04
しかし先の騒動、
…………人が、死んでいた。
ここが死後の世界であるならば、そこにいる人々はみな死んでいるわけで。
死んだ人間が更に死ぬというのは、何というか……。死の重複。そう、死の重複なんて有り得るのだろうか?
もしかするとここは死後の世界などではなく、現世のどこか知らない場所なのでは──
『────ここはあの世さ』
と、誰かの声に虚を突かれ、僕は思考を止めた。
『何をきょろきょろしている? 隣だ隣』
続けて聞こえてくる声に誘導されるように壁に耳を押し当てる。
しかし、分厚い壁からはひんやりとした感触しか伝わってこず、肉声なんて通りそうにもない。
『ああ、そのままで聞け。別に己れは、咽頭を使って声を発しているわけではないのでな。いやこれでは誤解を招く。咽頭を使わずとも喋る事ができる、と言った方が正確だ』
「…………どういう事、ですか?」
思わず疑問を声に出してしまったが、この全てを遮断してしまいそうなくらい重圧な壁に向かって言っても相手に届くわけもなく。だが隣にいる人物は、
『構うな。お前の声はしっかりと聞こえている』
やはり意味不明な事をもらす。
『隣室に人が入るのは久しぶりだ。しかも己れの声を聞く事ができるか。長年独りで退屈していたところだ。少し話し相手になって欲しいのだが』
その申し出に対し、僕は深く考えず頷いて答えた。
声で応えて構わないと言われた事を思い出し、口を開こうとしたのだが、隣室の人物はまるで僕の行動が視えているかのように──いや、語弊がある。視えているからこそ的確な指摘ができるのだろう。『普段通りでいい』と促し、低い声で僕に問うた。
『お前の最期は、どんな死様だった?』