中編 : ……upon a ……
少女はひたすらに走った。
足が変色して、血塗れになって、それでも走り続けた。
「っはぁっ、はっ、……っ………あっ!」
けれどどんなに決意が固くても、長く走り続けようとするには、少女はあまりに幼すぎる。足がもつれて転んでしまっていた。
慌てて後ろを振り返ってみれば、恐れていた赤色はそれなりに遠くにあった。
(だけど、だけどまだ。まだ、たりない。)
(………逃げ切れてない。)
(火は、はやい。もたもたしてたらすぐに追いつかれちゃう………………!)
(もうあんなに痛いのはやだ、叩かれるよりも痛いもの。足、わたしのあし、動いて……うごいて……!!)
しかし少女は崖から落ちた時の打撲痕や火傷でボロボロ、精神も相当に参っているようであった。
改めて自分の置かれている状況を理解した少女は、ついにその瞳から涙を落とし始めた。
(たすけて、だれか、だれか…………)
「たすけて………………!!!」
________________ふわり、と。
不思議な香りが少女の鼻腔をくすぐった。
ふと顔を上げると、そこには大勢の人影が……….
人影?
「やぁ、近くから強烈な願いの波動がしたから来てみたんだけど………アレを出したのは君でいいのかな?」
「え…………?」
(男のひと?すごく、きれい……)
「んー、傷だらけだねー……獅子、お前の小星座か?」
「こんなヤツ見たことも聞いたこともねぇですぜ」
(おじさんがでてきた。ライオンさんみたいなひとだな…………)
少女は困惑した。なんだこれは、と。
そもそもどこから現れたというのか。
ここは見渡す限りの草原、走っていた時には人っ子ひとりいなかったはずなのに。
堪り兼ねた少女はとりあえず尋ねてみることにした。
「あの、ど、どなたです、か…………?」
しん…………と場が静まりかえる。
「お、お前………星座のくせに星詠様を知らんだと………………!!!」
「きゃっ…………!」
直後、最初に声を掛けてくれた男性の1番近くにいた少年が少女に掴みかかった。
その衝撃で少女が包帯がわりに頭に巻いた服が外れた。瞬間、とめどなく血が溢れる。
それを見た少年は目を見開いて少女から手を離す。少女は地に叩きつけられた。
「…………!?な、何だこの赤い液体……」
(う………あ、だめだ、またさむくなってきた………もう、)
「………人間…………んでここに………!」
「ここは………々の丘……来れる……ない!」
「とにか…………触ら………ほうが……」
(なにか話してる………?………なにも聞こえない………)
(まぶたが重い………)
(……………)
「あーもう!だーかーらー、この娘の処遇は僕が決めるからお前たちは黙っててよ!ねぇ、君。今から怪我の治療をするから…………あっ!?」
「如何なさいました星詠様」
「この娘、気を失っちゃってるよ!」
「えぇ!?」
「早く運ばなくちゃ!」
「あぁっ、星詠様!お待ち下さい!!貴方様の御手を煩わせる訳にはーーーっ!ねぇちょっと!少しは真面目に話をお聞きくださいってば!!オイこの箱入り王子!!!聞けよ!!」