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星天の霹靂  作者: 白州
第1章:集う星々
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第15話:獅子王の傲慢

「っあ……………!」



捻れた世界が通常に戻っていく。

そう知覚した直後、激しい衝撃が私を襲った。

お腹に押し当てられる男の(てのひら)。内臓が急激に圧迫されると同時に、私はそのまま後ろに吹き飛ばされた。


もともと立っていた位置から10mほど離れた場所に、いとも容易く宙に浮いた私の体はどさりと叩きつけられる。

想像を遥かに超えた痛みにも関わらず、辛うじて私は意識を失わずに済んでいた。



「おいおい勘弁してくれよ……言っておくが、俺にゃ娘っ子1人を好き好んで痛めつけるような特殊な性癖なんて持っちゃいねぇからな?」


「……………………」


「んん?……腹に思いっきりキメた筈なんだがな。あまり痛そうにゃ見えねぇなぁ……そう無表情でじっと俺を見つめられても困るぜ。……それにお前も始祖者サマならこういう力は一つぐらいなら使えんだろ?」



全く、ベラベラと良く口が回る奴だ。ドヤ顔しながら楽しそうに自分の力をひけらかすムキムキマッチョ中年男性なんて見れたもんじゃないな。世も末だ。



「……………ここ、どこなの?」


「そっちかよぉ!?……まぁ驚くのも無理ねぇか。ここは第一結界が張ってあった場所だ、さっきの第三結界付近とは数百メートルほど離れちゃいるが……まぁそう大して遠くもねぇ」


「……………瞬間、移動したって事?」


「平たく言えばそういう事だ。俺じゃなく、俺の仲間がやった事だけどな。……良かったなぁそんなに遠く飛ばされなくて。あいつらの力はまだ得て日が経ってないもんだから不安定なんだぜ?」



危なっ!?なんて事してくれちゃってるの、マジで遠くに飛ばされなくて良かった……じゃなくて!



「なんでわざわざ私をみんなから離したの?」


「お前を殺しやすくする為だ、当たり前だろ?」


「じゃあ……なんで私を殺したいの?」


「単純、目障りだからだ」


「……………理由になってない」



呆れながら話していると、次の瞬間男は一気に距離を詰め、私に殴りかかってきた。ギリギリでそれを避け、勢い良く後ろに下がる。



「会話の途中で殴りかかってくるのはマナー違反な気がするけど……」


「ここは戦場だ、ぬるい事言ってんなよお嬢ちゃん。……にしても肝が据わってんなぁ!今お前は殺されかけてるんだぜ?よく冷静でいられるもんだよ、流石は始祖者サマの器ってところか?」


「……………………」


「いやはや、ホント大したもんだよ。俺ぁ度胸のある奴や強い奴が好きでな?……まぁだからと言って嬢ちゃんの下につく気はさらさら無ぇんだ。さっきも言ったろ?目障りだから消すって」


「まさか、本当にそれだけの理由で……?」


「それ以上に何がある?俺の一番の行動理念はな、『自由』なんだ。他者に跪き、生を縛られるなんてまっぴらごめんだ。それに何より……」





「俺の、……獅子宮(ししのみや) (あがな)としての血がそれを許さねぇんだ」



すぅ……と目を細め、獅子宮 贖という男は私を睨みつけてくる。

純然とした敵意……殺意。



「………傲慢。それ故に強者。他者に屈せず、他者を押し除け、他者を蹴り落としてきた。それが…………おじさんの在り方?」


「おじ………………!?……ま、まぁそうだな。それが、俺だ。だから今回も同じように嬢ちゃんを………」


「やだ」


「………んだと?」


「私は………まだ死なない。少なくとも私自身を知るまでは……死ねない。 だから……!」


「……甘い、甘いぜ嬢ちゃん。そんな考え方で今の時代を生きていけると思ったら大間違いだ。それでも尚、俺を下したいのならなぁ……」



拳を突き出し、私に死ねと告げるその男はその時間違いなく、楽しそうに………実に楽しそうに笑っていた。

自らを支え、同時に追い詰める絶対的自信。

それ即ち王者の風格。


______________獅子王。



「力をもって俺を倒してみせろ、始祖者」


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