実家からは登校が不便そうです
いつまで続くかプロットすら無い状態で、試しに書いてます。
子供の頃からこの手の妄想ばかりはよくしていたんで、
日々のジョギング中にネタを考えつつ書いていきます。
突然だが家には電気が無い。いや、電気だけではなくガスや水道も通ってない。
別に支払えないから止められている、とかじゃないく必要が無いからだ。
それほど不便には感じない。
夜になれば各普通にあるキャンドルで部屋は明るくなるし、炊事は母が普通に「かまど」に火をつけて料理を作っていたし、水瓶にはいつもそのまま飲める水がいっぱい溜まっていたんで、煮炊き物から洗い物までその水を使っていた。
小さかった頃の自分には、これらはごく普通で今も変わらない光景だ。
俺が住んでいるこの町はとても不便だ。
特に俺の住んでいる家がある場所は特殊だと言える。
町までの距離があるうえに、家の周囲は山に囲まれていて、目の前には大きな池もある。池というよりは小さめの湖だろうか?
周囲には他に住んでいる人は居なく、家一軒すら立っていない。
当然、俺には親しい友達が居ない訳だ。
そんな辺鄙な場所に異変だ起こったのは、俺が小学1年生になり、入学式を迎えた時だ。
それまでバスは走っておらず、俺の小学生入学を機に新たに1路線が新設され運行された。
そしてこの通学という名のバスによる小旅行気分は、帰りはともかくとして行きは貸切状態で走っている。
今現在は俺が新たに入学した中学校の前にあるバス停に向かっている。
以前、というか先月まで通っていた小学校のあるバス停の1つ先に、目的地の中学校はある。
丁度、小学校前の停留所を通り過ぎた。もう暫くは、のんびりバスに揺られていよう。
さて、そんな不便でご近所さんも無い辺境地で距離のある我が家から、そうそう簡単には「友達の家」へ遊びに行く事など滅多に起こらなかったし誘われもしなかった。
所謂「お家の事情」という共通認識の元に、クラスの中の俺はごく自然に付き合いの悪いクラスの1人になっていった。
そんな俺に気を使ってか、家へ遊びに誘ってくれた子が居た。
最初は遠い事を理由に断っていたのだが・・・
「大丈夫、小学校まで来てくれたら迎えに行くからっ!」
周りのクラスメイト達はきっと断られるに決まってる、という空気だった。
それに思う所があったのかどうか、今となっては覚えていない。
何とはなく少し考えたふりをしたうえで俺の返答は「親の許可が貰えたら」だった。
「じゃあ、許可が貰えたかどうか明日教えてね!」
笑顔でそう言ってくれたあの子は、そそくさとその場を離れて行った。
周りのクラスメイト達、とりわけ女子の連中は心配半分、興味半分という感じだった。
当の俺はというと、この提案についてどう両親に話すべきかと悩んだものだ。
数日後、心配する両親から許可を得て、ついでに小学校前の近くまで送ってもらった。
一般的にはあり得ない方法で。
この手段は滅多に使わない。
「万が一、他人の目に留まれば後々面倒になるからね。」とは両親の言葉だ。
今日は初めて友達の家へ遊びに行くので特別らしい。
それに土日はバスが走っていない。
「しっかりつかまってろよ、では出発ーっ!」
当時は頼もしい父の掛け声と共に家を出た。
あの時見た外の景色は、今も良い思い出の1つだ。
俺もいつか、あんな風に出来るといいんだけどなぁ。
小学校から少し離れた場所へ着くと、俺は送ってくれた父に「ありがとう、行ってきます!」と言って学校へ向けてかけて行った。
迎えに来る時間は予め決めてあったので、それまではゆっくり遊べる。
無事、学校前にて約束したクラスメイトを見つけるとその子の家へと向かった。
ごく普通の戸建て住宅。
そんな家の中には、これまでに見た事も無いいろんな物事が存在した。
あまりに珍しくて、あれこれ質問しまくっていた。
事前に両親から言われていたとはいえ、やはり実物を見るとついついいろいろと聞きたくなるのは子供だからしょうがない。
それはもう、クラスメイトが俺の質問に答えること自体が面倒に感じるくらいに。
スイッチを押すだけの照明、ひねるだけで水が出てくる蛇口、食べ物や飲み物を常に冷やしている冷蔵庫。
何もかもが珍しくて使い方も解らない謎のアイテム群だらけの家。
今となってはその時、何をして遊んでいたのかさえ覚えていない。
ただ覚えているのは玄関から出ていく時「今日はありがとう、またね。」と俺が言った言葉を特に嬉しくも無く普通に「またね。」と返してきたあの子の顔だった。
「次は、中学交前。中学交前です。」
バスの自動アナウンスが車内に響いてたのを聞き、俺は意識を戻した。
別に押さなくても運転手は俺が降りる事を知ってるはず・・・あぁ、今日から中学生だった。
正確には、昨日の入学式からだ。
「ピンポーン。次、降ります。」
これで問題無くバス停に留まってくれるだろう。
そういえば自分とクラスメイトとの無意識の壁の様なものを感じ始めたのは、この日の翌日からだったかもしれない。
俺を家へと誘ってくれたクラスメイトは、翌日の教室内でみんなから当然「どうだったか?」との質問攻めにされていた。
まだ教室の外に居た俺は、中からその声のやり取りを聞いてしまっていた。
「なんだかね、・・・うちの家の中が、すごく珍しかったみたい。たくさんいろいろと聞かれたよ。」
他のクラスメイト達は、その子の家へよく遊びに行っていたんだろう。
口々に「どこが珍しいんだよ?」とか「全然普通だよねー?」と声を上げていたのを覚えている。
そして最後には「あいつの方が、よっぽど変だってのな。」という事で結論が出たらしい。
そして俺の小学校生活は、とても静かなものになっていった。
時々、俺を誘ってくれた子が何かを言いたそうにこちらを見ていた気もするが、ついに何も言われる事も無いまま卒業した。
「中学校前ですー、お降りのお客様はバスが止まるまで席でお待ちください。」
停車前のアナウンスが車内に流れる。
降りる準備をしないとなぁ、と思い頭の中のモヤモヤを振り払う。
開いたまま手に持っていた本を閉じカバンへ入れる。
表紙を見ても何の本かは解らない、外に持ち出すのは今日が初めての大事な本。
俺はバスの降車口へと歩き出す。
こうして俺は中学生生活の1日を始めるのだった。
他人にとっては普通の、俺にとっては不便な生活の始まりだ。
2日間で書いてみたんですが、舞台を中学校でなく高校でもよかったかなぁ?
と反省したり・・・。
まぁ初めてなので自由に書いてみます。
自分の低いスペックで、どこまで続くやらですが。