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ヴァルハラ・ヴァルフレア  作者: えむ
一、ロビン・ウォルタナの後悔
6/26

02

 …………。

 意味が分からない。僕の命は、あの雪山で確かに終わりを迎えたはずなのに。

 目が覚めたら温かみのある木組みの天井が見え、身体を起すと周囲には大勢の人々の姿があって、立ち上がるとそこが酒場であるという事が分かった。

 死の直後、酒場に召されるなどという話は聞いた事がないのだけど、これが噂に聞く死後の世界かとその時は思った。

 僕は生前、執事のアルデバートや大臣のホプンに死後の事について聞いたことがある。

 二人の話によると死というのは、『肉体の消滅。魂の解放。精神のみという本来の姿を取り戻し、天上に昇り、痛みも辛さもない至福の時を迎えるためのプロセス』なのだそうだ。

 今思えば、それは妄想の類だったという事が分かる。

 彼らは死んだ事がない。ゆえに事実を語る事はできない。

 対して僕は死んだ事がある。ゆえに真実を語る事ができる。

 死者である僕の見解からすると、死というのは…………死と、いうのは…………。

 ……………………。

 よく分からない。

 そもそも、生と死という概念自体がよく分からない。

 生というのが、息をし、物を食べ、笑い、泣き、尊ぶものだとすれば、今の僕だって同じ事ができる。酸素が欲しいから呼吸をしているし、空腹からか腹の虫が鳴いている。この状況に辟易、混乱、思考するだけの精神もある。

 何が違う?

 死を迎え、なお生命活動を行っている僕は、一体どちらに該当する?


 考えふけっていると、酒場の中心からどよめく声が聞こえてきた。

 何があったのかと思い、そちらの方に目を向けると、鎧を身に纏った女性四、五人の姿が騒ぎの中心にあった。

 彼女たちは言った。

「従僕ども、汚れた手で我らに触れるな」

 直後。

 鮮血が舞い、肢体が吹き飛び、それまで人の形を成していた者が物に変わる瞬間を僕は見た。

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