がアルトに渡したのは、二つの剣が合体してイカツイ一つの剣になるやつだ。剣の柄のところにドラゴンの顔がついていて、いかにも攻撃力が高そうだ。


 ちなみにこの『観光地とかでよく見る剣に龍が巻きついているキーホルダー』の正式名称は『魔界のドラゴン夜光剣キーホルダー』と言うらしい。気になった人は調べてみて欲しい、「あ、これか!」ってなるはずだ。


「いいよこれ! このドラゴンもいいし、このガショって音がたまらないね!」


 両手に持った剣をガショガショと組み合わせたりバラしたりしながら、やたらテンションが上がっているアルト。


「他にもめちゃくちゃ種類があるから、今度持ってくるわ」


 なかなかこの『観光地とかでよく見る剣に龍が巻きついているキーホルダー』の良さを分かってくれるやつは少なかったから、俺も嬉しくなってきたな。


「ホントに! いやーめちゃくちゃ楽しみだよ。あ、扉の件は好きにしていいからね。ソーイチロークンならいつでもフリーパスでいいよ!」


 『観光地とかでよく見る剣に龍が巻きついているキーホルダー』の力で、神様と仲良くなる事が出来ました。ありがとう『観光地とかでよく見る剣に龍が巻きついているキーホルダー』これからも集めます『観光地とかでよく見る剣に龍が巻きついているキーホルダー』


 隣で若干シルが呆れた様な顔で見ているが、これの良さは分かるやつにしか分からないんだよ。


 

『観光地とかでよく見る剣に龍が巻きついているキーホルダー』『オコジョみたいな肌触りの良いキーホルダー』といえば、どこの土産物屋でもある土産の二大巨頭ではないでしょうか?


個人的に好きなんですよね『観光地とかでよく見る剣に龍が巻きついているキーホルダー』

バイクの鍵に引っ付けてます。


そんなこんなでゆるりとやってきた人間界編。そろそろ魔界に行くようです。


次回「魔界と変態」

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