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星天の霹靂  作者: 白州
第1章:集う星々
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第3話:他愛ない会話と過程における謎

「………葉様、言葉様!」


「………ん……」


「起きてください。現在時刻21時10分、もうまもなく約束のお時間です。」



自分の記憶上における、2度目の起床。

目を開けてみれば、相も変わらずそこは無機質な人工照明が目立つ病室だった。

変な姿勢で寝たせいで、少し体が痛む。

ベッドの横には翔子さんが立っていた。



「…………あれから何時間寝てました?」


「ざっと7、8時間ほどですね。よく眠れたようで何よりです」


「そうですか………起こしていただき、ありがとうございます」


「いえ…これが私の仕事ですので」



そう言って微笑む彼女。

余程この仕事に誇りを持っているのだろう、眼鏡の奥の目には絶えない輝きが満ち満ちていた。

何だか無性に嬉しく感じ、私も翔子さんに微笑み返す(・・・・・)



「……………?言葉様、私の顔に何かついていますか?…もしかして具合が悪いとか……?」


「え、具合は悪くありませんけど……急にどうされたんですか?」


「あぁ、それなら良かったです。言葉様がずっと無表情(・・・)で私の顔を見ていたので、心配になってしまって……」


「…………無表情?」



ベッドから跳ね起き、鏡の前に立つ。

……口角を上げようとしたが顔の筋肉が全く動かない。まるで顔全体がセメントで固まってしまったかのよう。

確かに今、衝撃を感じているのに、眉一つすら動かない……!?



「言葉様?大丈夫ですか?」


「……大丈夫、です。……無表情はもともとなので、気にしないでください。」



ぺちぺちと頬を軽く叩いて、潔く翔子さんに向きなおる。



「そうでしたか!これはとんだ無礼を……」



……嘘をついた。無表情な理由は、恐らく記憶と同じく一朝一夕にはわからないだろうと思ったから。今は、置いておくべき問題だ。

理解できない問題から逃げるように、私は話題を変えた。



「支度をしなくちゃ…時間、無いんですよね?」


「あ……いけない、もうあと30分しかない!急いで着替えましょう、こちらにお着替えくださいね!」



そう言って取り出されたのはフリフリした感じのよくわからない服。紺色を基調に、ところどころ星のモチーフがあしらってある。



「これに着替えるんですか……?」


「首相が言うことには、なんでも首相のご友人が貴女宛てに送った10年分の誕生日プレゼントの中にこういう服類が山ほどあるらしくて。正装と軽装の2つがありましたが、動きやすい軽装を選ばせていただきました。可愛いですよねこれ!正直これを着られる言葉様が羨ましいです……」


「はあ………そうですか。……何故首相のご友人が私に?」


「さぁ……何故ですかね?」


質問にも上の空で返し、うっとりとこのフリフリ服を見つめている。……翔子さんは気遣い上手の素敵な人だ。それは疑いようの無い事実なのだが、どうやら神は翔子さんに『感性』を与え忘れてしまったらしい。ひたすらに残念。


着替え終わった後アクセサリーなども押し付けられ、さらに「これは丁度さっき届いたものだそうですよ!良かったですね言葉様!」と白色のバレッタを渡された。


……まぁこのバレッタはもう一つの黒色のバレッタと合わせればそれなりに良く見えるだろう。



「あっ大事なことを忘れるところでした!言葉様、これは首相からの誕生日プレゼントだそうですよ!詳しい説明はこの後お会いになる首相から聞いてくださいね。」



……黒色のチョーカー?

何故ご友人だけでなく、首相本人も私などに誕プレを渡すのだろう。理解ができない……でもとりあえず、せっかくもらったのに付けないというのはどうなのだろうと思ったので、付けることにした。


ここでようやく準備が整ったので移動しようと思ったのだが、今の私は筋力が無に等しい状態なのを思い出し、翔子さんに車椅子で運んでもらうことになった。なんて不甲斐ない……


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「凄い……ここ全部政府内の区域なんですよね?なんというか、こう……政務を行うような場所ではなさげな感じがしますが……」


「そうでしょう?ここはとある部隊の宿舎になる予定の区域ですからね。ここは能力者達が住まう場所、『四地二天の都』と呼ばれる政府内建造物の一つです。四地とは、この下に見える『朱雀区域』、『青龍区域』、『玄武区域』、『白虎区域』の4つの区域で成り立つ場所の事。軽く半径8㎞はあるでしょう。そして、私達が今いる場所が二天のうちの一つ、最近新しくできた『星河天』です!ちなみにもう一つは『陽昇天』と呼ばれる区域ですよ。四地から約3㎞の高さにありますが……ご心配なさらず、高速エレベーターで高さの問題は解決済みです!」


「翔子さん、……ガイドモードに入っちゃうのは構わないんですけど、ちゃんと目的地には辿り着いてくださいね……?」



やっぱり不思議な人だ……と翔子さんに呆れつつ、車椅子に乗ったまま宝石を散りばめたような美しい星空がそこかしこで輝くこの区域を見渡す。



「……星が綺麗で素敵です……すごく落ち着く」


「それはそうでしょうね」


「え?」


「あ、いや!…何でもありませんよ。………ほら、もう着きましたよ!ドアを開けますね、準備はよろしいですか?」


「……いつでもどうぞ?」



どうしてこうも急に翔子さんはわたわたするのだろうか。未だ目覚めた後もずっと解けない数々の謎を頭に残しつつ、私は翔子さんと区域の奥に進んでいった。


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