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星天の霹靂  作者: 白州
第1章:集う星々
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第1話:10年越しの『おはよう』

_____ねぇ、そろそろお目覚めの時間だよ。



___________おはよう、コトハ。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



ん…………ここは……?

うぁ………頭が痛い、体がだるい、気持ちが悪い………………目が開かない!?

…………感じたことのない違和感。


『ピッピッピッピッ…………』


機械的な音………電子音?

もしかして……………ここは病院?


ガラガラガラ……


!?……扉が開くような音がした。

どうやらここは病院か何かの一室らしい。

そして入ってきたのは気配からして2人。

限られた情報から、かろうじてそれはわかった。


「お、お早う御座います言葉様………たっ体温を測らせていただきにきました……」

「ビビらないでもうちょっとシャキッとしなさいな。10年も眠っているんですもの、いきなり起きるなんてこと、あるはずないわ」


起きているのですが。

そしてちょっと待ってほしい。

今、年配の看護婦のような声の人がとても重要なことを言った気がする。

10年って何。どういうこと?


「えぇとまずは乾燥防止のため、まぶたに水滴を垂らして………失礼します……!」


ぴちょん。


冷たっ!

っぶねー……なんとか声を抑える。

と同時に、乾燥して開かなかった目が動けるようになったのを感じた。

バレないように、うっすら目を開けてみる。


ま、眩しい………


朝日なのか照明なのか。

どちらにせよとても眩しい。

ここでさっきの新米看護婦が戻ってきたので

慌てて目を閉じる。ホッとしたのもつかの間、


「お召し物をお替えいたします…………失礼しますっ!」


ごそごそ。慣れない手つきで恐る恐る脱がせにかかってきたので、つい、


「く、くすぐったい」


「「えっ」」


しまった。やらかした。

長いこと喋っていないような感覚で、喉がしゃがれる。……せめて刺激しないようにまずは挨拶を試みよう。


「お、おはよう、ございます……?」


「「キャァァァァァァァァア!!」」


失敗。

両方とも、どうやら腰を抜かしているようだ。

一応心配して、声をかけてみる。


「あの……大丈夫ですか」


「ひっ…………!!院長おおおおお!院長おおおおおおお!!」

「わぁぁあ先輩!!待って下さい!置いてかないでええええ!!」


「……あの……」


逃げられてしまった。

呆然と立ち尽くしていても仕方がないと、

とりあえず部屋の探索を始める。


「あ……その前に、」


自分が寝ていたであろう随分と大きなベッドの横側にある小さなテーブル。そこに言葉の探し物があった。黒のバレッタ。前髪に付けて、ようやく一息。これだけは唯一手放せない大切な物として肌身離さず持っている。


「……あれ?」


…………これ、誰かに貰ったんだっけ……

記憶がぼんやりとしており、よく思い出せない。

……そもそも自分はどうして10年も眠っていた?眠る前は何をしていた?その前の記憶は…………?


(混乱してきた。この事は今は置いておこう……)


混乱していても何もいいことなんて起こらない。

……………探索しよ。


………等身大の鏡、先ほどの大きなベッド、そして何故か大量のプレゼントボックスらしきもの。


……どうしよう、訳がわからない。


困惑していると、ふと鏡が目に付いた。

目の前に立って、10年間眠っていたという自分の体を観察する。シンプルな薄青色の病院服。そして筋肉どころか脂肪すらほぼ無いと言っていい程痩せ細った体。

実は今こうして立っているのも大分辛い。

親切にも病室内には手すりが点在していたのでそれに掴まりながらの移動だったのだが、ほんのちょっとの探索でもう息が上がってきている。倒れそう。


ベッドで少し休むべきだろうか。

そう判断しようとした矢先、鏡を見ていた私の目線が一点に止まった。血が通っていないのでは無いかと思うくらい真っ白な顔。

……いや、問題はそこじゃない。

髪。私の髪が真っ白なのだ。正確に言えば、白くてなんかキラキラしてる。

まるで水に濡れて太陽光に反射する砂糖みたいだ、と客観的に思った。


……まさか。


私は……アルビノだった………?


衝撃の新事実(?)に頭を抱えそうになっていると、ドタバタと騒がしい足音。

……来客のようだ。しかも大勢。

しばらくして、看護婦が開けっ放しにしていた扉から白衣を着た人々が大量に流れ込んできた。人口密度が急激に高くなり、私は少し具合が悪くなる。さらに白衣集団の中から如何にも権威がありそうなヒゲのお爺さんが出てきて、私の顔を見るなりあんぐりと口を開けた。人の病室に大挙して押しかけやがった上に、顔を見るなりそんな表情をするとは。失礼にも程がある。

一言文句を言ってやろうと思ったが、先にヒゲ(これからこう呼ぶ事にする)が喋り始めたので渋々口を閉じた。


「こっこっこっ言葉様がお目覚めになられている……………!?」

「何故だぁぁぁああ!!何をしても目覚めなかったというのに!!」

「えぇい、検証!比較実験での検証を行うんだ!!今回のパターンでは何が違うのか証明せねばならぬのだ!!」

「この場合筋力増強剤は投与した方が良いのではないでしょうか!?今の身体状況では比較実験は無謀なことかと!!」

「若造は黙っておれ!!」


……オプションに騒音機能まで付いている。

阿鼻叫喚とはまさにこれの事を指すのだろうか。

………それにしてもうるさい……

一刻も早く出て行って欲しいも


ダァァァァアン!!!


………びっくりした。

私の思考を妨げるかのように響いた大音量。

ヒゲらも何が起こっているのかわからないらしく、皆一様に顔を見合わせていた。

……と思えば今度は一斉に震えだした。

泡を吹いて倒れたり、青くなって神に祈りだしたり、読んで字の如く滝の汗をかいていたり。表情は様々だが、どうやら共通しているのは恐怖を感じているらしい、ということであった。

そして我先にと病室から逃げ出すように退出していった。がらんどうになった部屋はやはり落ち着くもので、人口密度も減った事により空気がすっきりしている。

ベッドの横に腰掛けて安堵していた私は、

目線の先……病室の入り口に誰かが2人立っていることに気がついた。


……さっきの大音量でヒゲ共を追い払った人たちかな。


しかしその大音量の余波なのか、何故かもうもうと煙が上がっており、顔はよく見えない。


「いやぁ、言葉ちゃんが目覚めたとはいえ、うちのスタッフがあんなに取り乱すとはねぇ。ま、逆に面白かったからいいけど!」


「処断されますか?」


「うーん病院スタッフいなくなると割と困るし、面倒くさくなるから止めとくー」


「了解いたしました」


………若い男の子の声?と女の人の声……

あとなんで私の名前……?


やがて煙が晴れると、そこには1組の男女がいた。1人は10歳ほどに見える栗毛の少年。もう1人は20代前半ぐらいの眼鏡をかけた女性。どちらもスーツを着ている。


ん?……………初対面の筈なのに。


あの栗毛の少年を、私は知っている……?


数々の驚きと疑問でほぼ脳内が停止している状態の私にゆっくりと栗毛の少年が近づいてくるのを、私はまるで他人事のようにぼんやりと見ていた。


やがて私の目の前に立った少年と視線が合わさる。少年は柔和に微笑み、唐突に話し始めた。



「ようこそ政府へ。

そして10年越しの目覚めに祝福を。

僕らは貴女を歓迎し、絶対の地位を約束しよう。

ようこそ星の始祖者。

今日が名実ともに君の新しい誕生日(リバースデイ)だ。

改めて、誕生日おめでとう、


星夜見(ほしよみ) 言葉(ことは)』さん。」




………誰のことだろうか。










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