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14 魔王フェリシアちゃんねる

一日ぶりの投稿です。昨日は更新できずすいません。


第十四話。動画編最終話です。

「三、二、一、キュー!」


 謎のプロデューサー感を出しているフィールの掛け声が、六畳一間に響き渡る。


 パソコンに繋げた一眼レフを回し、放送を始める。スマートフォンの方でも、生放送の画面を開き、ちゃんと放送できているかどうかを確認する。よし、ちゃんと映ってるな。


『フェリちゃん、始めていいよ!』


 フィールの手にはスケッチブックが抱えられ、文字でフェリシアへと指示を出している。お前はプロデューサーなのかアシスタントディレクターなのかどっちなんだ。


「御機嫌よう諸君。私のチャンネルへようこそ! 私が魔王、フェリシア・ディ・アスタルティアだ!」


 最初の頃に出会ったような凛とした口調で、フェリシアが堂々と挨拶をする……が、あれ? こんな感じで行くんだっけか?


 フェリシアを見てみれば「やっちまった……」みたいな顔をしている。どうもさっき魔王として演説するのには慣れてる、みたいな事を言ってたからな。それに引っ張られたみたいだ。


 これは初っ端から大すべりか……? とりあえず画面のほうで反応を見てみよう。


 閲覧者数は……おお、この時点で既に五百人近くが見に来ている。トゥイッター効果すごいな。肝心の視聴者の反応の方はどうだ?


『魔王wwwwww』


『キャラ濃すぎwww』


『逆に新しいわwww』


 草生えすぎだろう。他にもいろいろあるな。


『でも可愛くね?』


『コミケに居たの俺見た!』


『可愛いフェリシアたん可愛い』


 意外と概ね好意的に見られているようだ。キャラ付けとしては意外といい線行ってるんじゃないかこれ。


 フィールの方へと視線をやり、このまま行く旨をフェリシアへと伝える。


 スケッチブックを見たフェリシアが「マジで?」という視線を送ってくるが、マジだ。

 覚悟を決めたフェリシアがカメラに向って話を続ける。


「親愛なる視聴者達よ。今日は私の歌を披露する、心して聞くがよい」


 マイクスタンドと化したアズに掛けられていたヘッドフォンをつけ、歌の準備を始めるフェリシア。おっと、俺も準備をしないとな。


 今回フェリシアが選んだのは、今人気のボーカロイドの楽曲だ。何で知ってるのか聞いてみたら「最近ハマってるスマホの音ゲーに入ってる」という事らしい。お前ちょっと日本に染まりすぎじゃないか?


 そんな俺の感想は措いておいて、楽曲のインスト音源を流し始める。この曲は初っ端から歌が始まるので、冒頭の所に4カウントを入れておいた。


 フェリシアの、力強いながらも美しい歌が広がる。うん、何度聞いても上手い。


『!』


『!』


『!』


 動画のほうの画面上がビックリマークで埋め尽くされる。誰も彼もが驚いているようだ。俺も最初に聞いたときはかなり驚いたからな。


 というか本当に上手い。マイクから入ってくる音には特に手を加えていないのだが、それでも引き込まれてしまうような綺麗で力強い声。ロック系のアニソンとかによく合いそうな声だ。


『上手ええええええええええ!!!!!』


『フェリシア様やばすぎ!』


 視聴者の反応も上々。おっと、急激に視聴者数が増え始めたぞ? さっきまで五、六百くらいだったのに気づいたら千を越えている。


 隣に座っていたフィールが、俺の肩をちょんと叩く。


『これみて』


 スケッチブックに書かれた文字を読み、フィールの指差すスマホの画面を見る。どうやら視聴者達のトゥイッターで話題になっているみたいだ。


『新人ヨーチューバーが美少女な上に歌がめちゃくちゃ上手い、マジで見たほうがいい!』


 とこんなような感じのトゥイートがいたるところで出回っているらしい。


 その間にも、どんどんと視聴者数は伸びていく。予想どうり、いや予想以上だ。ここまで伸びるだなんて。


 曲は進み、しっとりとしたCメロを歌うフェリシア。視聴者も聞き入っているようで、コメントの数が一時的に少なくなる。


 ちなみに、こんな夜に歌なんて歌って他の部屋から苦情はこないのか、という疑問があるだろうが、隣の部屋はほぼ空き部屋みたいなものだし、上に住んでるのはあのオタクだ。どうせヘッドフォンをしてネトゲに勤しんでいるだろうし、気にするだけ無駄だ。


 一曲目が終わり、フェリシアが一息つく。となりのフィールが掲げたスケッチブックには、親指を立てたグーという絵が。いや、普通に自分の手でやれよ。お前ただそのテレビっぽいことがやりたいだけだろう。


 その後もフィリシアは歌い続けた。放送枠三十分の中で、全部で四曲。全てアニソンゲームソングの類だ。最後に歌った曲では思わず涙が出そうになった。さすがは国歌と呼ばれるだけはある。







「これからヨーチューバーとしての私の活躍に期待してくれ。チャンネル登録も頼むぞ。それでは次の動画で会おう。さらばだ」


 そう締めくくり、フェリシアの初放送は幕を閉じた。画面には別れを惜しむコメントや、次に期待するコメントが溢れかえっている。最終的な視聴者は五千人近くにまでなった。


「いやお疲れ様フェリちゃん。よかったよー」


「ふう……ちゃんと出来たのかな? 緊張で頭真っ白だったんだけど」


「かなり良かったんじゃないか? ほら、視聴者が五千人近くいるし、コメントもほら」


 手元のスマホをフェリシアに渡し、視聴者からのコメントを見せていく。


『ファンになりました、これからも見ます!』


『フェリシア様美しい、次も楽しみ』


『魔王様の臣民になります』


 早くも信者の獲得に成功しているようだ。


 コメントを見てほっとしたのか、フェリシアがふう、と一息つく。


「こうやって反応が直に見れるのはいいわね。この五千人って数字はそんなに凄いのかしら?」


「確かに、俺もこういうのには詳しくないからよく分からないんだが……フィール、これってそんなに凄いの?」


「凄いよ。この間ソーイチローの本を紹介してた番組があったでしょ?」


 ああ、出版社の公式生放送か。まあ俺の本はアニメ化する作品のコーナーの前のちょっとした紹介だけだったけどな。


「あの放送でソーイチローの本が紹介されてた時の視聴者数が五百人くらいだったから、フェリちゃんの人気はソーイチローの十倍って事だね」


「おいやめろ。それは俺に失礼だ」


「ちなみに他の本の時は千人くらい見てたし、アニメ化作品のコーナーだと一万人くらい居たね」


 やめろ! 俺だって頑張ってるんだから!


 そんなフィールのフェリシアが凄いのか俺がしょぼいのか分からない比較を聞いて居ると、自分の役目が終わった事を悟ったアズが、変形を解いてこちらへと近づいてきた。


「アズもありがとね。お疲れ様」


 珍しくフェリシアがアズの事を抱え上げて撫で回している。アズはといえばフェリシアの腕の中は納まりが悪いのか、直ぐに逃げ出そうとしてるな。まあ確かにあの胸があるからな。


 まあともかく、こんな感じでフェリシアのヨーチューバーデビューは大成功と言っていい結果になった。


 この後も度々動画を投稿し、そこそこの稼ぎになっていく。まあそのほとんどを課金にまわしていく事になるんだけど。


 ちなみに、フェリシアのファンは臣民と呼ばれる事になったらしい。星の数ほど居る視聴者の中でも臣民は圧倒的な民度を誇り、動画が荒れる事など一度も無い。これもフェリシアのカリスマ性の成せる業だろうか。







 初放送の翌日、俺はスマホを開いて驚愕した。普段全く反応の無いトゥイッターの通知が驚くほど来ていたからだ。驚いている間にもぴこんぴこんと通知が鳴り止まない。


 おそるおそる開いてみると、俺のアカウントが大炎上していた。どうやらどこからか俺がフェリシアと一緒に居た事が漏れたようだ。


『魔王様とどういう関係なんだ!』


 などはまだ可愛らしいもので、他にも罵詈雑言が溢れかえっていた。どうやら臣民の民度は俺に対しては保たれていなかったらしい。


 俺はため息をつくと、そっとトゥイッターの通知をオフにした。

ここまでご覧頂きまことに感謝です。


次回は台風の話。その後はみんなで魔界に行く話になります。魔界編は三話くらい続きそうです。


次回「六畳間と台風」


台風が来ると偏頭痛が来るのでニュースを見るまでも無く分かる。

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