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15 異世界人と台風

一日ぶりの投稿です。

 フィールと共にスーパーへ行き、家に帰ると丁度押入れから出てくるフェリシアとシルに鉢合わせた。


「あら、何その大荷物」


 フェリシアが疑問に思うのも仕方が無い。俺とフィールは、一人三つ、二人で六つのダンボールを抱えているのだから。


「おいしょっとー」


 とりあえずこのまま持っているのも重くて仕方が無いので、畳の上に積んでいく。ただでさえ狭い六畳間がさらに狭くなったな。


「フィールが福引で二等を当ててな。四箱は全部その景品だ。カップラーメン半年分、全部で百五十個だ」


「カップラーメン!?」


 とたんに目を輝かせるフェリシア。そういやこいつカップめんが好きだったな。よくテレビの前でずるずるやりながらゲームをしているのを見る。


「カップラーメンというと、魔王様が定期的に部屋でこっそりと食べているアレですね」


 そう言うシルの言葉で思い出した。


「フェリシア。お前定期的に部屋のカップめん勝手に持ち出してるだろう」


 ぎくり、という表情でこちらを振り向き、密告者であるシルを睨みつけるフェリシア。当のシルはどこ吹く風だ。この二人の関係もよく分からないな。


「もってくなら一言かけてくれ。いきなり無くなってたらびっくりするだろうが」


「ごめんなさい」


 うむ。素直でよろしい。





「それで? 四箱がカップラーメンなのはいいとして、他の二箱はなんなのよ」


「これは台風が来るからそのための備蓄だ」


 どうやら明日から台風の暴風域に入るらしい。しかも今回は二つ続けて関東圏を直撃するという予想なので、多めに食べ物類を買い込む事にしたのだ。


「まあそれもカップラーメンが当たったから微妙な感じになっちゃったけどねー」


 確かに。買い込んだ食料品の中にはカップめんの類も大量に含まれている。なぜかちょっぴり損した気分だ。


 しかしとんでも無い量だな。棚にしまいきれない分はダンボールのまま廊下に置いて置くか。


「この世界にも台風って居るのね。大変ね」


 台風が()る? この世界にもって事はフェリシア達の世界にも台風はあるみたいだけど、居るってのはどういうことだろうか。


「この世界の人間に撃退できるものではないでしょう。さぞ犠牲が出るのでしょうね」


 シルの言葉にまたしても俺の頭に疑問符が浮かぶ。どうも俺の知ってる台風とは別物のようだが……


「なあ、お前達の世界の台風ってのはどんな感じなんだ?」


「そうね、前回来たのは七つの首を持つ大蛇型だったわね。それぞれの首から別の属性のブレスを出すせいで対処が難しかったわ」


「前回は軍の方にも被害が出ましたからね」


 うん、明らかに俺の知ってる台風じゃ無いな。それ完全にモンスターじゃないか。


「ちょっと台風に関して一から説明してもらってもいいか?」


「ん? 別にいいけど。台風ってのは世界の上空を飛び回る災害指定の巨大モンスターの通称ね。そのどれもが強大な力を持っていて、街に近づいた際には軍を出して対処するわ」


 やっぱモンスターじゃねえか。


「最近では進路予測の精度も増してきて、被害も少なくなって来ましたね」


「昔は街に近づくたびに何人もの犠牲者がでたそうね。最近ではあまり無くなったけど」


「三回前の台風12号のカトリーヌが接近したときは大変でした」


「あの人型のやつね。あれは大変だったわ」


 ……なんかちょいちょいこっちの世界の台風と同じ要素が混ざってくるな。なんだ12号のカトリーヌって。


「なあ、何で台風って名前なんだ?」


「どうも昔、人族の冒険者が『ありゃまるで台風だな』って言い始めたのが始まりらしいわ。12号とか番号をつけたり、名前を付けるのもその冒険者が始まりね」


 その人族の冒険者って絶対日本人の転移者だよな。やっぱ居るのか、転移者とかそういうの。


 まあ確かにこうしてこの部屋が異世界と繋がってる訳だし、居ても不思議ではないか。


「今回は14号と15号が同時に接近してるらしーよ。ほら、これが進路予想図」


 フィールが手元のスマートフォンで天気予報のアプリを開き、二人に見せている。こいつ絶対分かっててやってるだろ。


「二つ同時!? この国の人たちって魔法とか使えないのよね? 大丈夫なのかしら」


「台風の進路をここまで予測しているとは……日本という国はやはり進んでいるのですね。あのようなモンスターの動きをここまで……」


 ほら、もう完全に勘違いしてる。


「ちょっと私行ってくるわ」


 そう行って、背中の翼を広げると、窓から一目散に飛び立っていくフェリシア。あーあ、行っちゃったよ。


 その背中を見送る俺達。シルだけは心配そうな表情だが、フィールはいたずらが成功した子供のような表情だ。


 もはやどうする事も出来ない俺は、テレビをつけてフェリシアの帰りを待つことにした。一応風呂を沸かしといてやろう。










 数十分後、びしょ濡れになったフェリシアが帰ってきた。無言のまま窓の外に佇んでいるので、窓を開けてバスタオルを渡してやる。


 畳が濡れているが、まあそこは気にしないでおくとしよう。


「台風が全然台風じゃ無かった」


 うん、この言葉だけだったら何をいってるのか全く分からないな。


「この世界の台風は、ただの自然現象だ」


「そう。着いた瞬間その大きさに驚いたけど、とりあえず突っ込んでみたの。そしたらこのざまよ」


 もう、なんとも言えない。となりで笑いを堪えてるフィールには後で説教をしてやろう。


「それでも、なんとかその中心までたどり着いたわ。凄い雨と風だったけど、中心に行ったら急に晴れだしたの」


 うん、台風の目だね。生身で台風の目にたどり着いたのはこの世界初だろうな。


 そこでフィールとシルがついに笑いを堪えきれなくなったのか吹き出した。シルに関してはフェリシアが飛び出した後に本当のことを教えてある。お前ら後で覚えとけよ。


 フェリシアの目が、死んでいる。たんたんと話す様子が怖すぎる。


「中心には何も無かったわ。そのときに気がついたの。ああ、フィールにからかわれたんだなって」


「あ、ああ」


「ムカついたからとりあえず魔法で吹き飛ばして来たわ。一個吹き飛ばしたら二個めも見えたから、それも吹き飛ばしたわ」


「ああ、分かった。分かったから、とりあえず風呂に入って来いよ。沸かしといたから」


「ええ、いただくわ」


 そう言うと、バスタオルを首に掛けて風呂場へと向うフェリシア。風呂場の扉の前でぐりんと首をこちらへ返すと、一言。


「フィール。上がったら覚えてなさい」


 底冷えするような声で、そう言った。








 その後、フィールはフェリシアから淡々と説教を受けた。その日から、俺は極力フェリシアを怒らせないように気をつける事を心がける事にした。


 説教の内容と手法は、差し控えさせて頂く。

ここまでご覧下さりありがとうございます。


ここまで様々なパロディをぼかしぼかし入れて来ましたが、あとがきなどで説明した方がいいのでしょうか。ぶっちゃけ分かりづらいネタもいくつかあると思います。これって何?みたいなのがあるようならあとがきでちょちょっと話そうかなとか考えてます。


次回は夏の終わり、どうやら魔界のお祭りに行くようです。


次回「そうだ、魔界へ行こう 1」

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