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星天の霹靂  作者: 白州
第1章:集う星々
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第5話:政府内観光ツアー 前夜

おとなしくバルコニーの外で待っていると、暫くしてから翔子さんだけが出てきた。



「あれ、首相はどうされたんですか?」


「首相は公務がおありなので、連絡通路を通って自室に戻られましたよ。お待たせしてしまい申し訳ありません」


「そんなに待たなかったので大丈夫です。……それより、私これからここに勤務する事になるんですよね?お金とか、家とかって……」


「その点に関してはご安心ください!始祖者だけでなく、能力者は原則としてこの『四地二天の塔』に住まう事を義務付けられています。それと、始祖者優遇でKIRIN食堂の料理をタダで食べる事が出来るという制度もあります!それでもお金は欲しいなぁ、という人は任務をこなせばそれなりの報酬が手に入るので、趣味に使うなりなんなりすれば良いかと!」


「素晴らしいですね始祖者って」



別に優遇制度とやらで釣られているわけでは無い。違う、断じて違う。



「まずはこの『星河天』からですね。2、3日かけて政府内施設をご案内致しますので、どうぞ観光をお楽しみください」


「なんでガイドさんモード入ってるんですか………」


「残念ながら今日はもう夜遅いので、本格的なご案内は明日からになります。朝9時にお迎えにあがりますね!その際の身支度も私にお任せください。本来は言葉様の側近が行う事なのですけれど……まだ見つかっていないらしいですからね、申し訳ありません。大丈夫です!眷属自体はきっとすぐ増えますよ!」



眷属?側近?また新しい単語が出てきた。脳内の知識を辿ると……それらしいものが浮かんでくる。


眷属……火、水、風、雷、太陽、そして新たに見つかった星。これら6属性それぞれの頂点である『始祖者』の下には、下位互換の能力を持つ『眷属』が多く存在する。役割は主に始祖者のフォロー役だったり、お世話係だったり。また、『眷属』の中でも比較的強い能力を持つ者たちを『側近』と呼ぶ。見分け方は、始祖者より一回り小さい痣があるかどうか。


……うーん、要するに統率者と何人かの秘書とたくさんの社員って感じかな。



「では、取り敢えず寝室のみご案内させていただきますね!」


「お世話になります」



礼を述べると、翔子さんはどことなくうきうきしたような表情を浮かべてお任せ下さい、と頷いた。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「ここが、星河天の中心地にして区域拠点!セキュリティも万全、設備も完備!始祖者と側近、あと私と首相のみが入る事を許される巨大寝室!!その名も『星の揺籠(プラネタリウム)』です!」


「うわ、大きい………」



草原にそびえ立つドーム状の建造物。それを指差し、翔子さんは興奮気味にその魅力を語っていた。



「あぁぁ………ここ、出来上がってから中に入るの私初めてなんですよお!すっ……………ごく!楽しみです!」


「………そうですか。それは良かったですね」



深夜テンションが入ってる感が否めない。こっちは疲れてるから余計についていけない……体力凄そう………秘書業務って疲れないのかな………



「ほらっほらっ言葉様っ!ここに!手を当ててください!」


「はいはい…………」



言われるままに手をかざすと、ピピっと電子音が鳴り、滑らかに扉が開いた。

中に入ると…………



「わあ………凄いです!!なんて綺麗なんでしょう!星河天一帯も綺麗ですけど、こっちは閉塞感が相まって、もっと神秘的な感じが出てますね!首相、本当いいセンスしてますよ………」


「…………え、これを?首相が?」


「はい!首相が一から設計したんですよ!」


「はぁ………凄いですね、首相」



一体何者なんだろう首相……


丸い壁面に星座が描かれ、星の光が中央部にある円柱形のクリスタルのようなものにに降り注がれている。何故かクリスタルの周りには、12個の黒くて大きな箱がぐるっと均等に設置してあった。



「あの黒い12個の箱みたいなやつって……」


「ああ、なんでも側近が寝泊まりする用の場所みたいですよ。ブースターの役割も果たしていて、箱の中で過ごすだけで側近の力が真ん中のクリスタルに集まるような配置に工夫されているようです」


「へぇ、よく出来ていますね………あ、わざわざあのクリスタルに力を集めるって事は……」


「はい、あそこのクリスタル……実はエレベーターになっていて、下に始祖者の部屋があるんですよ。二重のセキュリティになってるんですよ!!カッコいいですよね!!」


「………そうですね」



促されて、クリスタルにも手をかざし、その中から出現したエレベーターに乗る。少しの間下に降り続けていると、ガコンと音がしてエレベーターが止まった。



「ふおおお!!!ここが言葉様の寝泊まりされる場所ですよ!!カッコいい!!神秘!まさに『星の始祖者』に相応しい感じしますね!!!」


「わ……本当だ。これは凄いですね」



宇宙。銀河を凝縮したような空間がそこには広がっていた。群青、藍色、漆黒………さまざまな色が混ざってるはずなのに、全くくどさを感じないのはやはり首相の手腕だろうか。


極め付けはこの無重力空間。部屋に一歩踏み出すと、体が浮き始める。何の訓練も受けていないのに、部屋の中を自由に行き来できるこの利便性。現代科学って凄い。


それに、家具も用意されている。……高そう。壊すのが怖いので、あんまり使いたくないな。そういった家具も含め、全部ふわふわと浮いているのに……逆さまになったり向きが変わったりしないっていうのもなぁ………凄いなぁ………


ふよふよと部屋を見て回っていると、ある家具が目に止まった。

呆れるほどの大きさのベッドである。



「………ベッド、広すぎません?キングサイズですよこれ。あとこの無駄なヴェールとか、天蓋とか………」


「決っっっして無駄なんかじゃありませんッ!!!ここまでくるともうロマンなんです、ロマン!!!なんっっって羨ましい!!」



本音がだだ漏れになってますよ翔子さん。



「………じゃあ、とりあえず寝ます。おやすみなさい翔子さん。また明日……よろしくお願いします」


「はい!おやすみなさいませ言葉様、良い夢を!…………………………………いいなぁ、ふかふかベッド。いいなぁ、天蓋付きお姫様ベッド。いいなぁ、いいなぁ…………」


「………………」



秘書業務、そんなにブラックなのかなぁ。


ふらふらして去っていく翔子さんを心配しながら見届けて、私は雲のようにふかふかしたベッドに潜り込んだ。……暖かい。



「…………おやすみなさい。」



明日は、きっといろんなところを見て回るんだろう。……今日蓄積した疲労感、取れればいいな。


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