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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

死刑王はギロチンが好き

作者: 古時計屋

 今、なぜ私が彼について語るのかといえば、それはもう語ってもいい頃合いになったのではないかと思うからだ。死刑王、ほとんどの民衆に本名すら知られずにそう呼ばれた彼との出会いと別れ。それは私の人生にとって大きな起伏だ。思い返せば、困った事に笑い声が漏れる。出来れば気味悪がらないで聞いて欲しい。

 彼は間違いなく狂人であった。その認識は正しい。だが、それでいて彼は真摯であり、神学者であり、哲学者であった。今だから言うがね、私は彼を敬愛しているんだよ。狐につままれたような顔は止めて欲しい。これでも真剣に語っているのだ。

 さて、悪名高き死刑王閣下。どこから話すべきか……最初は、そうだな――



【1】



 彼に出会ったのはまだこの国が独裁国家と呼ばれていた頃だ。私の所属していた党派が労働党との政権闘争に破れ解党、その後、私の立場も危うくなりキャリアコースから一転、北部にある死刑執行施設での勤務を命じられた。反勢力と見なされ厄介払いされたのである。将来、政策に関われる立場に付くという夢を失った私は荒れていた。酒に溺れ、女に溺れ、怠惰に溺れ人のやる事が許される最低な事をいかにするかに邁進するようになっていた。だからといって、国からの命令に背けば反逆罪が適用され、私の所属してた党の党首のように首を撥ねられる可能性は否定できない。私にはこの僻地の汚れ仕事を拒否することは出来なかったのである。そして、私は死刑執行施設へと送られる事になった。

 あの日は雪が降る夜だった。辺り一面にパウダースノウが積もり、歩けば軽く雪が舞う。口から出る息は白い煙となって、体は寒さに震えていた。

 私は施設の鉄の門にある呼び鈴を鳴らして、開くのを待った。待つ間にマフラーを顔に当たるようにまき直し、手袋を付けた手をポケットに入れて暖を取る。門が開いたのはそれから5分ぐらい後だった。ゆっくりと軋むような音を鳴らしながら開いていく門の先には一人の男が立っている。黒い長髪に蓄えた顎髭、岩のようなごつい顔が印象的で、室内との温度差のせいか鼻が真っ赤になっていた。制服の上に少々値が張りそうな黒いウールのコートを羽織っている。

 男は私を確認して、大きくて手を開いて歓迎した。

「ようこそ、ヨハン。我が城、我が砦へ。我輩は君を歓迎する。」

 そういって、私を顎髭の男は抱きしめる。髭が私の頬に当り痛い。

「自己紹介は省略するぞ。お互い資料でもう顔も名前を知っている身だからな。まずは案内をしよう。付いてきたまえ。」

 そう言って抱きしめるのをやめて、顎髭の男は門の中へと歩き出す。門を通り抜けた中にあるのは台形状の大きな建物と、小さな小屋が1つ。およそ美術的なセンスがあるとはいえない建築物で、どこか機械的で無感情さを感じさせられた。

 顎髭の男は台形の建物の中に向かう途中で何か思い出したように立ち止まった。

「そうだ、ヨハン、君に言い忘れていた事があった。」

 背中越しに顎髭の男が語る。

「なんでしょうか。」

 尋ねる私に男は笑う。

「ここでは我輩を本名ではなく死刑王と呼ばせる事にしている。君も我輩のことを名前ではなく死刑王と呼びたまえ。」

「それは命令という事でしょうか?」

「そうとって貰って構わない。はは、そう怖じ気づくな、別に君がここで死ぬわけじゃない。」

 死刑王は、そう物騒な自称とは裏腹に豪快に笑い私の背を叩いた。

 いくら死刑執行を行う施設の管理をやっているとはいえ、あまりに悪趣味な自称ではないかと思ったものだ。しかし、ここから出ればもう行くところのない私は従うしかなかった。

 最初に案内されたのは私の住む部屋だ。死刑王はそこで先に荷物を置いてくるように指示を出した。私はそれに従い、荷物を置き死刑王に案内されるがままに付いてく。死刑王は応接間と書かれた部屋の前で止まり、部屋の扉を開く。部屋の中には大きな机と少し値が張りそうな皮の椅子が4つあった。既に暖が取られていて、部屋に入ると温かい空気が私の体を包んだ。正直な所を言えば、少し暑すぎるくらいだった。私は死刑王に勧められるまま椅子に座り、向かい合うようにして死刑王も座る。

「さて、今日から君はここで勤めてもらうわけだが……ヨハンくん、君はここはどのような場所だか理解しているかね?」

 そう私を見て尋ねる死刑王の表情は柔らかい笑顔を浮かべている。

「はい、事前に指示は受けていましたので……ここは反逆罪で送られてきた犯罪者達の死刑執行場所です。私はあなたの指示に従い、死刑を取り仕切るように言われて来ました。」

 死刑王が感情的に机を叩いた。私は突然のことに驚きぎょっとする。

「違う、それは違うぞ、ヨハン君!いや、70%は正解だが最も大切な30%が抜け落ちている。」

「どういう事でしょうか?」

 指令書に書かれていない仕事もあるのだろうかと戦々恐々とする。

「死刑を取り仕切り、行うのは全て我輩だ。君はその助手でいい。」

「いえ、あなた一人で全て行うのは負担だろうと、私が派遣されてきた訳でして……。」

 死刑王の顔がみるみる真っ赤になっていく。

「負担、負担だと?我輩が死刑を行うのを負担に感じていると君を送り込んできた愚か者共は思っているのかね。呆れ果てた話だ、私ほど死刑を愛している人間はいないというのに、送られてきた罪人の全てを喜々として殺せる傑物、そう思ったから我輩はここを任されたのではなかったのか。ああ、不愉快だ、まったくもって不愉快だ。」

「しかし、私の仕事をあなたにさせたら、私が仕事をしてないと見なされ、今度こそ私は適当な罪を捏造されかねません。」

 冷や汗をかきながら言う私に死刑王は笑う。

「心配はない、今までずっとそうして来たし、それで誰かが国に持っていかれたということもない。そもそも死刑が行われているのであれば国の人間は誰が行ったのかなんて気にはしないのだよ。ここを去る者はな、皆自分から去るのだ。」

 死刑王は軽く肩を叩く。

「さて、歓迎をしよう。君の為に歓迎の宴の用意をしていたのだ。」

 そうして、死刑王が立ち上がった時、部屋の片隅に置かれた電話が鳴った。死刑王は受話器を取る。少しの応答と会話、最後に「了解した。」との了言葉と共に受話器を置く。その後、私の方を見て満面の笑みで語る。

「さて、歓迎の前にどうやら緊急の案件が入ったようだ。明日から仕事に就いて貰おうと思っていたが、喜ぶといい。」

「――といいますと?」

 答えがわかっていながらも私は尋ねる。まだ覚悟はなかった。

「緊急案件での死刑だ。まったく君は運がいい。」

 そう本当に喜ばしい事のように両手を左右に広げていう死刑王に私は顔を引きつらせながら笑って返した。


【2】


 私が死刑執行所に就任した当時、国では毎日のように死刑が執行されていた。強盗、尊属殺人、性犯罪、大量殺人などに限らず、国益に反する事案、つまり国逆罪、反逆罪などといったもののを起こせば即座に死罪が課せられる。この国逆、反逆というカテゴリーは非常に曖昧で担当する裁判官によって毎回その基準が異なる。これは現在の第一党である労民党が自身の邪魔になる反勢力を削ぐ為に作られた罪科といわれており、死刑判決から執行までの手続きの早さは前述の反逆、国逆罪以外の罪より早かった。これは労民党が多党制を形骸化させ実質的に独裁を行っていた事を如実に示す事案であった。

 つまるところ、このような常識的な事柄を並べた上で私が何を言いたいのかといえば、それは緊急案件での死刑という事柄が何を差すのかという事だ。死刑というのは順番が決まっている。判決の決まった順に一人目から二人目へ、二人目から三人目へと移り変わる。死刑には当然スケジューリングがあるのだ。その為、突然死刑が決まり、その死刑がねじ込まれる事など異例である。そしてその異例が示すものはつまり、早く殺さなければならない人物、つまりは国逆、反逆のいずれかの罪に問われたものである。

 私は死刑王と共にトラックに乗ってくるという咎人を待つ間、胸中で悲嘆にくれていた。

死刑王はそんな私を見て一笑する。罪人が到着したとの連絡を受けて、受け取りに私と死刑王は向かった。囚人輸送用のトラックから黒い布を被せられた男が看守と共に降りてくる。死刑王は書類を確認し、サインをした後で看守に向けて「では、あとはこちらで……」と言って丁寧な礼をした。手錠についたロープを引っ張り、力なく抵抗する罪人を無理矢理引っ張る。私は死刑王の顔を見て戦慄する。これから先に行われる死刑を楽しみにする無邪気な子供のような姿がそこにはあった。狂っているというのは私の率直な感想だ。その感想は今となっても大きくは変わりない。

「不安かね?」

 罪人を手錠をつけて歩く私を背に死刑王は尋ねた。

「それはまあ……。」

 緊張のせいか素直な本音が口から出る。それに気づいて慌てて口を塞いだ。

「なるほど、なるほど……。」

興味深そうに頷く死刑王。

「何に頷かれているのですか?」

 思わず聞き返す。死刑王は緩やかな口調で答えた。

「君が今から見るものを必ずその両方の眼を開いてみるがいい。それに君がどう感想を抱くのかはわからないが、きっとそれは真実だ。人は未知と遭遇するときまた新しい地平を開くのだ。いいかね?知らない事を知る事というのはすべからず革新なのだよ。その時に君がどう思おうとね。さあ、処刑場に着いたぞ。」

 死刑王が処刑場の扉を開く。その中心には大きなギロチンが置かれている。直角三角形の刃は天高くつり上げられており、止めヒモを外せばすぐに自由落下によって加速して刃の鋭利さと共に命を切断する大鎌となる。銃とは違い、身を守るため外敵と戦う為などといったモノとは違う、ただ効率的に人を殺すためだけの道具。そのおぞましさに私は畏怖を感じた。

「我輩は様々な死刑を執行してきた。車割き、焼き討ち、水中、串刺し、首つり……しかしね、やはり最も優れた死刑方法は、このギロチンだと思うのだよ。」

 そう両手を掲げギロチンを崇め称えるように言う死刑王。

「このギロチンは特別製でね、刃は東洋の匠のものを使っている。彼らの使う刃は非常に鋭利かつ切断力が高い。多少強度に難があるがね、それでも手入れを怠らなければ殺し損ねる心配がない。」

 そう艶っぽい声で言う死刑王。

「ヨハンくん。我輩は、我輩はね。ギロチンを処刑器具の王だと思っている。この処刑器具には威厳がある。死というものが持つ絶望的なイメージ。その異様をこの大きさとシンプルさが現している。それでいて、この器具は非常に効率的だ。何故ならば、持つヒモを離せば一瞬で絶命させる事が出来る。これだけの威容を誇るというのに人を苦しめない事を考慮している。そして何よりも誰でも簡単に人を殺せる。効率、まったくもって効率的という他ない。素晴らしい、人類は千年以上も人を殺す事を研鑽し効率化し続けた結果、ギロチンを手に入れた。」

 死刑王の高説に受刑者が震えているのを背で感じた。当たり前だろう。自分が死に向かっているというのにこのような話を聞かせられれば、正気ではいられない。暴れ逃げ惑おうとするが、手足に付けられた手錠で上手く走る事が出来ず転んだ。死刑王はそれに回り込むようにして受刑者を見る。

「あれ、あれ、あれ、どうしたのかな?君が向かうべき断頭台はそちらではないよ。」

 布越しに顔を両手で抱えるようにしていう死刑王。私はその光景をただ見ている。見ているだけしか出来なかった。怖かったのだ。ここにいる事、殺す人間、殺される人間、それからその先の全てを予想して、ただ怖かった。

 死刑王は断頭台に受刑者を付ける。

「ヨハンくん、彼が動かないようにセッティングが終わるまで押さえつけてくれたまえ。」

 私はそう言われ、顔が引きつった。この凶行に荷担するという事実に身が震えた。しかし、私に拒否権はない。私は観念して受刑者の体を抑えるように触れる。受刑者の体から感じられる震えが感じられた。少し後、セッティングが完了した事を告げるかのように死刑王は手を離し、スキップする。

「さて、最後に何か言い残す事がないか聞いておこうか……。」

 そういって死刑王は、黒布を剥ぐ。マスクの下で男は布の目隠しと口枷をさせられていた。死刑王は口枷を解いて受刑者へと耳を傾ける。受刑者は鼻息荒く口を開いた。

「俺じゃない!俺は何もしてはいない。労民党が俺が邪魔になったからって罪を捏造したんだ。俺はこんな所に送られるような事は何もしていない。信じてくれ、その日は友人と飲んでただけなんだ。そうして帰ったらいきなり死体が転がっていて……冤罪なんだ。俺は殺されるようなことは何もしていない。」

 その叫びは強烈に私の脳裏に焼き付いている。事実、彼の吐く言葉はありえる話だった。現在の第一党である労民党にはそういった黒い噂は絶えない。急に決まった死刑という事もあり、その発言は説得力を帯びている。

 死刑王は頷くようにして、断頭台の前に回り受刑者の顔を優しく触れ目隠しを取った。受刑者は涙に目元が荒れている。それを落ち着けるかのように微笑む死刑王。

「なるほど、それは悲劇だ。信じる。信じるよ、君の発言はきっと本当にそうなのだろう……。」

「信じてくれるのか?」

 そう恐る恐る尋ねる受刑者。

「信じるとも、死に瀕したものが嘘をつくなどと言う事はありえない。それは例え真意がどうであれ全てが真実だと信じるのが我輩の仕事だと思っている。」

「じゃ、じゃあ、助けてくれ……俺は冤罪なんだ、わかるだろう?この死刑は色々おかしい、あんただってそう思ってる筈だ。ならば助けてくれ。礼はいくらでもする。」

 そう乞うように、願うように言う受刑者。死刑王は同じ笑みで答える。

「それは出来ない、君は今日今から、三刻もたたない内に死ぬ。それは変えられない未来だ。」

 受刑者は目を大きく見開いた。

「冤罪なんだ……俺じゃないって言ってるだろう!」

 痛々しい叫びだった。思わず耳を塞ぎたくなる衝動に駆られるほど……しかし、死刑王は替わらない口調で本当に受刑者を哀れむようにして言う。

「ああ、冤罪なのかもしれない。君がそういうのならば、我輩個人は信じるよ。だが、ここにいる我輩は個人ではなく公人なのだよ。処刑人として君の前に立っている。我輩はね、裁判官ではなく処刑人なのだ。君が我輩に言った事は、間違いなく我輩の胸を撃った。だが、裁判で訴えるべき事だ。我輩は結果でしかない。決まってしまった結果はもう変えられない。ああ、我輩は悲しい。君に心の底から同情する。しかし君はここで死ぬ。」

「裁判だって……あんな裁判の体すらなしていないものが何だって言うんだ!」

「それは我輩のあずかり知るところではないのだよ。」

 死刑王は開いた口にまた布を噛ませて喋るのを遮る。ふごふごと何かを言うのを気にもとめず死刑王はギロチンの刃をつり上げているヒモの留め具を外し手に持った。死刑王の顔を見ると心なしか紅潮していて興奮しているように見えた。

「悲しい君よ、せめて父の元では健やかに暮らせ。君が本当に無実の者であるならば、きっと天は君を迎えてくれるだろう。」

 ふごふごと蠢く受刑者を見て死刑王は笑う。

「では、斬首である。」

 そういって手にもったロープを放した。手から離れたロープは吸い込まれるように天に昇っていく。それと同時につり上げられた刃が自由落下によって加速する。私は思わず目を背けた。ぼとりと生々しい何かが転がる音。その後に死刑王の笑い声が響いた。


【3】


「今日の食事はね、南部にひいきにしている小さな村落があってね、そこで育てている豚が非常に美味しいのだ。今回はそれを我輩自らソテーにした。軽くラードを落として外面をパリっとする程度に焼くとこの肉は肉汁が溢れ上手い。少し癖を付けるのにバジルソースを添えてみたのだが、どうだね?中々の自信作なのだが……。」

 そう死刑王は食卓に向かい合わせになって尋ねる。首からナプキンを提げて、既に皿のポークソテーは半分平らげている。反面、私はまるで食指がわかず皿に盛られた肉に手を付けてすらいない。

「豚は苦手かね?」

 心配するようにして死刑王は私に尋ねた。

「いえ、そういう訳ではないのですが、なんというかあのようなモノを見たせいか、食欲がわかなくて……。」

 死体の片付けをする際に何度もバケツに反吐を吐いた。死刑王の鼻歌を背に作業するのはなんとも気が狂いそうな思いだった。既に物言わぬ有機物の塊と化した死者の目は見開いていた。その瞳が私を見るようにしていう。お前のやった事は本当に正しいのかと……目の前で殺された人間は本当に無実の人間だったのではないかと……。

「ははは、なるほど……。じきに慣れる。さあ、それでも食べたまえ。」

 そう薦める死刑王に私は面食らって言う。

「どうしても食べないとダメですか?」

「そうだ。君はこれから毎日のように今回のような仕事をしてもらう。そのたびに食事が出来ないといわれると困るのだよ。これは君が仕事をする上での義務だと思ってくれたまえ。」

 そういわれ私はぐっと息を吞んだ。少し悩んだ後、ナイフとフォークを持ってソテーに刃を入れる。

「それにこれは君の仕事への報酬だ。君は我輩の仕事の助手をした結果得たものだ。じっくり噛み締めてくれたまえ。」

 私は口に入れた肉を噛み締めた。本当は肉のうま味に対して、それを引き立てる薫り高いソースが味覚をほどよく刺激するのだろう。しかし、今の私の舌は味というものを感じない。それどころか喉からこみ上げるものを感じた。私はそれを強引に酒で飲み干した。その姿を眺めて死刑王は微笑む。

「君とは上手くやる事が出来そうだ。よろしく頼むよ、ヨハン。」

 これが私と死刑王との出会いだった。



【4】



 その日から、私は死刑王の助手を務める事になった。主な仕事は処刑道具の洗浄と死体の後片付け、それに処刑の記録人である。基本的にはギロチンでの処刑を行うのだが、たまに国側から処刑方法の指定があり、それに従って処刑する事もあった。

 火あぶり、電気椅子、首つり、車裂き……私はこれを見る度に人はこれほどまでに人を殺す方法を考えてきたのかと戦慄した。 戦争などで行われる殺害とはまた違う、人をどう殺すかを考える為に出された知恵。そしてそれらの処刑には様々な効果があり、それぞれが目的が違う。感情的な怒りをぶつけるものであったり、無惨残酷なもので見せしめとして機能させるものであったり、効率的に人を殺すためのものであったり、種別が様々だ。私は未だこの処刑に慣れず毎日、精神を揺さぶられる思いをしたが、それ以上に死刑王の奇行が目に付いた。彼は死刑の直前に必ず受刑者と対話する。彼らの言葉を全て肯定的に受け止めて、その上で自分は殺す事しか出来ないのだと答える。私にはこの仕打ちが残酷無比なものにしか思えなかった。

 そうした日々を続けて半年、春の日差しで辺りが温かくなりはじめた頃の話である。

「おや、来客のようだよ。ヨハン、出てきてくれないか?客人なら手厚くもてなしておくれよ。」

 何かの書類を書いている死刑王に頼まれて、私は処刑所の入り口に向かった。扉の小窓を開き、扉の前で待つ人を見る。軍服の男だった。二つの足で棒のように地に直立している。規律正しい軍人という印象を私は受けた。

「私は政府局の命令でこちらを尋ねたアノーン少尉である。直ちに開門して頂きたい。」

 手には軍部の命令書を携えており、中には内情視察と書かれていた。

「今、開けますお待ちください。」

 私は鉄の扉を開く。アノーン少尉は軍帽を被り無し、私を一瞥して「ご苦労」の一言のあと迷わず処刑場へと足を運んだ。その後、死刑王が休む応接間へと迷わず歩を進める。そうして構わず扉を開いた。死刑王は来客の見て、驚き目を見開く。

「久しいな、死刑王。元気にやっているかね?」

 そう尋ねるアノーンに死刑王は笑顔で迎える。

「いつも通りだよ。久しいなアノーン。そっちこそ息災だったか?」

 そう言って、二人は友情を確かめるように抱き合った。

「まあ、まあ、という所だよ。お前にいくつか話をしたくね、今日は尋ねてきたんだ。」

「そうか、珍しく今日は仕事もないしな……せっかくだ今日は腕を振る舞って食事を作るよ。泊まっていけよ、どうせ暇なんだろう?」

 そう言われアノーンは少しの間を置いた後、笑顔で答えた。

「そうだな、たまにはそんな日もいいな。馳走になろう。ところで私を迎えてくれたあの新人紹介してくれよ。珍しく長く持っているようじゃないか……。どうだ、君、こいつの変態嗜好に嫌気が差してないか?」

 そう私の肩に手を回して語る。私は先ほど受けた印象と違うフランクさに驚いた。

「いえ、仕事ですので……。」

 私は、そう言葉も思いつかず有り体に答える。その言葉にきょとんとした後、アノーンと死刑王は顔を見合わせて笑った。

「何がおかしいんですか!」

 その笑い声に侮辱されているように感じて思わず叫んだ。

「いや、なるほど、流石だな死刑王、ここにいられる訳だ。素晴らしい人材だ。」

「そうだろう、自慢の助手なのだよ。彼は最も大切な事を理解している。」

 そう言って再び笑い合う。私はこの二人が心底不愉快だった。

 その日の夜、会食が行われた。皿に並ぶのはサラダと死刑王自慢のポークソテーだった。

 アノーン少尉はナイフでポークソテーを一口サイズに切り、口に入れる。

「美味いな、この肉。我が故郷のものの次に美味い。」

「また地元びいきか……君はもう少し世の中を知るべきだよアノーン。」

「お前がそれを言うか。」

「ふん、我輩は君より博学なつもりだよ。」

 そう語り合う二人を横に私は黙々とそれを眺めていた。

「助手君、先ほどから静かにしてるが何か口を開かないかね、せっかくの宴なのだ。黙っているのはつまらないよ。」

「といっても何を言うにも話の種がないですし……。」

「別に我々に何か聞きたい事があったりしないかね?そんな事でも話の種にはなるものだ。」

 そう言われて私は考える。一番気になるのは死刑王の過去を直接的に聞くのは気が引けた。

「では、えっと、二人は昔からの知り合いなのですか?」

 そう尋ねた私に二人は笑って答える。

「そうだな、大学時代の同期だ。私は経済学、こいつは法学を学んでいた。」

「学部違いで友人になられたのです?」

 そう尋ねる私にアノーンは頷く。

「こいつは昔から目立つ奴でな、あまりに面白そうなので、つい声をかけてみたんだ。おい、そこの変人とな……。」

「いくらなんでもあれは傷ついたぞ。我輩は確かに逸材である事を認めるが、公然と変人呼ばわりされるのは悲しい」

 その割には自分で死刑王と呼べだのと言っていた気がするから、その手の恥を感じるのはそもそも間違えている気がしたが、私は静かに耳を傾ける事にした。

「こいつは主席で大学を卒業した天才なのだがな。官僚にキャリアで入ったくせに、この強烈すぎる個性だろう?すぐに浮いてな……疎まれて左遷を受け続け今こんな僻地で汚れ仕事だ。」

「何を言う、これは我輩にとっての天職だよ。」

「あー、はいはい、聞き飽きたから、それ……ほら、もっと飲め助手君、せっかくの酒宴なのだ。」

 そういって、私の杯に酒が注がれる。薦められるままに私は酒を飲んだ。また次の杯が注がれる。徐々に朦朧としてくる意識。私は机に突っ伏しになるようにして倒れた。

「まったく、こんな風に我輩の助手を潰して、明日の仕事に支障が出たらどうするのだ。」

 朦朧とする意識の中で声がする。気分が浮いているようで意識が繋がらない。

「といっても、あまり聞かれても困る話だからな……。」

「もう限界なのか?」

「ああ、次期にこの国は終わる。」

「そうか……。」

「今からでも遅くない亡命しろ、君は様々な反逆者をその手にかけてきた。ゆえに事が起これば君の身も……。」

 意識が途切れる。この意味を噛み締める事になるのはほんの二日後の出来事だった。



【5】



 その日は運命の日だった。労民党の独裁が崩壊した日、革命活動を主導した反体制派が党首を暗殺し、新政府を立ち上げた。その後、労民党に属する様々な人間が政治犯として逮捕された。その中には死刑王。私の上司である彼も含まれていた。取り押さえられる死刑王。あれほどまでに命をその手で処断してきたというのに、装備を持った軍人の前に無力に捕らえられた。私も一緒に捕えられ、数日間牢屋に閉じ込められた後、数週間に渡る取り調べの日々だった。食事も碌に与えられず続いたそれは私の精神を摩耗させていく。

 それは何回目の取り調べだったか、これまで私を担当した男と違う男が入ってきた。優男風の男で綺麗なスーツを着こなし、腕には真鍮製の時計を付けている。

「ヨハン・ライヒ。君は元々反労民派の党派に所属していたらしいね。君の名前を見て、我々の同士が覚えていたよ。解党と共になくなった小さな政党だったそうだが、なるほど、あのような場所に左遷させられていたのだな。君が生きていた事を嬉しく思う。」

 優男はそう言って私に握手を求めた。それに応えるように私も握手を返す。

「感激の極みだよ。さて、ヨハン。今すぐにでも私は君をここから出してあげたいのだが、少し君は難しい立場にある。」

「と……言いますと?」

「死刑王という人物を知っているかね?」

「それはまあ……。」

「そう、君の元上司であり、我々反体制派の尽くをその手にかけた男だよ。まったく、それにしても趣味の悪いあだ名を名乗ったものだ。死刑王、死刑王ね……我らを処刑する悪魔を名乗るか……忌むべき名前だ。」

 優男は心底侮蔑するように言う。私は感情を表情に出さないよう努めて尋ねた。

「それで、死刑王がどうしたんですか?」

「君も彼の前で様々な残虐な死刑を目の当たりにしたのだろう?ギロチン、車裂き、電気椅子、首釣り、皮膚剥き……聞いたところによるとネクタイすらしていたそうではないか……。」

 いくつかは知らない刑があったが概ねその通りだったので私は頷く。

「君も彼の元で同士達が死ぬのを耐えていたのだろう。苦渋の日々、よくぞ耐えてくれた。喜びたまえ、死刑王の死刑が決まった。」

 優男の言葉の意味がわからず思考が停止する。

「ははは、死刑王の最後はその名の通り死刑台の上という事だ。ざまあない。」

 笑う優男。本来ならば私もそれと一緒に笑うべきなのだろうと思った。笑いながら処刑する死刑王。死刑を愛した死刑王。その狂行の全てをこの眼は見続けてきたのだから……。あれは死んで当然の人間だという理屈が私の中にはあった。だが、それと同時に何か落胆するような胸に穴が開くようなこの感覚は何なのだろう。

「問題はだ、君は死刑王の助手をやっていたという事なのだよ。その手に同士をかけてはいないというのが死刑王の供述からわかっていたがね……どうであれ君は目の前で同士を見捨てたと見なすものがいる。」

「そ、そんなことは……あれは仕方なく。」

 そう反論する私を優男は優しく肩を叩く。その手から香水の柑橘系の臭いがした。

「わかっている。わかっているとも君と出会って君がそのような薄情な人間ではないと確信した。しかし、それでは納得しない者もいるのだよ。だからね、君は君の潔白を証明しなければならない。脅されて仕方なくやっていたのだと、我々が蜂起するまでに雌伏していたのだと……。」

「では、どうすれば?」

 恐る恐る尋ねる私に、優男は指を三本立てて言う。

「三日後、死刑王が死刑台に送られる。その際に君に彼の死刑執行人を勤めて欲しい。」

「私が……死刑王の……。」

 思いがけない言葉に言葉を失った。

「そうすれば、君の潔白を証明出来る。誰も異論は挟ませない。凶行の主を君が復讐の代行者となって殺害し、君は英雄となるんだ。既に筋書きも済ませてあってな、マスコミへの工作も終わらせてある。」

「私がやらなければならないんでしょうか?」

 優男が少し呆れたように言った。

「その通りだ、そうでなければ君をかばい立てすることが出来ない。操を立てて欲しいのだよ。破格の条件だとは思うが、どうかね?」

「答えはこの場で出さなければなりませんか?」

「まさか、断らないでくれよ。君が断れば、君を裏切り者として裁かなくてはならなくなる。」

 私に他の答えは許されなかった。



【6】



 死刑執行当日、死刑執行所。私は処刑人としてギロチンの準備をしていた。刃の状態の確認、ロープの状態の確認、拘束具の堅さの確認と死刑王に仕込まれた確認作業を丁寧に行っていく。使うのは死刑王が使ってきたギロチン。これまで同士達を殺害してきたもので殺害するという意趣返しの側面もあって指定されたようだ。この処刑には数人の記者も同行する事になっており、処刑場にはカメラが設置されている。

 私はまだ誰もいない処刑所で深呼吸した、緊張していないと言えば嘘になる。私は初めての処刑を、私に処刑を教えた男に施そうとしている。自分の両手を見て思う。この手が今から命を奪うのだ。それも赤の他人ではない。確かに暗い記憶も多い、彼が受刑者にやってきた事は執行人としての度を超えている。しかし、彼はそれと同時に私によくしようと料理を振る舞ったりしてくれた事もある。死ぬべき人間であるという思いと、どこかそうではないと思わされる側面に私の決意は未だ定まらない。

 ここまで来て私は迷っている。だが、しかし、私は既に死刑王の言うところの結果でしかない。もはや未来は決まっていて、それを行うしか道が残されておらず、あとはその決まってしまった未来をなぞるだけだ。

「受刑者が輸送されてきました。」

 そう伝える声。

「わかりました、今迎えに行きます。」

 そう応えて私は向かう。執行所の鉄の扉を開いて死刑王を迎えた。私は輸送車から出てきた死刑王を見て、私は言葉を失った。酷いものだった。出てきた死刑王の顔は真っ青に腫れており、元の山のようなごつい顔は潰れていた。何よりも気になるのは目だ。目が潰されている。両目からは血が流れ出しており膿があった。また、どうやら耳にも詰め物をされており、五感を失わせる拷問を受けたようだった。

「処刑所へ連行しろ……。」

 そう命令を伝え、看守が手錠を引っ張る。それに従うように力なく死刑王はたどたどしく歩いた。私に高説をした威厳もないその姿に私は動揺する。それを周りに感じさせないように無表情を装う。

 彼を恨むものたちに私刑を受けたのだろうか?そう思案を巡らせていた時、記者達がこちらを見つけ私と死刑王の写真を撮った。その後、インタビューをするようにして尋ねる。

「この度、死刑執行官を務めるヨハン・ライヒさんですね?あなたは受刑者の元で辛酸を舐めながらも従い、酷い命令に従事せざるをえなかったと聞きます。そんなあなたが、今、執行官を務める事になってどのような気持ちですか?」

 そう尋ねられ、私は回答に困る。少し考えた後、下手な事は言うべきではないなと判断して、

「今は仕事に集中していますので、そういった返答は出来かねます。」

 とだけ応えた。死刑王を連れて執行室へ向かう間、私は頭の中で先ほどの記者の質問に対して考える。彼らが求めたのは死刑王を糾弾する旨のコメントだろう。自分をこの場に送り出した優男の筋書きでは私のこの処刑は英雄的な行為として喧伝される予定なのだという。だが、私自身は死刑王から何かされただろうか?確かに仕事として死体の処理をした。彼の処刑は受刑者の答弁を聞くだけ聞いて、あとは何も施さず殺すという悪趣味のようなものだった。確かにその仕事作業を見ていることに精神的苦痛を多く感じたが、彼自身が私に何かをしたのかと言えばノーだった。彼は死刑を執行しただけで、私はそれを見届けただけ……そう考える中で一つ私は事実に気づく。私は彼個人に対して恨みを抱いてはいないのだと……だとするならば、何故この場所に私は立っているのだろう?

 処刑室の扉が開く。鎮座するように死刑王のギロチンがある。私は死刑王の手を持った。持った手は紅く腫れていて、握った時に死刑王は表情を苦悶に歪めた。

「申し訳ない。」

 そう告げる言葉も詰め物をされた死刑王の耳には届かない。私は死刑王をギロチンの処刑台に固定し始めた。動きが取れないようにロープで体を死刑台に縫い付けて、顔を断頭台に添える。その後顔を動かせないように木で頭を挟んだ。

 周囲でそれを見届けようとしている人々の視線が私に集まる。私は静かに執行の準備を行う。慣れた手つきで、心はここになくとも死刑王をギロチンに拘束する事に成功する。そして、私はギロチンの留め具を外してロープをその手にもった。手には刃の重さがずしりとのしかかり思わずその重さに体が引っ張られそうになる。ギロチンの刃の重さは命の重さだとかつて死刑王は私に説いた事があった。これを持つ手を緩めれば、ギロチンの刃は落下して死刑王の首を処断する。手が震えていた。握る手に力が入り石のように硬直する。告白しよう、私は怖かった。恨みもない人物の命をこの手で奪う事が……。これがまだ知らない人間を殺すのであれば罪悪感も何も感じなくてすんだだろう。しかし、殺すのはこの半年ばかりを共にした死刑王だ。何故、私はこのような場所に立ってしまったのだろう。

「震えて……いるのだね……。」

 その声を聞いた時、思わず大声を上げそうになった。周囲の視線と緊張がなんとかそのような奇行を思いとどまらせたが、我輩はすぐにそう語りかけた声の主を見る。

「我輩はもう目も見えず、耳も聞こえない体になってしまっているが、私を殺そうとしている人間が震えているのは、なんとなくわかるよ。それにこれは我輩のギロチンだろう?何度もかいだ木と鋼と血の臭いだすぐわかる。」

 そう語る死刑王。既に瞳はなく、耳も聞こえない彼が見えない私に対して語りかけてくる。

「きっと、君はこのような事で悩んでいるのだろう。我輩を殺して良いのだろうか?と……なるほど、それは深遠な命題だ。人間が人間を裁く、死刑は人を法によって裁くなどという名目は所詮言い逃れにすぎないのだという事を思い出させてくれる。だがね、それは意味の無い悩みでもあるんだ。きっと君は人殺しをするおぞましさに当てられているんだろう。けれど、違う、君が今からするのは人殺しじゃない。」

 私は死刑王の言っている事がまるで理解出来なかった。今から私がするのが人殺しではないとしたらなんなのだというのか?

「君はね、我輩を殺しに来たのではない。殺すというのは殺意によって成り立つモノだ。君は我輩に殺意を持っているのではないのだろう?ならば、処刑とは何かという命題に入る。」

 語る声は小さく、私のみがその声を聞いている。

「この場に立つ君はおそらくは君の意思でここには立っていないのだろう。だからこそ、君は執行人にふさわしい。いいかね、執行人は受刑者に他意を持ってはならないんだ。執行人はここにたった時点で既に君という個人ではない。君は愚衆達の代弁者、代行者にすぎない。いいかね、君の腕を動かすのは愚衆の怒りだ。ここに我輩を立たせた者達を思いたまえ、我輩のことをどう思っているか……君が我輩を殺すのではない愚衆達の意思が我輩を殺すのだ。君はその魑魅魍魎にとりつかれただけにすぎない。ゆえに笑え、笑って笑って憎悪しろ、それは君の怒りではないが、君に取り憑いた者達の怒りだ。君は今、怨念達の依り代となる。」

 憎悪を考えた。死刑王に殺された人間達の事……。最初にここへ来たとき首を落とされた男の思いを考えた。殺される理由など本当になかったのかもしれない。けれど、殺された。何人も無実のように見える人々がギロチンに送られるのを私は見てきた。彼は無念を口にして怨嗟を吐いて、死んでいった。絶望に泣き叫ぶものもいた。それらの無念が私だとするならば、私は今この場でどのような顔をするべきなのだろうか?

 私の感情とは別に頬が緩むのが感じた。思わず出た笑み。私の体に他人の怒りが打ち付けられる感覚が走った。私の体に入ってきた者達が叫ぶ、許せない、許せないと……。憎悪に打ち震えている。手に感触がなくなる。

「さあ、君はもう君ではない、降ろせ、幕を下ろすのだ。死によって結末を迎えられぬ物語であるならば、それは即座に終わるべきだ。」

 私はロープを持つ手を見た。見て、見て、見て、




















 ローブから手を離した。

 刃は落下し、死刑王の頭部を切り落とす。地面に転がる死刑王の頭を眺めながら、私は笑っていた。












【7】


 なに同情を引こうというわけではないよ。あとは君も知っているだろう?死刑王を殺害し一矢報いた英雄などと最初は報道されたよ。死刑王を殺した我々の死刑王とね、それからも労民党の中心人物を何人もギロチンにかけた。そうして私たちは平和を得た。しかし、いざ平和になってみれば、民衆達は掌を返して私を批判しはじめるようになった。おかしな話だと思わないか?やれといったのは革命派の連中で私はそれに従ったまでなのに、いざ都合が悪くなると広告塔になっていた私にその全ての責任を押しつけた。いや、最初からそのつもりだったかもしれないな。まったく上手いことをやったものだよ。だからね、君に言うんだ。君が今から行う事は殺しではないのだと……。



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