魔王様助けてください
チーレムと言うのをご存じだろうか?
チートでハーレムの事を略してチーレムと言います。
つまり、チート染みた能力を持ってハーレムを築いているということです。
私の父はそんなチーレムな勇者です。
魔王を倒すために地球から勇者として召喚され、紆余曲折あって母たちと結ばれ、魔王を倒してこの世界に平和をもたらそうとしている高潔なる素晴らしい人。
それが私のお父様です。
私はお母様たちにそう教わりました。
そしてそんな勇者を父に持つ私たち娘の役割はお父様を愛し、戦いに疲れた心と体を癒すことです。
とまあ、こんな感じに日々洗脳染みた教育を受けているけれど、はっきり言って私の父親はキチガイである。
それはそれはキチガイです。
なにがあったらあんな風になるのかわからないくらいにキチガイです。
先ほど言った通り父は地球で生まれ、異世界に召喚されたチーレム勇者です。
文字通りチート染みた能力と頭のおかしいハーレムを築いているのよね。
えーと確か、父を召喚した王女様に、侍女に女騎士に女魔導士、奴隷、密偵、令嬢、町娘、村娘、エルフ、獣人、竜人、人妻、幼女etc。
とまあ、私も正確に把握していませんが、多岐に渡る美女、美少女を嫁としている。
そう、人妻や幼女までも。
勇者の力で無理やり奪ったり洗脳したり魅了したりと、様々な下種な手段で父はハーレムを築いている。
婚約者のいる女性を洗脳して、婚約者の目の前で犯したという話を嬉々としてされたことがあった。
その、犯されたはずのお母様となった人に。
真実の愛に目覚めたといっていましたね。
他にも、初潮も迎えていない幼女も無理やり犯したという話も聞かされた。
もちろんその方も今や父のチーレムの一員ね。
嬉しそうにパパ、パパと呼んでいるのを見かけたことがあるわ。
とまあ、紹介したのはほんの一部ですが、こんな風に狂気じみたチーレムを父は築いている。
これをキチガイと言わずして何と言うのだろうか。
そして私は不幸にもそんなキチガイの娘として生まれてしまった。
私には姉妹がたくさんいる。
まあ、やることあれだけやっていればたくさん子供が出来きわよね。
しかし、兄弟は誰一人として。
いえ、正確にはどこかへ行きました。
私の暮らすお城にはいない。
男はいらないそうです。
さて、娘だけは城に住まわせて、父が至上の人物であると教育されている私たちだけど、まあ、父が何をやりたいのかはわかる。
光源氏計画といったところかな。
幼女を犯すくらいのキチガイだもの。
実の娘であっても年齢達したならば伽の相手をさせられるでしょうね。
戦いで疲れた父の心と体を癒すために。
それが私たち娘の役割なのだから。
・・・・・・ふざけるな!!
私たちは人間だ!!
性玩具じゃない!!
子供にとっては親が全て。
何も知らない私たちを洗脳教育をするなんて。
私も当然お断りだし、私の可愛い妹たちに絶対にそんなことはさせない。
何も知らないこの子たちは私が守る!!
それがあのキチガイの長女にして転生者である私の使命よ!!
ステラもとい、神薙美琴、生後数ヶ月。
私は決意した。
あのキチガイから妹たちを守ると。
ー▽ー
とは言っても、赤ん坊にできることなんて考えるくらいしかない。
あのキチガイを殺す?
相手は腐ってもチーレム勇者。
しかも私は赤子。
無理ね。
しかし、わずかでも可能性があることを信じて鍛えることはしておかなければ。
私が転生者であることを打ち明けてやめるように言う?
相手はキチガイだ。
話が通じるようならばこんな状況にはなっていないはず。
母親に頼る?
もはや寝言ね。
母親すべてキチガイの信者。
完全に魅了されていて盲目だ。
絶対に悪い結果が目に見えているわ。
しかしこちらは現在赤子。
誰かに頼るしかないのかもしれない。
魔王に頼る。
・・・意外とありかもしれないわね。
キチガイの偉大さと魔王の愚かさは耳にたこができるくらい言い聞かされている。
聞けばそれはそれは魔王は極悪非道な存在らしいけど。
しかし、しょせんはあの母親たちが私たちに言い聞かせている話。
案外まともな人物なのかもしれない。
それでなくとも敵の敵は味方かもしれない。
ふむ、ありかもね。
しかし、問題が山積みね。
キチガイはハーレムの拡大と魔王討伐の準備にいそしんでいる。
魔王退治の旅に出るまでまだまだ時間がかかるでしょう。
それは高都合なのだけど、問題は時間。
こちらは成長するまでにキチガイを何とかしないといけないわね。
いえ、それでは遅すぎかも。
妹たちが洗脳される前に何とかしないといけないし。
それに魔王の居城とされる場所はとてもとても遠い。
何より私は赤子。
それでも、私のために。
何より妹たちのために何が何でも魔王の元にたどり着かなければ。
ー▽ー
「ぜい、ぜい、ぜい。あ、あにゃたが魔王?」
息が切れて今にも倒れそう。
でも気力を振り絞って回らない魔王に話しかける。
ここ1年で私がしたことは魔法の習得と移動だ。
ただの移動じゃない。
空間魔法による転移による移動と重力魔法による空中移動。
適正があったのか私は転移と重力操作を習得することが出来た。
それから見つからないように城を抜けだして拙い重力魔法で空中を飛び、魔力が切れる寸前で転移で城に戻る。
これを繰り返した。
魔力を酷使して倒れ、回復しては倒れを繰り返し。
魔物にも何度も追いかけられた。
それでもめげずにひたすら私を移動を繰り返した。
そして、ついに魔王城までたどりついた。
何故かそのまま魔王のいるところに連れられたけれど、話ができるならいいと、魔力切れでふらつく体に鞭を打ってこうして魔王に出会った。
そこで出会った魔王は話に聞いていた姿と違い、とてもきれいな人だった。
「いかにも。私が魔王だ。それで、小さな勇者よ。私になんの用かな?」
勇者とかあんな奴と一緒にされたくないけれど、今はそんなことはどうでもいい。
「魔王、魔王様。お願い。私たちを、妹たちを助けてください。」
私が魔王にすること。
それは懇願だった。
「わかった」
「え? 今なんて」
「だから、わかったと言っておろう。私はお前を助ける。お前は私の手を借りに来たのだろう?」
「そう、だけど。なんで?」
たった今初めて会ったばかりの、しかも勇者の娘の願いをなんで聞く?
「お前がこの魔族領に入ってからずっと私たちはお前を見ていた」
聞けば、私たちの国とこの国の境目には結界が張り巡らされており、こっちに誰かが入ればわかるようになっているのだとか。
「本当はすぐにお前の元に行きたかったのだがな、何分お前は人族領からの侵入者。どんな目的があるのかもわからない。だからずっと様子見をするしかなかったのだ。すまない」
「や、違う。そうじゃなくて、なんで」
見ていたとしてもなんで私を助けてくれるの?
「だから、見ていたといっただろうずっと。お前がどんな場所でどんな生活をしているのかも知っている」
え、じゃあ、あの勇者という名のキチガイも、あの環境知っているってこと?
「本当はすぐに助け出したかったのだがな。訳あって、お前がここに来るまで見守らせてもらった」
「じゃ、じゃあ」
「ああ、今までよく頑張ったな。これからは私はお前の味方だ」
魔王が私の味方。
やった、ついに。
「あ、あ、ありがとう、ございます」
涙が止まらなかった。
まだ問題が解決したわけではない。
それでも魔王が味方になってくれると言った。
こんなにうれしいことはない。
「さあ、今日はもう休め」
「あ、でも、城に帰らないと」
「大丈夫だ、すでにダミーを配置している。一日くらいならばバレはしないだろう」
あ、もう大丈夫なんだ。
そう思うと私は気が緩んだのか気絶した。
課題が迫っているため、現実逃避に書いたんだけど、なんで現実逃避の時に筆が進まんだろうね。