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※ドール×ドール

作者: 悠羅/秋冬

 どうも悠羅です。


 最初はほのぼのと読めると思いますが救いはありません。

 鬱展開OKの方以外は見ない方がいいかもしれません。

 ボクと実紗(ミサ)はずっと一緒だった……。

 実紗はいつもボクに語りかけて、楽しそうに笑っていた。

 実紗が笑いかけてくれる度にボクは暖かい気持ちになる。

 一緒にいるだけで幸せだった。

 こんな日々が、ずっと続くと思っていた……。

 なんの前触れもなく変化は訪れる。



「明日からワタシ学校にいくの! 友達ができたら君にも紹介してあげるね?」


 ボクには【がっこう】と言うのが判らなかったけど実紗が楽しそうだからとても良いものなんだろうと思った。

 実紗が学校に通いだし、ボクと一緒にいる時間が減った。

 それでも帰ってくるとボクに話しかけてくれて、楽しそうに笑う。

 実紗がいない時間は退屈でつまらないけど、実紗が楽しいならそれでいいや……。

 学校であった事をボクに語る実紗は花のように笑う。

 それを見るだけでボクは満たされた……。



 ある日、実紗は友達を連れてきた。

 実紗は約束通りボクを友達に紹介してくれた。

 友達の名前はナオと言うらしい。

 ナオと楽しそうに笑い合う実紗を見て……、思う。


『ボクと居る時より楽しいのかな……?』


 少し複雑な気持ちになった。

 それでも実紗が笑っているならボクも嬉しい。



 実紗がナオと遊ぶようになってしばらくたった。

 実紗は最近ボクにあまり構ってくれない……。

 朝は『おはよう』夜は『おやすみ』っていってくれるけど……、それ以外はほとんど話し掛けてくれなかった……。

 仕方ないのかもしれない……。実紗が喋りかけてくれてもボクは答えることができないから……。


『やっぱり、話を返してくれる友達の方が一緒にいて楽しいよね……。』



 ある日、実紗は帰ってこなかった……。

 ナオの家にお泊まりするんだって教えてくれたけど……。

 

『寂しいな…………』


 ボクは実紗 がいないベッドを見て悲しくなった……。



 ある日、泣きながら部屋に入ってくる実紗……。


『何で泣いてるの? ナオと喧嘩でもしたの……?』


 実紗は泣くばかりでなにも教えてくれない。

 実紗が教えてくれないとボクは何もわからない……。

 実紗が泣くとボクも悲しい…………。

 

 後から解ったことだけどナオが【てんこう】したらしい。

 よくわからないけどもう会えないんだって。



 ある日、実紗が学校から帰ってくると、すぐにカバンを放り投げてベットに(うずくま)り、声を殺して泣いていた。

 カバンは傷だらけだった。


 その日から実紗は、あまり笑わなくなった。

 学校にだんだんいかなくなって時折ベットで踞り泣くようになった……。

 心配で心配でたまらないけれどボクには何もできない……。

 ボクは()()だから……、喋れない。

 動くことも、ましてや笑うこともできない……。

 

 歯痒かった。

 悔しかった。

 ボクが喋れたら『大丈夫?』って声をかけるのに……。

 ボクが動けたら涙を拭ってあげるのに……。


『実紗の力になりたい!!』


 泣きつかれて眠ってしまった実紗を見てボクは強くそう思った。



 笑わなくなった実紗はやがて……、全く学校に行かなくなった……。

 実紗は部屋でずっと虚空を見つめて、喋らない。

 動かない、……笑わない。


『実紗は人形になってしまった。』


 ーーそう思った。

 ボクは悔しくて……やるせなくて……涙なんか出るはずないのに、泣きたくなった……。



 ある日、実紗のお父さんがボクを実紗の枕元に置いてくれた。

 久しぶりに近くでみた実紗は明らかに痩せていた。

 眠っているようで時折寝返りをうっている。

 そんな実紗を見ると眠るときだけ人間らしいなって思った。

 

 夢の中の実紗は今もボクに笑いかけてくれてるのかな? 

 そう考えると、少しだけ夢の中のボクに嫉妬する。

 実紗の夢にはいれたらいいのに……。

 願わずにはいられなかった。

 


 ****



 気づくとボクは知らない場所で目覚めた。


「ここは……?」


 声が出ることに驚き、体が動くことでさらに驚く。


「まさか……! ここは実紗の……!!」


 ここは実紗の夢の中なのだろうとボクは思った。


「なら、探さなきゃ……、実紗を!」


 どこまで言っても真っ白な空間で、ボクは走る……走る……走る。


 「実紗がいない……!」


 足が痛くて重い。それでもボクは走る。


 「どこにいるの……? 実紗!!」


 足が絡まりこけても、這いずる……。


 「ーーーーっ!実紗!!」


 とうとう力尽き、動けなくなったボクは泣き叫んだ。

 疲れはてて、目を閉じようとした時、ポケットの中に何かが入っているのに気づいた。


 


 ーーそこに入っていたのは実紗によく似た人形だった。


「これが……、実紗……? 何で……!」


 これが実紗なら何て残酷なんだろう。

 夢の中なら実紗は笑ってると思ってた。

 幸せな夢を見てると信じていた。

 ボクの浅はかな願望でしかなかったなんて……!


 ボクは実紗に話しかける。でも実紗は何も答えてはくれない……。

 人形は喋らない。

 動かない。

 ーー笑わない!

 ボクは絶望した……。


 

 それからどれぐらいたっただろう?

 ボクは人形になった実紗を見ていられなくて背を向けている。

 でも離れることも恐くてできなかった。

 ボクがここから逃げ出せば実紗はひとりぼっち。


 ボクは実紗と一緒にいようって約束したんだ。

 それだけは守りたい……。

 

 なにもする気はおきなくてずっと虚空を見つめてる。

 たまに実紗の笑顔が頭をよぎる。

 実紗の笑顔をみるだけで満たされてたはずなのに、今のボクは満たされない……。

 胸がズキズキと痛い。

 苦しくて、苦しくて、どうしようもないくらい苦しくて、ボクは考えることもやめてしまった。



 そこに残ったのは人形になった人間と、人間になった人形……。

 喋らず、動かず、笑わない。

 どんなに近くにいても交わることはない……。

 

 毎度のことですが短くてすみません。

 人形目線なので説明不足気味です。

 

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