表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

プロローグ

またよろしくお願いします。

携帯電話のアラーム音が聴こえた。



中学時代からずっとだが、平日は大体いつもアラームの鳴る10分くらい前には目が覚める。

そしていつも律儀にアラームが鳴るまで起きるのを待ってみる。

と言うかただ単に、このアラームが鳴るまでの10分を布団の中でぬくぬくと過ごすのが毎日の楽しみだったりする。

まぁもうアラーム鳴っちゃってるんだけどね…


私は布団を体に纏ったまま

昨日の夜あらかじめ近くに干してあった制服に手を伸ばした

そのいつもと違う制服と

立てかけていた中学校の卒業証書を見て


「クックック…」


興奮の余り、思わず不適な笑いが声に出てしまった。


窓から見える公園の桜の木は桃色の花を開いて、あたり一面をピンク色に染め上げていた。

カレンダーに大きく花マルの描かれた今日、4月8日。

そう、今日から私「秋瀬(あきせ) (りつ)」は

高校生なのです!


今日は入学式。私はこれから3年間高校に通うのだ、

高校生 それは華やかな青春を奏でる

誰もが憧れる輝ける時代!!!!学校生活、部活、そして恋!!!


「ま、柿ノ木は女子校だけど・・・」


浮かれるのはこれくらいにしてさっさと準備しちゃうか…さすがに入学式に遅刻とかありえな...


と言いつつ枕元に置いてあるデジタル時計に目をやる、時計の画面は

【8:20】

紛れもなく”その時間帯”を指していた

その時間帯…合格発表の日に何度も聞いた、ホームルームの鐘がなる8:45分という時間のわずか25分前、我が家から学校まで最短で30分とみた。つまり….......


「遅刻だぁぁああああああああ!!!!!!!!!!」


私は今ま生きてきた中でも一番の速さで支度を済ませラブコメなんかでよくある初登校で食パンをくわえるというベタな状況に陥り


「いってきまあああああああす!!!!!」


勢いよく家を飛び出した。


















当然、間に合うはずもなく

私は通学路から学校のチャイムの鳴る音を聴いて、やや諦め気味に小走りで学校へ向かった

登校初日と言うこともあって、先生達も忙しいのであろうか

遅刻したことに対してはあまり突っ込まれなかった。それもどうかと思うのだが...まぁ、結果オーライじゃん?そう思いながら栗は心の中でヘラヘラしていた


そして入学式も問題なく終わり始めてのホームルームが始まるとのことでみんなそれぞれの教室へ移動した。


「りっちゃんおっはー」


「あ、おはよう琴音、って同じクラスかよ...」


峰岸琴音(みねぎし ことね)

栗の保育所からの幼馴染で、普段の成績は中の上くらいだが、ここぞと言うときにものすごい結果をたたき出したり

スポーツなどもそれとなくこなしてしまう。本人は気づいていないが琴音はいわゆる天才タイプというやつだった。


「入学式から遅刻キメるとは…りっちゃんやりますなぁ」


このこの~と琴音が栗のお腹をゆびで突っつく。


「いや、早起きはしてたんだよ? その…なんて言うか……まぁ、ね?いや、それよりさ…その、りっちゃん って呼び方、何なの」


良い言い訳が思いつかず、話をそらす。 遅刻しちゃったら早起きとか寝坊とか関係ないでしょ。という顔で琴音が見てきたが、無視した。


「え~、いいじゃん、かわいいよ?」


「いや、かわいくねーよ。 それに中学の時はそんな呼び方しなかったくせに」


ちなみに中学の時の琴音は私のことを りつ と呼び捨てにしていた。ずっと呼び捨てだった子がいきなりちゃん付けとは何事か。


「高校生だからね!呼び方も心機一転。なんつって」


上手いこと言った。という顔をしていたのをすかさず 全然上手くねーよとツッコミをいれる。


「にしてもりっちゃんは無いでしょ。


「えー?……じゃあ…クリリン?」


言った本人も自分の発言に、これは無いなって顔をしてる。ずごく微妙な顔だ。お互いしばらく沈黙して


「りっちゃんでお願いします」


このままでは本当にクリリンになりかねない…と思ったのでとりあえずOKしとこう。どうせすぐ飽きるだろう。


「ところでさー」


思い出したように琴音が話し出した


「部活動はやっぱアレ?軽音楽部なの?」


部活、というワードを聞いてハッとなる。


「あー、ん...まぁね」


そう、私は軽音楽部に入るのだ。

中学2年の時に聴いたとあるロックバンドの曲にハマり、バンドというものに憧れて

貯めに貯めまくった貯金とお年玉その他諸々を使い果たしてギターを買って

何かにとりつかれたかのように毎日練習をしていた。

そんな私が軽音楽部に入らずして何部に入ると言うのだ。


「へぇー…私まだ部活動決めてないんだー、やりたいこととか無いし」


栗は内心、琴音なら何やらせても結果が出るんじゃないかと思っている

おそらく琴音がバスケット部に入っても バレー部に入っても ソフトボール部に入っても

なんでもこなしてしまうであろう、昔からそういう人間だったのだ、天才タイプめ。


「ふーん…ま、がんばって部活探しなよ、先生も部活は入ったほうがいいって言ってたし。」


チャイムが鳴った。

今日のところはホームルームだけなので担任の先生の軽い話やこれからのこと、教科書の配布など退屈なことばかりだった。ぼーっと窓の外を眺めてるといつのまにか授業終わりのチャイムが鳴る。

なんも聞いてなかったけど大事なことは琴音が教えてくれるでしょ...



そのあとは流れるように進み、あっという間に放課後になった。



「ふぅー…終わった終わったぁ」


何かを成し遂げた。琴音はそんな顔をしている

今日は説明だけだったろうに・・・と思っていた栗も、ぼーっとしていただけなので五十歩百歩だ。


「じゃぁ、私ちょっと軽音楽部の部室見に行って来るからー」


「うん、いってらっしゃい!私先に帰るね」


帰り支度を進めながら手を大きくふる琴音、軽く手を振り返して教室を出た。


さて、軽音楽部の部室は確か西校舎にあったハズ…

私は西校舎を目指した。それから15分。


「あっれー?軽音楽部の部室ってどこにあるんだ?って言うか西校舎ってどこだ?…あれ、西ってどっちだ!?」


思いっきり迷っていた。


「先生に聞きに行くかー…」


最初からそうすべきであったと思いつつも、栗は職員室の担任のもとへ向かった


「あぁ…ここまで来たのはいいけど、緊張するなぁ職員室…」


栗は職員室の前を行ったり来たりしてウロウロしていた。


「あら?どうしたの、秋瀬さん…だったかしら?」


クラスの担任の先生だ。

説明をぼーっと聞いていたため担任の先生の名前すらわからないが。


「あ、先生!実は…西校舎の場所が分からなくて…」


「西校舎?それならここの裏だけど…」


担任は職員室の裏に続く廊下を指さした。

今まで栗が歩き回っていたところとは反対側だ。


ってことはアレか、私は今までずっと東に向かって歩いていたのか!

無駄に体力使っちゃったな…。


「西校舎に何か用なの?」


先生が当然と言えば当然の質問をしてきた。


「は、はい。ちょっと...部室が西校舎にあると聞きまして…」


「へぇ…西校舎、ってことは吹奏楽部に入部するの?」


「え?違いますよ、軽音楽部です!」


「え?でも軽音楽部は...」


先生が何かを言おうとしたところでチャイムが鳴り始める、もう夕方の5時だ。


「あ、すみません急いでるのでこれで!ありがとうございました!」


「あ、ちょっと、秋瀬さん!?」


先生の声はもう耳に届かない、栗は夢中で西校舎への廊下を走り抜けていく。

先生の顔が、一瞬だけ浮かない表情だった気がしたが

何かマズいことを言ったかな?











やっとの思いで西校舎に到達した。

校舎は3階建てで、職員室からの廊下を真っ直ぐ抜けると到達する、そのまま通りすぎると外のグラウンドに通じる出口があるようだ。

すこしみて分かったことが、どうやらここは音楽の授業や美術の授業、つまり芸術関係の授業で使う校舎らしい。音楽関連の教室は二階だ、栗は階段を駆け上った




「えーっと、音楽準備室Ⅰ…準備室Ⅱ…音楽室…音楽室倉庫…音楽準備室Ⅲ…吹奏楽部室...?」


あ、あれ?軽音楽部の部室がないぞ!?

おかしいな、部活紹介表には軽音楽部があったはずだ。だから部が存在しないなんてことはない。

ありえない。むしろあってはならない。


私は部活動紹介の紙の軽音楽部についての説明欄をもう一度よく見た。


.........…なるほど...。


どうやら軽音楽部には それと決まった部室が無いらしい

音楽準備室1を主な拠点にしていると描かれていた。

そう言えば、中学の時も友達が入ってた吹奏楽部がそんな感じだった気がする。


「ま、いいや とりあえずここが部室ってワケね…」


私は”音楽準備室1”と書かれた板が吊してある教室の前に立った。

ドアに手をかける。

鍵は……開いているようだ……。


「し、失礼しまーす?」





.............................。







ん?





「誰も居ない…?」


居ない。人が。


え?え?放課後って部室に部員が集まって練習とかしてるものじゃないの!?

少なくとも中学時代のうちはそうだったよ!?

私は帰宅部だったけども!!


いやいや待つんだ。落ち着くんだ。

中学の部活動の話じゃない。ここは高校私は高校生。そしてここは部室。

居ないんだ、人が。


今日は休みだったのかな?

わからない……考えても仕方がない。 そうだ顧問!顧問の先生に聞こう!!


「えーと顧問は…っと」


部活動紹介の紙を取り出し 軽音楽部のページを開く。


「顧問は……吉良奈々(きら ななみ)…?」


吉良って…かっこいい苗字だな…なんかスタンドとか使いそうだ。


ま、まぁ考えてもしょうがない、職員室だ。職員室に行こう。

私は焦り気味に小走りで職員室に向かった。







「失礼しまーす! 吉良 奈々実先生はいますかー?」


返事がない…居ないのか?と思ったら1人の知っている顔がこちらに気づいた


「あら?秋瀬さんじゃない、どうしたの?」


担任の先生がやってきた


「いや、実はあの 軽音楽部の顧問の吉良先生を探しに…」


先生は少し戸惑ったような表情をした。そしてすぐ笑顔で

驚きの一言を私に浴びせた。


「それ、私よ?」


衝撃を受けた。いや、衝撃とか電撃とか 

そんなレベルの問題じゃない、え!?

この先生が吉良先生!?担任でしょ!?なんで私覚えてないの!?あ、ぼーっとしてたからか…


「秋瀬さん?どうしたの?おーい!」


あまりの驚きに放心状態になっていた。

この優しそうな 暖かそうな先生が?

吉良…って めっちゃ似合わないな...栗は自分の想像する吉良、奇妙な冒険の第四部とかに出てきそうな、変態の顔が思い浮かぶ。


「ちょっと秋瀬さん!どうかした?」


「あっ…いえ なんでも…あははは……」


やっと我に返った、なんだっけ

そうだ軽音楽部だ!!!顧問を探しにきて!!!!!吉良先生が顧問で!!!!!!!!担任が吉良先生!!!!


栗は心の中で情報を整理し直した。



「いやぁ あのですね、軽音楽部の部室に誰も居なくて 場所間違えたかなーって思って

 顧問の先生に聞こうと思ったんですけど…」


「なるほど、でも場所はあってるわよ?」


「えっ?」


だって誰も居なかったよね?

楽器の音どころか、話し声すら聞こえないし、あれ?


「で、でも 誰も居ませんでしたよ?」


そして吉良先生は私にトドメの一言を突き刺した。




「いま、軽音楽部 部員0人だし…いや、あなたが入ってくれれば1人目ね」



「部員が…いない?」


部員がいない….....?








「な、なんですとぉおおおおおお!?」


「去年まではなんとかギリギリだけど、部を継続していられたの…でも卒業生で部員が全員で、今年部員不足になったら残念だけど、たぶん廃部ね…」


「そ、そんな…」


誤算だった、軽音楽部はそこそこメジャーかなぁと思っていたから部員もたくさんでむしろ入部制限とかされたらどうしようとか思っていたが全くの真逆だった。


「まぁ、私も軽音楽部を廃部にはしたくないし…生徒に聞いて

 勧誘とかしてるんだけど なかなか宛が居ないのよね…」


野球漫画で、廃部寸前の部から 部員を集め、甲子園へ…

的な青春ものの物語があるけど…

今の私はまさにソレだった……


「わ、分かりました… でも部員として認められてるって事は、部活動はしていいんですよね?」


「まぁ、そういうことになるわね…でも基本 部員4人以上で部活として成立だから、はやめに部員を集めないと注意されちゃうかも...」


「大丈夫です!なんとかします!!」


いや、大丈夫じゃない。

ノリで言ってしまっただけだ。

あと部員2人、あてがない...詰んでる。

どん底にたたき落とされた私はとりあえず

職員室を後にした…


家に帰ってからもずっと部員獲得につい一生懸命考えた、いろいろ考えてみたが。 


「…いい案が全く思いつかない……。」


と言うかそんな方法無いんじゃないだろうか…

もう大抵の人が部活動決めちゃってるだろうし…

誰か居ないものか、まだ部活を決めていなくて興味持ってくれそうな人は...

途方に暮れていた中、私はふと思い出した


「琴音...」


琴音だ。

あの子確かまだ部活決めてなかった!そうだよ!!これで2人目の部員ゲットだぜ!!

ひとまず第一関門は突破といったところだろうか、琴音なら絶対入ってくれるだろう、でも琴音に楽器かぁ...なにやりたいかなぁ...そんなことを考えながら私は眠りについた。



そして翌日、琴音に昨日の出来事を説明し軽音楽部への勧誘を行った。そして




「え?私、ソフトボール部に入るんだけど…」









「…は?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ