メロン農家とメロン泥棒
カオスなのを要望されたので書いてみた(笑)
ここは北海道の夕張市。
あの有名な夕張メロンの産地である。
その町に一人の男がやって来たことからこの話は始まる…
「ここはメロンが名物なのか…やし、盗るか!」
住所不定無職という勇者と同意の称号を持つこの男は、世界を旅しながら食料を自給自足で取るではなく盗る事で生き長らえていた。
今回のターゲットに選ばれたのはメロン農家『二宮』さんであった。
深夜、男はビニールハウスの中へ侵入していた。
都心と違い近所付き合いの多い田舎では家なんかも鍵がかけられておらずこうやって易々と侵入を許してしまうケースが多いのである。
「ふぅ、やっぱ田舎は楽だわ。さて、それじゃ早速…いただきまーす!」
堂々と深夜のビニールハウスの中で取れ立てのメロンをナイフで切って食べる男。
だが果物というのは基本的に腐りかけが一番美味しいとも言われるように熟しきってない状態ではそれほど美味しくないのである。
それを知らない男は甘さの足りない、まるで甘めのキュウリの様な味に首を傾げながらも空腹を満たすために丸々一個を平らげた。
「ちっ外れかよ…こんな物メロンって言わねぇよ」
しっかり食べておいて酷い言いぐさである。
そして、男は不味かった不満をぶつけるためにビニールハウスの入り口に書かれた看板に目をやった。
「こんな偽物のメロンはこうだ!」
そう言って男は油性マジックで看板に書き足した。
翌日、泥棒に入られたのはバレなかった。
ただ悪戯で看板に『夕張メロン』と書かれていたのが『夕張ヌロン』にされていた。
怒った二宮さん、だが誰の仕業か分からないしこの程度で騒ぐのも馬鹿馬鹿しいと看板を上から塗り直して今度は『夕張めろん』とひらがなで書き直しておいた。
その夜…
男の姿がそこにあった。
「ちっまさか収穫前のメロンを食っちまったとはな、俺としたことが失敗だったぜ」
そう言いながら昨夜と同じビニールハウスの中へ入った。
一応周囲の確認もしっかりとしているが男は知っている。
こういう田舎では防犯には大体三日掛かると言うことを。
「さてさて、おっこっちの列は大きい上に甘い香りが漂ってるな!」
男は適当に一つメロンをナイフで切ってかぶりついた。
「ををっ?!うめぇ!!」
昨夜とは全く違う美味しさに男は贅沢にもメロンを取り巻くって一口ずつ食べて捨てていった。
メロンの食べ比べなんて贅沢な事を満足するまで行った男は満足気にビニールハウスから出る。
フト目をやると昨日書き足した看板が直されていたので今日のお礼にと再びマジックを手にするのであった。
「な、なんじゃこりゃ!?」
翌朝、二宮さんはビニールハウスの中の出荷間近のメロンが食い荒らされていることに気が付いた。
しかもどれも一口食べては捨てるという酷い事がされており二宮さんは他の場所も確認した。
「これは…もしかして一昨日も入られていたのか?」
そこには皮だけとなったメロンの皮が捨てられていた。
そして、二宮さんが片付けを終えてビニールハウスから出た時である…
「なん…だと…」
そこには昨日書き直した看板『夕張めろん』がやはり『夕張ぬろん』に書き足されていた。
怒り狂った二宮さんはビニールハウスの入り口に看板を新たに設置した。
その夜、男は三度やって来た。
今日でこの町からおさらばするのでお土産として何個か拝借するために来たのだ。
そして、ビニールハウスの前に書かれた看板に目が止まった。
男は舌打ちしながらも懐からマジックを取りだし再度書き込むのであった。
そして、翌朝。
二宮さんの絶望した姿がそこにあった。
昨日自分が書いた看板『何個か毒入りです』に続くように『キャンペーン期間中で更に数個おまけしてあります』と書かれていたのだ。
もし出荷したメロンに毒が入っていたら…
二宮さんはいよいよ警察に相談し、その日の夜から大規模な張り込み捜査が行われることになったのであった…
「おっここが海鮮物で有名な小樽か!よし、今日からは魚介類を盗って食べるかぁ~♪」
男はその頃、夕張から100キロ離れた小樽市に居るのであった。
終
メロン食べたいなぁ~