前編:When you wish……
_____思えばそれは星天の霹靂であり、
偶然にして必然の運命だったのである______
(Lost memory)
「……う、あ……おか、ぁ、さ……」
___あつ、い。……痛くて、苦しくて、……熱い。
今日は、お母さんとおでかけだったのに。七夕、わたしの誕生日。
きらきらした、大好きなお星さま。お母さんといっしょに、見に行こうって、言ったのに。
わたしたちが乗ってた車、何かにぶつかって、わたしは頭をぶつけて、それで……
「……ぅ…………?」
___あれ?お母さんは?
見つからない。車はぺちゃんこになってて、小さな隙間に、わたしはいた。
車から、降りちゃったのかな。
……探しに、行かなきゃ。
ぺちゃんこになった車だから、ドアもぐしゃぐしゃになってたけど、わたしが通れるくらいの隙間はあった。
「う、う………………」
体をぎゅうぎゅうにねじこんで、ようやく外に出た。
……どこかの崖の、下みたい。辺り一面、
草だらけ。……車は崖から、落ちたのかな。
車、ぷすぷす煙をあげてる。……何か、窓からはみだしてる。なんだろう………
「………!……ぁ、ぁ……」
う、で?
指の先、ちぎれそうな折り紙の指輪。せっかくのお出かけだから、特別な金色折り紙でお母さんに作ってあげたもの。
「…….ちぎれ、そう」
………これ、はお母さんなの?
「おかあさ_____!!!!」
ぼん、と大きな音がきこえた。車が、爆発した音だった。
近くにいたわたしに、わたしの体に、真っ赤な火が飛んできた。
「ぃ、っあ゛っっ!!!!!??…………ああ゛、ぁぁぁ、ぁぁぁあああ!!!あついあついあつい!!!!」
熱い。助けて、たすけて……誰か。
…………こんなに熱く感じるのは、なんで?
わたしの体がなんだか冷たい、から……?
必死に草むらを転げ回る。体をかきむしって、火を消していると、
ぬるりとしたものが手についた。
感覚は頭からした。
体についてた火がなんとか消えて、少しだけ落ちつく。
両手を見た。
血。絵の具でも出ないような、初めて見る赤色だった。
急に、怖くなる。
多分これは、命の色なんだ。これがどんどん流れていくから、
わたしの体は冷たくなるのかな。
………それに眠い。でも頭が痛いから、なかなか眠れなかった。
それでも頑張って寝ようとしたけど、それを許してくれないもう一つの赤色があった。
「ひっ………………!」
ごうごう、ごうごうと燃えて広がる火は、草むらを伝っていつの間にかわたしのすぐ側まで来ていた。暖かく感じるけど、きっと、また近づいたら怪我をする。
もう、火はこりごりだ。
………二度と近づきたくない。
___________逃げなきゃ。
どこか、この火が届かない遠くまで。
動け、動け、わたしの脚。
走って、走って、ずっとずーっと遠く、まで。
少女は走り始めた。
生きるために、………逃げるために。
______やがて少女はたどり着く。
彼の者が宴を催している「星詠の丘」の頂に。
___運命の邂逅を果たすまで、あと少し___
初めまして、しらす丼と申します!
短編小説や長編小説の設定等は考えてきましたが、本腰を入れて書く長編はこれが初となります!生暖かい目で見守ってくだされば幸いです。
ちなみにこの少女、5歳という設定ですが、精神年齢はやや高めです。この少女は誰か……それは中、後編を読んでからのお楽しみです!
コーヒー片手に暇つぶし程度に読んでいただければと思います!