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魔王の母性

ちなみに中編小説です。

 最初はいつもの密偵かと思った。

 人族領から魔族領に人が入って来るのを探知した。

 偶に密偵がこちら側に入って来るのでまたかと思って調べたのが彼女の事を知ったキッカケか。

 こちらを敵対視する国から放たれた密偵を放置するわけにもいかずいつものように監視魔法で調べるとそこに映ったのは赤子といっても差し支えない人族の娘であった。

 その赤子はふらふらになりながら扱いの難しい重力魔法で移動しており、魔力が消えればこれまた扱いに難しい転移でどこかに消えていった。

 そしてしばらくすればまた消えたところに現れて移動を開始する。

 その繰り返しだった。

 どう考えてもただ事じゃない。

 赤子を回収しようかと思ったが、慎重の部下が罠かもしれないというので、ひとまず様子を見ることにした。

 赤子は雨の日も風の日も休まずに現れては移動をする。

 そんな様子を見ていればどうしても心を打たれてしまう。

 しかし、部下の意見もあり万が一のため直接接触はできず、かといって何もしないなんてことはもっとできなかった。

 私はなぜ赤子がこんなことをするのか、本当に罠なのか気になり、転移後の様子も見ることにした。

 そして驚くべきことを知った。

 赤子の父親は数年前に召喚されたという勇者であるということ。

 その勇者は端的に言ってキチガイである事。

 赤子と、赤子の妹たちに洗脳染みた教育をしていること。


 おそらく赤子はこの状況がおかしいことが分かっているのだろう。

 そして何とかしようとしているのだろう。

 赤子が進んでいる方角を考えると向かっているところは私の所か。

 キチガイとはいえ、勇者に対抗できるであろう人物。

 つまり、魔王である私を頼ろうとしているのだろう。

 私に会ったこともないのに。

 私の存在は悪だと言われているのに。

 一縷の望みにかけて。


 その考えに至ったとき、私になんとも言えない感情が芽生えた。

 なんとかこの子を守りたい。

 なんとかこの子を助けたい。

 この子を見ているととても切なく愛おしい。

 或いは母性といえる感情なのかもしれない。


 そして私は思った。

 よし、この子を私の娘にしよう!!


 そう思って早速我が子にするために迎えに行こうと思ったがまたもや部下に止められた。

 この子を見てなんとも思わないのか!!

 と激怒しそうになったが、部下の言い分を聞いて冷静になった。

 部下が言ううには私の子。

 つまり魔王の子と周囲から見られるには強さが必要だという。

 そんなものなくったって私は一向にかまわないのだが、周りの意見を聞くのも王の務めか。

 まあ、ホイホイ気に入った者を養子にはできないしな。


 結果、あの子がここに来るまで見守ることになった。

 そうすれば赤子ながら人族領からこの城まで来たという強さの証明になるし、何より感動的なので受け入れられるという。

 そんなお涙頂戴のために苦しんでいるであろうあの子を放置するなんてと思うが、あの子は人族。

 我ら魔族の敵対者だ。

 しかも勇者の娘。

 それくらいでなければ周囲から受け入れてもらえないかもしれない。


 様々な葛藤はあったが、部下の提案を受け入れた。

 ただ、せめてもの手助けとして、あの子が通る道には雨も風も魔物もないようにした。

 あとは見守るだけだ。

 だから頑張ってくれ。


 そうしてついに、あの子は私の元までたどり着いた。

 今にも倒れそうなまま、しかししっかりとした目で私を見据える。

 本当に強い子だ。

 私は味方だと抱きしめる。

 ああ、ずっとこうしたかった。

 今までごめんな。

 これからはお前は一人じゃないぞ。

 そしてこの子はそのまま気絶した。

 慌てたが、外傷もないし魔力切れと気が緩んだからだろう。

 この子のために作っておいた部屋に寝かせた。


 さて、これからどうするか。

 とりあえず、あの子を私の子としなければ。










魔王のイメージとしては凛とした格好いい系の超絶美女。

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